第71話 予定外の事
悠斗がもうすぐやって来る。私も料理出来る事を知って貰わないと。良く胃袋を掴んだ人が勝ちとか言うけど、あれとこれで完璧になる。悠斗は私のもの。
そう思いながらルンルン気分で料理をしている時だった。えっ!まさか。
私は急いでおトイレに駆け込んだ。パンティを取ると、そんなぁ。もっと後だと思っていたのに。
いつもはもう少し後なのにまさか今来るなんて。これじゃあ、せっかくの計画が…。どうしよう。
がっかりしながらおトイレから出て来て、手を洗っているとスマホが鳴った。悠斗からだ。
『沙耶、今駅にいる』
『分かった。直ぐに行く』
『待っている』
もうここまで来たんだ。逃げようもないな。とにかく沙耶改造計画を実施しないと。十分位待っていると、少し青い顔をした沙耶がやって来た。彼女は色白だから余計分かる。
「沙耶、顔色が悪いけど」
「うん、ちょっと。それより行こう」
「ああ」
沙耶が手を繋いで来たので俺も握り返すと、顔を俺の方に向けてニコッとした。ここまでならとてもいい子なんだけど。
一緒に歩いている。でも今日は話しかけて来ない。俯き加減に歩いている。
「どうしたんだ。いつもの沙耶らしくないけど」
「あのね…。やっぱり家に着いてから話す」
ショックとしか言いようがない。今日という日をどれだけ待ちわびていたのか。それなのに。
彼女の家に着くと門を入って玄関に来た。前に植木の世話をしていたお爺ちゃんは居ない。
「悠斗、入って」
「うん」
上がると洗面所で手を洗ってからダイニングに連れて行かれた。
「お昼もう少しで出来上がるから待っていて」
「分かった」
十分もしない内に野菜サラダとオムライスそれにコンソメスープが出て来た。
「へぇ、沙耶って料理上手なんだ」
「ふふっ、見直した?」
「ああ、ちょっと驚いた」
「さっ、召し上がれ」
「頂きまーす」
オムライスは真ん中を割って両側にトロリという奴じゃないけど、甘さを抑えた卵とケチャップライスが抜群にマッチしている。しっかりと咀嚼して喉を通すと
「美味しいよ、沙耶」
「よかった。オムライス結構自身有るんだ。でもこれだけじゃないよ。他にも作れるから。これから一杯食べさせてあげる」
「楽しみにしている」
二人で一通り食べ終わると食器をシンクに持って行った。
「洗ってしまうから待っていて」
「うん」
何故か口数が少ない。俺としては良いのだけど…。
彼女が一通り洗い終わると
「私の部屋に行こうか」
「うん」
二階にある彼女の部屋に入るといきなり抱き着いて来た。
「ちょっ、ちょっと。急がなくても」
「ごめんなさい。悠斗本当にごめんなさい。今日は出来ない」
「えっ?!」
「実は、月のものが来てしまって。で、でもね。あそこ以外は出来るから」
だから顔色が悪かったのか。
「い、いやいや。それは駄目だよ。無理するの止めよ」
「やだ!キスだけもしたい」
「それ位なら」
彼女はベッドの端に座ると、ポンポンと自分の隣を叩いた。
「悠斗…」
彼がゆっくりと私の体を優しく包んでくれる。もう私は目を閉じている。あっ、唇が触った。
プールの時は私が強引にしたけど、今は彼からしてくれている。包み込む様な優しさだ。一度離れると
「悠斗、最後までは出来ないけど」
私は、彼の右手を掴んで左胸に持って行った。後は彼に委ねた。でも彼は洋服の上から大きな手で優しく包み込んでくれるだけ。
それ以上の事はしてくれない。でも口付けだけはずっとしてくれた。また離れると
「沙耶、体調が万全の時にしよう。俺も覚悟を決めて今日来ている。でも沙耶の体が一番大切だから」
「悠斗…」
もう一度口付けをしてくれた。でも今日はここまで。私の体を気遣ってくれている。私がこれ以上無理を言うのは良くない。一週間もすれば。
「悠斗、一週間だから」
「うん」
後は、体を彼に委ねて優しく抱きしめて貰った。なんて気持ちがいいんだろう。悠斗が私の彼になった実感がする。
「沙耶、お願いがある」
「なに?」
「上手く言えないんだけ…」
「なんでも言って」
「俺と居る時や学校の中休み、お喋りを少しにしてくれると嬉しい」
「えっ?!嫌だったの」
「嫌じゃないけど、沙耶の話ている事が全然分からなくて」
「えっ?私少しでも悠斗と楽しく居れたらと思って一生懸命話しかけていたんだ。いけなかったの?」
「いけないとかじゃないけど、分からない事を一方的に言われても」
「そうか、じゃあ、これからはゆっくりと分かりやすいように話すね」
「まっ、それでも良いけど」
俺の言いたい事分かってくれたのかな?
俺はその後、沙耶と一緒に近くの公園を散歩したりした。少し暗くなって来たので
「そろそろ帰るよ」
「うん、明日も会えるよね」
「ああ、映画でも見に行く」
「行く行く」
次の日曜日は予定通り映画を見に行ったのだけど沙耶の体調が悪いらしく、映画を見終わると早々に切り上げて彼女を家まで送って行って別れた。
そして翌火曜日に学期末考査の成績順位が発表された。昇降口で上履きに履き替えた後、中央階段横の掲示板に行くと
「悠斗、不動の一位だけど…」
「ああ、今回はこうなるかなと思っていた」
一位は俺だが、二位に桂さんが五点差でいる。そして優子が何と三位だ。遠藤さんが五位、矢田さんは信じられないと言ったら失礼だが八位、そして沙耶は十位だった。
「悠斗、頑張ったのに悔しい」
「でも中間は十五位だったんだから五つも上がったじゃないか」
「でも、くやしい」
ふふっ、笑ってしまうわ。柏木君と二人だけで勉強会を開いたくせに十位とは。私は八位よ、塚野さん。
お笑いだわ。柏木君の彼女ずらしてべったりと彼と勉強したくせに十位とは、あなたはやはり彼に相応しくないのよ。私は五位よ、塚野さん。
「悠斗さん」
「うん?」
「後五点で悠斗さんと同じ順位です。あなたの為に頑張っています」
「そ、そうですか」
俺はチラッと優子を見ると笑顔で頷いた。よく頑張ったな優子。
「悠斗、もう教室戻ろう」
「ちょっと待って」
一年の方を見に行くと陽子ちゃんが一位、梨花が二位だ。
「梨花、陽子ちゃん。頑張ったな」
「あっ、悠斗さん。はい、頑張りました。少しでも悠斗さんに近付きたいと思います」
「あははっ、俺なんか直ぐに抜かれるよ」
「お兄ちゃん、意味分かってない!」
「えっ、そうなのか?」
「もう!」
妹がなぜ怒っているか分からないけどとりあえずここは退散した方がいいな。
「大吾、沙耶。教室に戻ろうか」
しかし悠斗の奴、この成績順位表の意味分かっているのか?なんかまた一波乱ありそうだな。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
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新作公開しています。読んでくれると嬉しいです。
お馬鹿な彼と恋愛不向きな私の恋愛模様
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