負けを覚悟のカチコミ③
PM 11:59
明かりを消した自室のベッドの上で仰向けになり、スマートフォンの画面を眺めるシゲミ。表示されている時刻が0時ちょうどになった。同時に
シゲミは家族用のメッセージグループに、
1分後、シゲミの部屋の入口扉が開き、室内に明かりが灯る。祖母・ハルミが猛スピードでシゲミの部屋にやって来たのだ。
ハルミ「シゲミよ、この向風というヤツがアタシャらを狙う敵じゃな」
シゲミ「ええ、間違いない。顔写真はAIで作ったものだから、正確な人相はわからないけど」
ハルミ「これだけあれば充分じゃ。
シゲミ「母上とキリミ、サシミが戦ったのもこの写真の一味だとしたら、敵は全員特殊な力に覚醒した幽霊だと思う」
ハルミ「十中八九そうじゃろう。だったらあのジジイが役に立つ……聞いとるんじゃろクソジジイ!出てこぉい!」
数秒の沈黙の後、ハルミが見えない何かを右手で掴み、コブラツイストの体勢を取る。ハルミが絞め上げていたのは、透明になって隠れていたシゲミの祖父だった。悶絶しながらその姿を現す。
シゲミ「ジジ上、また私の部屋に……」
シゲミの祖父「嫌じゃ!嫌じゃ!ワシには関係ない!」
ハルミ「関係おおありじゃこのボンクラぁ!娘と孫たちが狙われとるんじゃぞ!」
シゲミの祖父「もうワシは死んどるんじゃ!生きてる家族の問題は、生きてる者だけで解決せい!」
シゲミの祖父をコブラツイストから解放するハルミ。シゲミの祖父は床に四つん這いになる。
ハルミ「そんな無責任なことを言うのか。ならもうお前は用無しじゃ。この場で成仏させてやる」
シゲミの祖父「えっ!?いやそれだけは……」
ハルミ「成仏したらもう孫たちの顔は拝めんし、お前が生前やってきたことを考えると死後行く場所は……極楽浄土ではなかろう」
シゲミの祖父「うぐぐぐぐぎゅぅ……ワシは血の池地獄に墜ちるのも、針地獄に墜るのも嫌じゃ……でも孫に会えんのはもっと嫌じゃぁぁぁ!」
大粒の涙を流すシゲミの祖父。その肩に手を乗せるハルミ。
ハルミ「じゃったら家族に協力せい」
顔を上げたシゲミの祖父に、ハルミは自身のスマートフォンの画面を見せつける。
ハルミ「この写真の人物たちが何者か探れ。過去の経歴、現在の潜伏先、生活範囲、他の仲間の有無などわかることすべてじゃ。もし可能なら此奴らの仲間として潜入し、アタシャらに情報を流せ。全員幽霊の可能性があるから、交渉次第ではジジイを仲間として招き入れてくれるかもしれん」
シゲミの祖父「……わ、わかった。調べ終わるまで少し時間をくれ」
シゲミの祖父は立ち上がると、とぼとぼと歩き、壁をすり抜けてシゲミの部屋の外へと出て行った。
ハルミ「ええかシゲミ!厳重に警戒しつつ総力を挙げて此奴らを潰す!負傷しとるトモミは留守番!キリミとサシミはトモミの護衛に回す!お前はアタシャと前線に立て!」
シゲミ「わかった」
ハルミ「トモミたちの代わりとしてジンくん、空手家のキョウイチくん、それからハゲ坊主の撃山の力を借りたい。連絡を入れてくれるかのう?」
シゲミ「了解……ちょっと話が戻るんだけど、ジジ上に情報収集をやらせるの?ジジ上って元々ただの無職で、ババ上が養ってたヒモだったんでしょ?」
ハルミ「そう伝えとったな。ジジイは立場上、その素性を家族にすら隠し続けてきた。アタシャは拷問して吐かせたから知っておったが……シゲミ、お前の祖父は生前、警察庁警備局公安課所属の潜入捜査官じゃった」
シゲミ「潜入……」
ハルミ「公的には存在しない『生きている幽霊』。つまりプロのスパイじゃよ。今のジジイはガチの幽霊じゃが」
シゲミ「えぇ……」
ハルミ「アタシャが殺し屋として現役バリバリじゃった頃、ターゲットの情報は全てジジイに調べさせとった。普段はボンクラじゃが、スパイとしての腕は信頼してええ」
シゲミ「成長するにつれて親戚の意外な一面を知ることってよくあるけど、まさかジジ上がスパイだったなんて……今度、同好会のみんなに話そう」
ハルミ「ジジイが情報を集めてきたら作戦を練り、総攻撃に移る。さぁて、向風とかいうドアホ、どう
<負けを覚悟のカチコミ-完->
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