負けを覚悟のカチコミ②
レストランの外に出た
スーツの男たちの先頭に立つのは、右手に
向風「アナタはたしか
避山「見込み客の部下をボコちゃってましたか。でも尾行してきたのはアッチっすよ」
向風「不可抗力だ。お前のミスだとは思ってないよ。それにお前の捨て身の誘導で彼らを誘い出せた。この場で殲滅できれば、私たちも幾分か動きやすくなる」
20mほど離れて立つ3人をにらむ、浜栗組の組員たち。蟹沢が口火を切った。
蟹沢「アンタらを調査させていたウチの組員が消息を絶った。アンタらに消されたと推測しているが、本当のところどうなのか聞いておきたい」
避山「お察しの通り、その組員は死んだぜ。だが殺したのは俺らじゃない。誰の指示か正直に話せば見逃すつもりだったのに自殺したんだ」
蟹沢「死に追い込んだのはテメェらだろうが。そんな連中と手を組むことは到底できねぇし、このまま黙って引き下がるつもりもねぇ」
蟹沢の後ろにいた組員たちが一斉に銃を構える。
避山「んで、組総出でカチコミかい。絆の強いこと。おい昌爺、コイツら全員斬ってくれ」
昌爺「無理ですな。拙者、このヤクザどもを斬る分のお金はもらっておりませんので」
避山「はぁ!?8000万ももらっておいてまだむしり取るつもりかよ!このカツアゲジジイ!……クソっ、俺がやるしかねぇか」
向風「待て避山。昌爺さん、私の全財産である2万円をお支払いします。今はこれが限界です。しかしアナタの力を考えると、この害虫どもを駆除するには充分な報酬かと思います」
昌爺「……ええ、容易いですよ。2万円はもらい過ぎかもしれませんな」
向風「感謝します」
避山「昌爺の野郎、すっかり向風先輩の犬になってやがる」
昌爺は左手で地面についていた木製の杖の持ち手を引き抜く。杖の中には刃が隠されていた。
組員の男「
蟹沢「下手に動かれる前に蜂の巣にする。全員
言葉の途中で蟹沢の首が宙を舞う。昌爺は目にもとまらぬスピードで接近し、仕込み杖で蟹沢の首を切断していた。
浜栗組の組員たちが銃を乱射するが、昌爺は自身に向かって飛ぶ弾丸を全て斬り伏せ、組員たちを次々に斬殺していく。2分足らずで60人のヤクザ全員がバラバラ死体となった。
昌爺は、腰の部分で体が真っ二つになった死体の背中の上に腰を下ろす。
昌爺「2分で2万。破格のお仕事でございました」
避山「さすが、『
向風「結果論だよ。ヤリーカで戦闘になればマスターに迷惑をかけることになるのだから、どのみち場所は移さざるを得なかった。それに
向風は昌爺に近づき、尻ポケットから取り出した長財布の中の2万円を渡す。
向風「避山、死体の始末は任せたよ。私は昌爺さんと一緒に都内に戻って、浜栗組の残党を消す。事務所の大きさからして、ここに来たのが組員の9割以上だろうが、また報復だの何だのされないよう根絶やしにしなくちゃね」
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