第74話 上手く行っているの?
もうすぐ終業式だ。沙耶は、中休みも昼休みも前の様にお喋りしなくなった。全然黙っている訳ではないが、前の様な状況ではない。
俺は、いつもの様に駅に行くと優子が待っていた。
「おはよ、悠斗」
「おはよ、優子」
悠斗が元気ないというかストレスが溜まっているのが良く分かる。理由は一つしかない。でも学期末考査の後、彼女は悠斗と上手くしたはずなのに?
学校の最寄り駅で降りると
「悠斗、もし悠斗さえ良ければ、良いんだよ。勿論元に戻れなんて言わない。でも悠斗のそんな顔見たくないから」
「優子は何でもお見通しなんだな」
「ふふっ、だって悠斗は私の大切な人だから」
「ありがとう」
「悠斗、もうすぐクリスマス。彼女と時間取るのだろうけど、悠斗の家と私の家は近い。何時でもいいよ。悠斗がスッキリできるなら。あっ、先行くね」
「うん」
優子は何でもお見通しか。でも彼女の言った事をするなんて彼女に対する冒瀆でしかない。そんな事は出来ないけど…。やはり沙耶とは縁がないのだろうか。
でも今沙耶に別れを切り出す事は出来ない。どんな時だって上手く都合が付かない事なんて一杯ある。今は偶々そういう時期だと思いたい。
しかし、こんなにタイミングがずれるなんて過去なかった。どう考えればいいのやら。
こういう時に限って、優子の後姿をしっかりと見てしまう。良く知っているあの時の後姿。やっぱりおかしくなっているのかな。
俺は昇降口で上履きに履き替えて教室に入るとクリスマスと冬休みの事で賑やかだ。自分の机に行くと
「悠斗、おはよう」
「おはよう、沙耶」
それだけで彼女は何も言わずに俺を見ている。これでいい。これなら一緒に過ごしていく事が出来る。
私、矢田康子。最近、塚野さんの態度が全く変わった。前の様なお喋りチャラ女子じゃなくなった。
口数も少なく、最低限の言葉だけを柏木君に掛けると、後は彼を見ているだけ。何か心境の変化が有ったんだろうか。
今の柏木君と塚野さんの素振りを見ていると、あれに走った形跡はない。経験者だから分かる。もうすぐクリスマス。仕掛け時だ。
私、遠藤早苗。おかしい。塚野さんの態度が変わっている。どうしたんだろう。この前の渋山で会った時と今日の二人の態度からも新しい展開は無いはず。
もうすぐ、冬休みそしてクリスマスがある。そろそろ動く時が来たかな。
お昼になり、大吾と沙耶と三人で食べている。この時も沙耶はつまらない話はしなくなった。むしろ俺と大吾の会話に相槌を打つ感じだ。
どこまでこっちを理解しているか分からないけどこれでいい。お喋りされるよりはよっぽどいい。
放課後は、図書室に寄って最後に沙耶と一緒に帰る。校門を出ると手を繋いで来るけどそれ以外は何もしない。
繋がれた手でお互いが会話しているように握りを強くしたり弱くしては、顔を見合わせて微笑む。
沙耶は、しっかりと俺の気持ちを理解してくれたようだ。これなら次のステップもスムースに行きそうだ。
駅が見えて来た時、
「悠斗、来週金曜日は終業式だね。でもその前にクリスマスがある。木曜日がイブで終業式の時がクリスマス。会えるかな?」
「俺も会いたいけど、木曜日は大掃除もあるだろう。早く帰れそうにないな。終業式の時は午前中で終わるからやっぱりその日かな」
「ねえ、今週末は駄目?少し早いけど」
「明後日の土曜日って二十一日だよね。流石に早いかな。午前中は稽古にも行きたいし」
「ねえ、……。なんでもない」
「そうか」
多分、あの事だろう。俺も健全な高校生男子だ。最初は、あまりする気も無かったが、これだけ先延ばしされると変に期待してストレスが溜まる。
最初は、沙耶自身の理由、次は沙耶のお母さんが予定より早く帰って来て、その次は矢田さんと会って、更に次に遠藤さんと会って駄目になり、次の土曜日曜は朝から両方の家族が居るという事でチャンスが無かった。
でも冷静に考えれば、付き合い始めたからってあれを急いでしなくてはいけないなんて事は無いだろう。
やっぱりあういうのは自然にきっかけが出来るまで待てばいい。考えている内に駅に着いた。
「悠斗、また明日ね」
「うん、また明日」
彼女とは電車の方向が違う。俺の方向の電車が早く来たが、彼女の帰る方向の電車が来るまでホームで待って彼女の乗った電車が行くのを見送ってから自分の方の電車に乗った。
私は電車の窓から見える悠斗を見ながら、何とかしたいと思っていた。でもあの事を口にすれば、それしか考えて無いのとか、盛りのついた動物じゃないのとか、口には出さないだろうけどそういう風に思われて、彼に嫌われるのじゃないかと思うと口に出して言う事が憚られた。
ここまで来るとイライラして来る。今度の土曜日家族は居ない。早くしないと矢田さんや遠藤さんが何をしてくるかも分からない。あの二人の事だ。クリスマスにかこつけて強引に彼に仕掛けてくる可能性もある。
彼がそれに簡単には乗らないだろうけど。ストレスが溜まっている彼のメンタルを考えるとまさかが起こる可能性はぬぐい切れない。
やはり今度の土曜日が勝負だ。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
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お馬鹿な彼と恋愛不向きな私の恋愛模様
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