第72話 優子と陽子


 悠斗は私と復縁する気が有るけれど、陽子の事を考えるとそれは出来ないと言った。

 だから私は彼に陽子と話してみると言った。それが上手く行けば悠斗と元に戻れる。



 私はやはり悠斗が一番いい。彼が私と普通に接してくれる様になって私も心が明るくなった。

 そうしたら男子が声を掛けてくれる様になったけど丁寧に断っている。



 確かに私は過ちを犯した。でも彼はそんな私に自分にも責任があると言って許してくれた。


 だけど私だから分かる。悠斗は口でそう言っても体が理解できていない筈。だからずっと待った。彼が話をしてくれる機会をくれるまで。


 最初は、駅の改札の挨拶。次は一緒に電車に乗る事。でもこれ以上は手塞がりだった。



 奇跡は起きた。


 私が本屋に行こうとした時、悠斗の姿を見つけ、川べりを一緒にずっと歩く事が出来た。彼は嫌がらなかった。そして本屋に一緒に行った。


 その時は一緒に昼食は食べれなかったけど、この前コンビニにお弁当を買いに行った時、悠斗も買いに来ていて、そして一緒にイートインで一緒に食べようと言ってくれた。


 次は学校の最寄り駅の改札を出た後、いつも私が先に行くのだけど、この前、学校の近くまで一緒に歩いた。


 その時、聞いてみた。戻れないかなって。そしたら陽子の事が解決出来れば良い様な事を言ってくれた。


 今は、塚野さんと付き合う体になっているけど、あんな子と悠斗が続くはずがない。矢田さんも遠藤さんも悠斗には合わない。


 桂さんは未知数だけど、いきなり人前で将来夫になる人ですなんて言う様な人を好む人じゃない。


 だから私はついにチャンスが来たのだと思った。待った甲斐が有ったのだと思った。後は妹と話せばいいだけ。


 別に妹に悠斗を諦めろなんて言わない。正々堂々と戦線布告して悠斗の心の中に入った方が勝ちだという事を話そうと思っている。



 そして、今陽子は私の部屋、私の目の前にいる。


「お姉ちゃん、本当に悠斗さんと復縁するつもり?」

「陽子が許してくれればね」

「私は許さない。いえ悠斗さんは渡さない」

「だから正々堂々とやりましょう。悠斗があなたを選ぶか私を選ぶかは彼次第。どっちが選ばれても恨みを引き摺らない約束をしたいだけ」


「お姉ちゃんは狡い。お姉ちゃんは既に悠斗さんと関係を持っている。元に戻り安い。でも私は手を握る事も出来ない。こんな不公平な勝負無いわ。

 もしお姉ちゃんが公平を望むなら私が悠斗さんと関係を持ってからよ」


「それは無理ね。悠斗はそんな事する人じゃない。もし、陽子が本当に彼の心に入れる自信があるなら体の関係なんて関係ないわ」


 お姉ちゃんは絶対的な自信を持っている。どうしてここまでなれたなんて聞いても仕方ない。でも悔しい。このまま勝負すればお姉ちゃんが勝つに決まっている。


「お姉ちゃん考えさせてよ」

「考える必要なんてないわ。陽子が彼の心に入れるか入れないか自分自身で行動すればいいだけ。それは私への宣戦布告、つまり私が悠斗と復縁する機会をくれたという事よ」


 悔しい、お姉ちゃんは絶対的な自信がある。

「とにかく時間が欲しい。今急に悠斗さんにアタックしても無理だし」

「そうね、塚野さんが時間をくれているから、彼女が悠斗から振られるまでは猶予時間という事にしましょうか」

「分かった。それまでに決める。でも今はお姉ちゃんが復縁するのは反対」

「直ぐには出来ないって言っているじゃない。塚野さん次第よ」



 次の朝、私はいつもの様に改札で悠斗を待った。直ぐに彼は来た。

「おはよう、悠斗」

「おはよう、優子」


 そして何も言わないままに同じ電車に乗り隣同士の吊革に掴まって学校の最寄り駅で降りた。改札を出て少し一緒に歩くと

「悠斗、陽子と話をしている」

「そうか」

「じゃあ、私先行くね」

「うん」


 これだけ言えば悠斗はいま、私と陽子がどういう状態か理解してくれている。これは悠斗と私だけが出来る事。



 優子がいつもの様に小走りで少し先に行くと、また歩き始めた。本当は一緒に歩いても良いのだけど、沙耶の事があるから出来ない。


 沙耶のお喋りは止まらない。ただ、言っている事を説明するようになっただけ。やっぱり俺がお願いした意味が分かっていない。


 今週の土曜の午後の約束は出来れば避けたいのが本音だ。このまま彼女と関係を持っても続ける自信がない。


 優子なら…。彼女も復縁する意思が有る事がはっきり分かった。でも陽子ちゃんの事を思うと俺からは切り出せない。優子と陽子ちゃんの話し合いが着くまでは。


 多分、陽子ちゃんの再アタックを公開して良い事が条件になるんだろうな。冬休み迄、後二週間と少し。

 

 またクリスマスがやって来る。去年は散々だったけど、今年は静かなクリスマスにしたいよ。


 そんな事を考えながら教室に入ると早速

「悠斗、おはよう」

「おはよう、沙耶」

「どうしたの。少し元気無いみたいだけど?」

「そんな事無いぞ。俺はいつも元気だ」


 ふふっ、また強引に話しかけている。あの子はなんで悠斗の事を考えてあげないんだろう。

 多分、矢田さんも遠藤さんも分かっている。分かっていないのは今カノだけ。クリスマスまで持てば良い方か。クリスマスは来年もあるから。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


新作公開しています。読んでくれると嬉しいです。

お馬鹿な彼と恋愛不向きな私の恋愛模様

https://kakuyomu.jp/works/16818093078506549056

宜しくお願いします。


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