3日目 前編ーいざ、おうち合宿!ー
前回のあらすじ
――三人のたまり場となったカイの家であった――
五月。徐々に大学生活に慣れてきたぼくたちに、ゴールデンウィークというご褒美が与えられる。五月第一週、大学終わりのぼくらは講義室で喋っていた。
ハナ:「明日からゴールデンウィークだなー。なにする?」
ヤマ:「バイト」
カイ:「バイト」
ハナ:「いや、バイト以外の時間の話よ。四六時中バイトしてるわけじゃないでしょ?」
カイ:「でも、ぼくは塾で働いてて、ヤマは居酒屋でハナはアパレルでしょ?」
ヤマ:「時間帯が見事に分かれてるよな」
ハナ:「うーん、たしかに」
カイ:「どっかに泊まりに行くとか、遠出は無理そうだね」
ハナ:「じゃあさ、プチ同棲しようぜ!」
ヤマ:「プチ同棲?どういうこと?」
ハナ:「三人でカイん家泊まるんだよ!ゴールデンウィークの間ずっと」
カイ:「同棲ってかお泊まり会だねそれ」
ヤマ:「意外といいかもな、費用も抑えられそうだし」
ハナ:「だろ?みんなでバイト終わりにパーティーとかできるし」
カイ:「…まあ、食材とか電気とかのお金出してくれるならいいよ」
ハナ:「やったー!じゃあ、荷造りして今日の夜集合な!」
ヤマ:「了解!」
その日の夕方、ヤマとハナは車でぼくの家を訪れた。
カイ:「なんで車?コインパーキングに駐車したらお泊まり中に破産しちゃうよ?」
ハナ:「二人で相談したんだけど荷物が多くて。あと収納ケース買ってきた」
カイ:「車は後で戻してくる」
カイ:「もう引っ越しじゃん」
トランクの中を見ると、家具屋などに置いてある収納ボックスが2つ積まれていた。どうなってんだほんとに。
ハナ:「このサイズなら部屋にいい感じに収まると思ったんだよね」
カイ:「ほんとに同棲するつもりなのか?」
ヤマ:「当たり前だろ。プチ同棲だからな」
カイ:「あ、お前お泊まり会側じゃなかったんだ」
ハナ:「うちにあるヨギボーも持ってきた!」
カイ:「広い部屋にしてよかったー、本当に」
それから、ぼくの部屋へと荷物を運び込み、二人の持ってきたものは収納ケースになんとか収まった。その後ヤマとぼくはアルバイトへ行き、ハナは留守番をすることになった。
ヤマ:「じゃあ、留守番よろしく」
ハナ:「寂しいよー」
カイ:「もし暇だったら、部屋の掃除お願いします」
ハナ:「はいよー。行ってらっしゃい!」
バイトを始めて一ヶ月程度のぼくらは、勤務時間もそれほど長くない。三時間ほどしてシフトの時間が終わり、三人のグループラインを開く。
カイ:[バイト終わった]
ヤマ:[俺もおわったぞ]
ハナ:[おつかれー!夜ご飯何食べたい?]
カイ:[ハンバーグかな]
ヤマ:[あんかけチャーハン!]
ハナ:[マカセロ]
カイ:[ハナって料理できんの?]
ハナ:[人並みにはね]
[買い物行きたいんだけど鍵どこにある?]
カイ:[靴箱の上の、青いストラップついてるやつ]
ハナ:[了解!ありがと]
車を置いて電車で来たヤマと待ち合わせをし、飲み物を買いにスーパーへ行く。未成年なのでコーラとファンタ。法律は積極的に守っていきたい。
部屋に着くと、ドアを開けた瞬間にすさまじく良い匂いが漂ってきた。
カイ・ヤマ:「「ただいまー!」」
ハナ:「おかえりー!もうすぐできるから着替えてこい!」
ヤマ:「なんだこの匂いは。ここは中華料理屋か?」
カイ:「ほんといい匂い!お腹空いてきた」
廊下を抜けドアを開けると、キッチンには花柄のエプロンを着けたハナが料理をしていた。そのエプロンと手際の良さのせいで、顔を隠せば主婦にすら見えてしまう。
ぼくはその様子を凝視しながら着替え始める。すると、後ろから入ってきたヤマが不思議そうに声をあげた。
ヤマ:「なんか、部屋変わってないか?」
よく見ると、出る前は普通のオシャレ度だったぼくの部屋が、ちょいオシャへと進化している。部屋がすっきりして小物が追加されたようだ。
カイ:「ハナ、ちょっと模様替えした?」
ハナ:「んー?ああ、部屋片付けたあとにオレんちから持ってきた小物とか百均で買ったやつをいろいろと飾ってみた!気に入らなかったら元に戻すよ」
カイ:「いや、めちゃくちゃ気に入った!なんか、すべてにありがとう」
ヤマ:「これはすごいな」
カイ:「ぼく、今日の食費全部出すわ!」
ハナ:「え!?いいの?」
カイ:「うん。非常にハッピーな気持ちにさせてもらった。ハッピー料を食費で立て替えることにする」
ハナ:「ありがとー!ごはんできたよ」
食卓に運ばれてきたのは、一人一合はあろうかという大盛りチャーハンと
、どうやら手作りらしい大きなハンバーグだった。
カイ:「よし、たべよ」
ハナ:「まって、今日の給食委員だれ?」
ヤマ:「誰でもいいだろ、早く食べようよ」
カイ:「じゃあ、ぼくやるよ。手と手を合わせてください。いただきます!」
ハナ・ヤマ:「「いただきます!」」
カイ:「まずはハンバーグから」
ヤマ:「俺はチャーハンから」
カイ・ヤマ:「「うんまぁー!?」」
ハナ:「マジ?よかったー!」
ヤマ:「料理のセンスまであるのかハナは」
ハナ:「どうやらそうみたいですな」
カイ:「ハナも食べてみて、マジでおいしいから」
ハナ:「じゃあチャーハンの方を。ん!これは…、シェフを呼んでくれ!」
カイ:「まあ気持ちはわかる」
ヤマ:「中華料理でシェフ呼ぶことあんまりないけどな」
ご飯を食べた後、みんなで片付けをし、風呂の話になった。
ハナ:「お風呂の順番どうする?まだ沸かしてないけど」
ヤマ:「ハナが一番でいいんじゃないか?家事やってくれたし」
ハナ:「えーありがと」
ヤマ:「お前時々心の中のギャルが出るよな」
ハナ:「誰しも心の中にギャルを持っているはずだよ。ほら、君の心にも」
ヤマ:「えーマジで?」
ハナ:「ほら、それもまたギャルだ」
カイ:「盛り上がってるとこ悪いけど、歩いて5分のとこに銭湯あるよ」
ヤマ:「なんだよ」
ハナ:「早く言ってよー」
カイ:「二人で勝手に話進めてたから」
ハナ:「じゃあ、その銭湯早くいこ」
その後、三人そろってお風呂に入り、牛乳を飲んで帰ってきた。帰り道にコインランドリーがあったので、明日は洗濯物を持ってくることを決めて帰ってきた。
ハナ:「ただいまー」
カイ:「おかえりー」
ヤマ:「とりあえず布団敷くか」
カイ:「お前らが入居祝いで持ってきたやつな」
ハナ:「明日もバイトないから夜更かしするぞー」
カイ:「ぼくもバイトない」
ヤマ:「俺もないぞ」
カイ:「なんだ、遠出できたじゃん」
ハナ:「今日夜更かしするか明日早起きして遠出するかどっちにする?」
カイ・ヤマ:「「夜更かし」」
ハナ:「だよねー、ジュース飲もうぜ!」
こうして、漢三人の夜更かしパジャマパーティーが始まった。
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普通の大学生日記 大犬数雄 @ooinu_kazuo
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