第70話 どうすればいいんだ?


 二学期末考査が始まった。月曜日から木曜日までびっしりと入っている。科目も中間より多いし、範囲も広い。


 流石にこの期間は沙耶とは別々に勉強した。考査中も一緒に勉強したいと言っていたけど断った。


 彼女と一緒に勉強会を開いたのだけど、集中させてくれない。何かと話しかけて来て少しストレスが溜まっていたからだ。


 だからという訳ではないがその日の考査が終わると直ぐに家に帰り次の日の科目を集中して勉強した。



 そして考査が終わった金曜日、沙耶が遊びに行こうと言ったので、付き合う事にした。行ったのはゲームセンター、世に言うゲーセンだ。


 俺はこういう所は来た事が無かったので彼女に来た事あるのかと聞いたら俺と付き合う前は女子仲間と良く来たと言っていた。


 まず驚いたのは、入った時の音だ。耳を塞ぎたくなる大きな音がそこかしこで聞こえてくる。俺は

「沙耶は五月蠅くないのか?」

「うん、慣れっこ。それより何から始めようか?」

「俺は初めてだから沙耶の好きな奴で良いよ」

「じゃあ、あれ」


 沙耶が指差したのは、化け物が映像で出て来てそれをライフルで撃ち殺すというゲームだ。こんなの何処が面白いのか分からないけど、ペアでやるらしい。

「悠斗、とにかく目の前のゾンビを片端から撃って殺して」

「分かった」

「じゃあ、スタートするね」


 とにかく前にいる奴を撃てばいいと思ってやっては見たものの向こうも撃って来る。良く分からない内にやられてしまった。

「はぁ、悠斗よわーい。次あれしよう」


 今度は、盤上を光のコースターが動くからそれを打ち返すゲームだ。これは簡単だった。沙耶の全敗。

「沙耶、よわーい」

「ふん、じゃああれ」


 今度、指差したのは、俺も聞いた事はあるクレーンゲームという奴だ。でも全く取れない。どうもここは俺には向いていないらしい。


 そして最後に沙耶が

「悠斗、プリクラしよう」


 プリクラは俺も知っている。撮った事は無いけど。二人で中に入って座ると彼女が色々何かしている。俺達が映っている映像に何かと付けたり周りをデフォルメしている。

「悠斗、撮るよ。もっとこっちに来て」


 体も顔もほぼべったりに沙耶とくっ付いた時、シャッター音がした。プリントする前にチェックが出来る様だ。

「うん、これでいい。悠斗はどう?」

「い、良いんじゃないか」


 どう見ても俺の好みじゃないんだけど。



 ゲーセンを出ると結構暗くなっていた。

「悠斗、送って」

「勿論だ」


 彼女の家は学校の最寄り駅を起点として俺の家と反対方向にある。二つ目だから近いけど。彼女は電車の中でも良く話す。駅から降りても家に着くまで話している。何でそんなに話す事があるんだ?


 家に着くと

「ねえ、今度の土曜日、私の家に来て。誰もいないから」

「土曜日午前中は駄目だ。久しぶりに稽古に行きたい」

「じゃあ、午後からでいいよ」

「分かった」

「じゃあ、悠斗。また明日」

「ああ、また明日」



 彼女が玄関に入るのを見届けてから帰路についた。もう少し黙っている事が出来ないのだろうか。


 ゲーセンでも喋りっぱなしだし、ここに来るまでも芸能界の事とか、アイドルの事とか、はっきり言って俺には全く興味無い。もっと静かな子だと思っていたのに。


 そんな事を思いながら、家に着くと

「ただいま」

「お帰り、お兄ちゃん。…どうしたの、疲れた顔しているけど?」

「そんな事は無いけど」

「今日、塚野さんと会っていたんでしょう。帰りに見かけた」

「そうか」


 俺はそれだけ言う自分の部屋に入った。選択ミスだったかな。でも今更か。一度はっきりと言ってみるか。



 お兄ちゃんが彼女とデートしていたはずなのに全然楽しそうな顔していない。それどころか思い切り疲れた顔している。上手く行っていないのかな。まあ、そっちの方が良いけど。



 私は、悠斗に家まで送って貰った。本当は別れ際にキスとかしたいけど、今度の土曜日でそれも出来る様になる。楽しみだ。


 でも悠斗、私の話を聞いても面白くなさそうな顔している。今時の女子高生はゲーセン、カラオケ、推しアイドルって決まっているのに。


 そうだ、土曜日を素敵に過ごしたら日曜日はカラオケ行こうかな。そこでも、うふふして、また私の家に戻って…。

 そうしたらもう彼は私を放さない。悠斗の性格だもの。



 翌金曜日は悠斗といつもの様に過ごした。でも彼の笑顔が少ない。もっと楽しい話をしないといけないのかな?



 俺は、金曜日の放課後、沙耶に用事があると言って先に学校を出た。はっきりって疲れた。彼女は何故黙って傍に居れないんだろう。そんな事を考えながら駅に向かってると

「悠斗」


 振り返ると優子がいた。

「優子か」

「どうしたの。疲れているね。大体分かるけど」

「そうか」


 その後は、何も話さない。ただ駅まで行って、同じ電車に乗って同じ駅で降りて改札を出たら

「悠斗、じゃあね」

「ああ」


 これだけでいい。優子は俺が何で浮かない顔しているか分かっている。沙耶よりよっぽど優子の方がいい。でも付き合う事を言ってしまった以上どうにも出来ない。


 土曜日は、思い切り稽古をした。ストレスを発散するように思い切り先輩達と手合わせもした。


 やっぱりこうして汗をかくのは心身にいい。この後は沙耶と会うけど、一度家に帰ってシャワーを浴びてからにしよう。お昼を食べた後がいいな。


 家に戻ってシャワーを浴びて体を拭いているとスマホが鳴った。見ると沙耶からだ。

『悠斗、いつ来るの?』

『お昼食べたら行けるけど』

『えっ、うちで食べようよ。私が作るから』

『分かった。今、シャワーを浴びたばかりなんだ。急いで行くけどちょっと待っていて』

『分かった。待っている。駅に着いたら教えて。迎えに行くよ』

『ありがとう、そうする』



 ふふっ、シャワー浴びたなんて、私の為にしてくれているんだ。嬉しいな。お昼食べたら…。


 女子仲間からあれの事は色々聞いている。どこまで本当か知らないけど。私は未経験者だけど彼は経験者だから安心。楽しみだな。


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


新作公開しています。読んでくれると嬉しいです。

お馬鹿な彼と恋愛不向きな私の恋愛模様

https://kakuyomu.jp/works/16818093078506549056

宜しくお願いします。

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