彼女を寝取られた俺は新しい彼女と楽しく過ごしたい

第59話 妹の心配事

　俺は、学校から帰って来ると梨花が声を掛けて来た。

「お兄ちゃん、聞きたい事がある」

　多分優子の事だろう。いずれ聞かれる事だし、はっきりと言っておいた方が変に誤解を招くよりいい。

「いいよ」

　梨花は俺の部屋に入って来ると

「お兄ちゃんは、あの人と因りを戻したの？」

「因りを戻したというより、友達に戻ったって感じ。多分梨花が気にしている恋人同士に戻ったっていう事じゃないよ」

「でも、あの人はお兄ちゃんを裏切ったんだよ。お兄ちゃんという大切な人が居ながら他の男に…」

「梨花、それ以上言うのは止めろ。お前から汚い言葉は聞きたくない。確かに優子は俺を裏切った。例え最初は、無理矢理だったとしてもだ。

　だけど、それに気付かなかった俺も馬鹿だったという事だ。優子だけ悪者には出来ない。でも恋人同士に戻れるほど俺の心は広くない。だから友達止まりだ」

「そんな事お兄ちゃんが思っているだけの事だよ。あの人はいずれまたお兄ちゃんの恋人になろうと色々してくる。陽子ちゃんと付き合えばそれが出来なくなる。だから…」

「梨花、優子とも陽子ちゃんとも付き合う気はない。どちらと付き合ったとしてもあの姉妹の仲はギクシャクして最悪な事にもなりかねない。俺は他の人を選ぶって決めたんだ」

「そんなぁ…。他の人って誰。プールに行ったり勉強会でいつも付いて来た矢田さんとか塚野さんって人？」

「分からないよ。今の所、あの二人にも俺の気持ちは向いていない」

「いずれ向くって事？」

「それも分からない。誰か選べばいいんだろうけど、それも出来ないでいる。はっきり言って当分好き嫌いとかは面倒になっているんだと思う」

「じゃあ、陽子ちゃんを友達として一杯会ってあげてよ」

「梨花、なんでそこまで彼女の事を推すんだ。あの子はとても可愛いし、優しくていい子だ。俺なんかより他に良い人一杯いるだろう」

「お兄ちゃんが一番！お兄ちゃんなら安心出来る」

　はぁ、切りないなこの会話。

「どっちにしろ、優子とも陽子ちゃんとも普通に友達として会ったり話したりするだけだ。二人だけで会う事もしない」

「お兄ちゃん…」

　私は、これ以上話しても仕方ないと思った。お兄ちゃんは、あの人を避ける様な事はしない。だから成績発表の時、声を掛けたんだ。

　陽子ちゃんは、この事はまだ知らない。せめてお兄ちゃんから言って欲しい。

「じゃあ、一つだけお願いがある」

「なんだ」

「明日、お兄ちゃん稽古終わったら陽子ちゃんと会ってその事話してあげて。私も一緒に居るから」

「梨花が話せばいいじゃないか」

「お兄ちゃんでないと駄目なの。あの人にもお兄ちゃんから話したんでしょ。だったら陽子ちゃんにもお兄ちゃんの口から説明してあげてよ」

「分かったよ」

　仕方なしに稽古が終わった後の午後一時に駅前のファミレスで梨花と一緒に陽子ちゃんと会って、梨花に説明した内容をもう一度話した。

「悠斗さん。友達というだけでも良いです。でも偶には私と二人だけで会って下さい。この通りです。お願いします」

「ごめん、それは出来ない。これは優子にも同じだ。二人のどちらかと会えば必ずもう片方と会わなければいけなくなる。それは避けたい」

「私だけ会ってくれればいいんです。あの人と二人で会う必要はありません」

「陽子ちゃんはそう思っても俺の気持ちの中で整理が出来なくなる。もう決めた事なんだ」

「じゃあ、梨花ちゃんと一緒に会って下さい」

　粘るなぁ。もう諦めてくれてもいいのに。

「お兄ちゃん、私からもお願い。それなら良いでしょう」

「うーん。考えさせて」

　優子が、もし陽子ちゃんと会っている事を知ったらどうするんだろう。何もしないと思うけど…。まさか二人で会ってなんて言わないと思うけど…。

　あれ、俺優子と二人で会ってるじゃないか。駅までとはいえ登校は一緒だし、川べりの散歩とかも。でもあれは優子が俺を追いかけて来た時だし。

　目の前いる二人が俺をジッと見ている。そんなに見なくても良いのに。

「分かった、梨花と一緒なら良いよ。でも毎週とかは駄目」

「じゃあ、どの位なら？」

「月一回位かな。二人共忙しいでしょ」

「そんな事ないです。悠斗さんと会えるならどんな事よりも優先します」

　はぁ、そこまで言うのかよ。

「じゃあ、その時都合で。でも毎週は絶対に駄目。後、決まった日とかも駄目」

「分かりました。梨花ちゃんと相談して決めます」

「後二人にお願いがあるのだけど」

「なんでしょうか？」

「優子の事、もうあの人って呼ぶの止めて。妹が姉をあの人と言うのはおかしいよ。これ守ってほしい。梨花も同じだよ」

「分かりました」

「今日はこの位で良いかな。俺、汗臭いだろう。早く家で胴着洗いたいんだ」

「そんな事ないです。悠斗さんの汗の臭いは、好きです」

　何と受け取って良いのやらだよ。

「お兄ちゃん、残念でした。でももう帰ろうか。陽子ちゃん」

「うん、あの…。いつ会えますか？」

「「えっ？！」」

　もう聞くの？

「じゃあ、来週、修学旅行があるから、日曜日にしようか。お土産渡したいし」

「はい！」

　なんとか、梨花と陽子ちゃんを納得？させてファミレスを三人で出た。梨花は陽子ちゃんとそのままどこかに行く様だ。

　私は、お兄ちゃんと別れた後、陽子ちゃんと話した。

「とにかく急がないで行こう。お兄ちゃんは当分、彼女作る予定無さそうだし。それに会った時にお兄ちゃんの気を少しでも惹くようにすればいいよ。決して急がず無理せずに。私は途中で適当に抜けるから」

「でもそれじゃあ、約束が…」

「大丈夫。私が抜けたって、陽子ちゃんを無視する程、お兄ちゃんは冷たくないから」

「それは分かりますけど」

「とにかく無理なく寄り添う感じで行こう」

「うん」

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次回をお楽しみに。

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お馬鹿な彼と恋愛不向きな私の恋愛模様

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