第69話 勉強会でも積極的
俺は放課後は、図書室で勉強する事にしている。もうすぐ学期末考査だ。図書室に入って受付に座っている沙耶に軽く頷いてからいつも座るテーブルに行く。
考査が近付いている所為か、常連さんだけでなく他の生徒もいる。何故か、話しかけては来ないけど、梨花と陽子ちゃん、矢田さんに遠藤さん、それに桂さんまでいる。優子は居ないか。
まあ、みんな考査が近いから一生懸命なんだろうけど。でも前は居なかった様な。
俺が勉強に夢中になっていると何故か視線を感じた。そちらの方を見ると直ぐにその人は顔を教科書の方に向けた。
桂さんだ。修学旅行が終わった後の昼休みに彼女に厳しい事を言ってから、全く声を掛けて来なくなった。
そこまで厳しく受け取ってしまったのかと思うと悪い事をした気もしたけど、今、塚野さんと付き合い始めた以上、返って良かったのかも知れない。
でも今度一度謝っておくか。なんか寝起きが悪い様な感じがするし。それに別に友達としてなら良いんだけど。
予鈴が鳴り、皆が帰りだした。受付の塚野さんを見てから帰り支度をする。そして他の人が居なくなってから塚野さんの所に行ってまた頷く。昇降口で待っているという合図だ。
俺は、昇降口に行くと桂さんが一人で居た。そして俺の方を見ると近付いて来て
「悠斗さん。この前は本当に申し訳ございませんでした。どこかで謝ろうとしていたのですが、きっかけがつかめなくて」
「謝る事じゃないですよ。それにあの時は俺の方こそ強く言い過ぎました。済みませんでした」
「えっ?!悠斗さん、私を許してくれるんですか?」
「許すも何も桂さんは俺に悪い事はしていないですから」
「そ、それなら改めて私と…」
「桂さん、俺、沙耶いや塚野さんと付き合う事にしたから」
「はい、知っています。でもお友達にはなってくれるんですよね」
「友達なら良いですよ。でも二人きりになったりは出来ないですよ」
「はい!全然構わないです。悠斗さんとお話が出来るだけで幸せです。あっ、塚野さんが来ました。私はこれで」
桂さんが小走りに昇降口を出て行った。まあ、これでいいか。
私は、図書室を急いで閉めると鍵を職員室に返して昇降口に急いだ。彼が悠斗が待っていてくれる。
廊下を曲がって昇降口に行こうとした時、話し声が聞こえた。彼の声も聞こえる。
気になって廊下を曲がらずに昇降口の方を見ると桂さんと彼が話している。なんで?でも話を聞いていると、有名になったお昼休みの出来事を話している様だ。
彼は彼女に二人きりには慣れないけど友達なら良いと言っている。不味い。あんなに綺麗な子が彼に近付いたら…。
これ以上は不味いと思って昇降口に行ったら、彼女は昇降口を出て行った。私は今来た振りをして
「悠斗、今の桂さんだよね。何話していたの?」
「ああ、この前のお昼の事。彼女謝って来たから、俺の方も言い過ぎたって謝った」
「それだけ?」
「そうだけど?」
友達になるって言ってたよね。
「悠斗は桂さんと友達になるって言ってなかったっけ?」
「えっ、聞いてたの?」
「うん、私、嫌だよ。他の女の子と悠斗が仲良くするの」
「それ、焼き餅?」
「悠斗の意地悪」
「あははっ、ごめんごめん。それより帰ろうか」
「うん」
校門を出ると沙耶が手を繋いで来た。積極的なのは知っていたから俺も握り返すとふふっとだけ笑った。ご機嫌治ったかな?
駅に行く途中
「ねえ、来週から考査ウィークだよね。私、午後三時までは図書室を開けていないといけないけど、その後は自由だから二人で勉強しよう」
「いいよ。どこでしようか?」
「私の家はどうかな。他の所ですると最近暗くなるの早いし、送ってくれる時間もったいなでしょ」
「それは良いんだけど…」
なんか不安有るけど、俺の家でやったら送る時間が必要になるし、図書館も同じだ。それに席が二つ空いているかも分からない。仕方ないか。
「いいよ。但し…」
「分かっている。我慢するから」
「それなら決まりだな」
「悠斗は真面目なんだから」
「あははっ、そうでもないけど」
「じゃあ…」
「それは駄目。勉強が優先」
「もう」
考査ウィークに入った。こんな時は図書室も閉めればいいのに。でも学校側は生徒の事を思って開けているという。私一人ですって榊原先生に言ったら、困ったわねぇ、でもお願いねで済まされた。
でも今年は悠斗が一緒に居る。午後三時までは図書室だけど彼もいるし、その後は一緒に下校して私の家で勉強会。考査ウィークが楽しさに変わった。
「悠斗、ここ分からない」
「ああ、これか、これはこの式を使って…」
顔と顔がくっ付くまで数センチ。それに家に帰ったら私は着替える。首元が思い切り緩いシャツにしている。
彼がチラッと見る時が有った。顔を赤くして目を逸らしてとても可愛かった。私のスタイルはプールで思い切り知って貰っている。だから楽しみ。早く学期末考査終わらないかな。
私はいつもの様に改札で悠斗を待っていると彼がやって来た。
「おはよ、悠斗」
「おはよ、優子」
私はそれだけしか言わない。でも同じ車両に乗って隣同士の吊革に掴まって立っている。そして学校の最寄り駅に着いて改札を出ると
「悠斗先行くね」
「おう」
これだけでいい。彼の心の中は分かる。学期末考査の事も有るけど塚野さんに手を焼いている事が。
彼女は早く悠斗とあれをしたいのだろうけど悠斗は考査が終わるまでは絶対にしない。だから考査後を狙っているはずだ。でも思う様に行くかな塚野さん。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新作公開しています。読んでくれると嬉しいです。
お馬鹿な彼と恋愛不向きな私の恋愛模様
https://kakuyomu.jp/works/16818093078506549056
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます