第68話 世の中思い通りにはいかない
私、桂美優。悠斗さんからお昼休みに厳しい言葉を掛けられてからどうすれば挽回出来るか考えていた。
でもそこにとんでもない噂を耳にした。悠斗さんが同じクラスの塚野さんを彼女に選んだというのだ。
私は、真意を確かめるべく、その話をしている女子に直接声を掛けた。
「それは本当ですか?」
「あっ、桂さん。本当よ。廊下で矢田さんや遠藤さんに塚野さんと付き合うと言っている所を聞いたの。私だけじゃないわ。その場所にいた人皆聞いている」
私はその話を聞いて絶望的に一瞬だけ、そう一瞬だけなったけど、塚野さんと言えば図書委員をやっている子。
それなりの容姿だけど、私と比較するレベルでもない。まして学力は遥かに下。常に上位五位以内にいる私とは違う。
それにあの子はお喋りだ。外見静かに見えるけど他の女子と良く話しをしている所を見かける。それもつまらない話を楽しそうにしている。
だから、時間の問題だと思った。彼がそんな子と長く付き合えるはずがない。いずれボロをだす。でもそのおかげで矢田さんや遠藤さんを一時でも遠ざける事が出来ている。
これは神様が私に失態を取り戻せる時間を与えてくれたんだ。ふふふっ、必ず私が悠斗さんの心を奪って見せる。
それまでは精々楽しむ事ね、塚野さん。
私、矢田康子。塚野さんの後ろに座っている。だから二人の関係が良く分かる。塚野さんはよく喋る。柏木君は少し引き気味だ。別れるのは時間の問題だけど、まさかの手を使う事も考えられる。
律儀な柏木君だからそれを使われたら、恋人関係を解消するのが難しくなるだろう。
勿論、彼がそれに乗るかは別だけど。でも彼女は着痩せする。それなりにスタイルがいいのはプールに行った時に知っている。もしあの姿を見せられたら。柏木君も乗ってしまうかもしれない。
ならばその前に私がそれをすればいい。チャンスは必ずやって来る。いえ、そのチャンスを作るんだ。
私、遠藤早苗。柏木君が塚野さんと付き合うと言った。でも彼、彼女の事をどれだけ知っているんだろう。プールに行ったとかは自慢話で聞いているけど、結構お喋りな子だ。
図書室では流石に静かにしているけど、それ以外では結構クラスの女子や他のクラスの女子とつまらない話を楽しそうに喋っている。
柏木君はお喋りな子は好きじゃない。それは彼の普段の行動で良く分かる。修学旅行の時、彼の手で私の内腿や敏感な所をちょっとだけ触らせちゃった。
でも彼は極端に拒まなかった。だから、もしあれに持ち込む事が出来たら…。柏木君は律儀な子。
黒川温泉の行動もこの前お昼休みに桂さんが入って来た時の態度もそれを良く証明している。
綺麗だからとかで相手を選ぶ事は絶対にない。彼の心に中に染み込む様な女の子を彼は好きなはずだ。
でもその時間は無くなった様だ。塚野さんは積極的な子。早々にあれに持ち込もうとするはず。
もうすぐ、学期末考査。二人で勉強会をするだろうし、当然チャンスは一杯あるけど、柏木君の事だから考査前はしない筈。
だとすれば、考査直後が一番危ない。それに持ち込まれたらクリスマスは独占されてしまう。
何とか防がないと。そして彼と話すきっかけを作ってもっと私の事を知って貰うんだ。
午前中の授業が終わった。隣に座る塚野さんは中休みになる毎に話しかけてくる。
それは構わないのだけど、全然興味無い事をこっちの気持ちも知らずに一方的に話しかけるのは止めて欲しいんだが。
今度言うしかないか。でもなんて言えばいいんだ。話かけるのは駄目だなんて言えないし、控えめにしてと言うのもおかしいし、困ったな。
「悠斗、お昼だぞ」
「あっ、大吾。今日学食で食べないか?」
「俺は構わないが」
「悠斗、私も一緒で良い?」
「ごめん、沙耶。大吾と二人で食べたいんだ」
「えーっ、今日だけだよ」
「うん。大吾行こうか」
ふふっ、塚野さんは、全然彼の事が分かっていない。随分前から彼の事は知っているはずなのに相手の事を知ろうとしない、自分の事ばかりだ。精々頑張ってね塚野さん。
見てて笑いそうになってしまう。名前呼びなんかして恋人ごっこしているけど、柏木君がなんで中山君だけを誘ったのか分かっていない。こちらが準備出来るまでもう少し頑張ってよ塚野さん。
俺は、大吾と一緒に学食に来て隅の方のテーブルに座った。
「大吾、疲れたよ」
「まだ、二週間しか経っていないぞ」
「しかし…。積極的な子だとは知っていたけど、あそこまでお喋りだったとは。最初はまあいいかで済んだけど、最近は特に拍車が掛かったようで、トイレも満足に行けない」
「俺もちょっと関心と言うか呆れている。プールに行った時とか、修学旅行の時の積極さは、まだ決まっていないから悠斗狙いで頑張っていたんだろうけど」
「どうすればいい。話しかけるなとか言えないし、控えめにしろなんて言うのもおかしいし。どうすればいいのか分からないよ」
「こればかりは俺も想定外だ。付き合う前の塚野さんどこ行ったって感じだな」
「そうだよな」
私、桂美優。悠斗さんが中山君と一緒に学食に来た。クラスの友達と一緒にどこに座ろうかと言っている時だ。
だから、話し声が聞こえる少し離れた所に座った。私は彼に対して背を向けている。彼の方に向くと視線を感じ取られるかもしれないからだ。
でも、まさか、本当にって感じ。しかしたったの二週間では短すぎる。もっと塚野さんには頑張って貰わないと。
ふふふっ、でも予想は大当たりね。
―――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
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新作公開しています。読んでくれると嬉しいです。
お馬鹿な彼と恋愛不向きな私の恋愛模様
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