第63話 黒川温泉の余韻は消えない


 黒川温泉で午前中の自由行動が終わった後、昼食を摂ってから俺達は熊本に向かった。ここからはバスの中の俺の隣は大吾だ。変な苦労をしなくて済む。


 ここでも窓から見える景色は阿蘇山の外輪が綺麗に見えている。ガイドさんがとても丁寧に説明してくれている。のんびりと説明を聞きながら景色を見ていると


「悠斗、益々賑やかなになったな。何時からハーレム男になったんだ?」

「大吾、いつからそんな意地悪になった?」

「いや、俺は事実を言ったまでだ。いい加減に決めないと益々酷くなるかもしれないぞ」

「怖い事言わないでくれ」


 そんな事を言いながらもやっぱり大吾と二人で座るのは楽でいい。流石に今日は矢田さん、塚野さん、遠藤さんはニコニコしながら話をしている。



 熊本に入った後は、ホテルに直行。中心街から少し離れた所にある大きなホテルだ。

 ここは、全員で泊る事になった。ほとんど貸し切り状態らしい。それは良かったのだけど…。


 ここでは男女が違う階毎に分かれて宿泊する事になっている。ここは団体客をターゲットにしているらしく六人部屋もあるらしい。俺達は四人部屋で大吾、それにクラスの仲間二人だ。


 鍵を渡されて部屋に行こうとしたけど、2Bの桂さんも同じホテルな訳で、俺の前に来て

「後で、少しお話できませんか?」

「えっ、でもここでは班単位の行動が基本なのでは?」

「単にお話するだけです」

「柏木、羨ましいぜ」

「まあ、ヒーロー柏木だからな」

「悠斗、話位いいんじゃないか」

 皆が好きな事言っている。


「はあ、じゃあ後で少し」

「はい、連絡取りたいのでスマホの連絡先教えて下さい」


 完全に注目の的になってしまった。この人恥ずかしくないのかな?

「あの、後で」

「何時にですか?」

「じゃあ、夕飯食べた後では」

「駄目です。夕飯前で」

「悠斗諦めろ」


 結局、荷物を部屋に置いた後、フロントで待つことになった。あの人、周りの目を気にしないのかな。流石マドンナと言われるだけのことはあるか。


「柏木君」

「桂さん」

「早速、スマホの連絡先を交換しましょう」

「あのなんでスマホの連絡先を交換するの?」

 桂さんは俺をジッと見ると


「…私じゃ駄目ですか?」

「どういう意味か分からないけど、友達なら」

「じゃあ、交換しましょう」

 なんでこうなる?


「柏木君の事は少しだけ、知っています。渡辺さんに裏切られけど、今は友達として復活。矢田さん、塚野さん、遠藤さんから言い寄らている。そして渡辺さんの妹さんからも」

「何故それを?」

「はい、友達に教えて貰いました。柏木君は結構有名な方見たいですね」

「……………」

 どういうことだ?


「今日は、この位にしましょう。でも東京に戻ったら両親と一緒にご自宅にお礼に伺います」

「いいですよ。お礼なんて」

「柏木君が良くても私が困ります。昨日の件は学校側から両親に連絡が行っています」

「そ、そうなんですか」

「それと…私とお付き合いして下さい。お友達からでいいです。宜しくお願いしますね柏木君」


 俺が何も言わないままに立ち去ってしまった。何なんだ。



 私は急いでエレベータに乗った。

 い、言っちゃった。恥ずかしい。胸がドキドキして心臓が飛び出しそうです。昨日、彼が助けてくれなかったらあのままどうなっていたか。


 危険を顧みず、高い橋から飛び降りて、流されそうになっている私を川の中まで入って来て助けてくれた柏木君。背が高くて頭も良く、武道の経験もあると聞いています。


 もう私には彼しかいません。全くの一目惚れ。それでもいい。絶対に彼と恋人同士になります。そして大事な物を捧げたいです。彼は受け取る権利があります。



 俺は部屋に帰ると

「柏木、どうだった?」

「別に。スマホの連絡先教えた位だ」

「えっ、あの桂さんの連絡先!俺も知りたい」

「それは出来ないよ」



 その日の夕食の時、班の女子三人から色々聞かれたけど適当に流した。夕食後にここのホテルの最上階にあるお風呂で景色を見ながら


「大吾、俺疲れたよ」

「まあ、そうだな。でも昨日の事は仕方ない。桂さんがああなるのも仕方ない。運命だな」

「この呪縛何とかならないかな?」

「お前にしか解けない呪縛だよ」



 翌日は、バスに乗って熊本城や他の名勝を見た後、午後二時の飛行機で東京に戻った。


 帰りは、どうしても矢田さんと塚野さんが一緒になる。勿論大吾も一緒だ。遠藤さんは、線が違うらしく、品海に着いてから別れた。


 家に戻ると、家族は誰もいなかった。疲れている俺はバッグから洗濯物を取出して洗面所に置くと自分の部屋に戻ってベッドに横になった。


 桂さんかぁ。取敢えず、親には言っておくか。いきなり連絡有っても大変だからな。



 夕飯前に梨花に起こされた。部屋着に着替えた後、両親へのお土産と梨花へのお土産を持ってダイニングに行って、お土産を渡した後、桂さんの事を両親に話すと、何故か梨花が


「桂さんって学年いえ学校のマドンナって呼ばれている人だよね。お兄ちゃん、女子を惹きつける磁石でも持っているの?」


 持っていたら絶対に直ぐに捨てるよ。両親は笑っていたけど。そういえば土曜日は陽子ちゃんと会ってお土産渡さないと。明日の金曜日は休みだ。ゆっくりと休むか。


 と思っていたら、夕食が終わった後、桂さんから連絡が有って、日曜日に桂さんと両親がお礼の挨拶に来ると言って来た。せっかく一人で休めると思ったのに。 


―――――

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


新作公開しています。読んでくれると嬉しいです。

お馬鹿な彼と恋愛不向きな私の恋愛模様

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現代ファンタジーです。

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宜しくお願いします。

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