Sales , Management & Delete③

翌日 AM 11:23

幽霊駆除業者ワーナー・ゴースト・トラップ西新宿支店

ガレージに煩雑に置かれた駆除用の機材を整理する男性店長・大端おおはし。その背後、閉まったシャッターをすり抜けた避山ひやまとヨーコ・フレイムフォックスが歩いて大端に近づく。2人の気配に気付き、大端が振り向いた。



大端「あっ、お客様ですか?申し訳ありませんが、ここはバックヤードでして。駆除のご依頼でしたら、店舗の窓口で受け付けております」


避山「ああ、知ってるよ。だからまず店舗に顔を出してきた」



避山は左手に握っていたダガーナイフを大端の首に突き刺す。刃が首を左右に貫通した。避山はダガーナイフを引き抜き、大端の腹部を4回刺す。


首と腹部から大量に出血し、膝からうつ伏せに倒れる大端。その傍らにしゃがみ込んだ避山は、大端が着ている作業着の背中に血のついた刃を押しつけて拭う。



避山「これで西新宿支店のスタッフ全員デリート。本店のほうは今ごろ、昌爺まさじい出汁素だしもとが片付けてくれてるだろう」


ヨーコ「ワーナー・ゴースト・トラップの連中は勧誘しなくて良かったの?一応、幽霊殺しの専門家なんでしょ?」


避山「向風むかいかぜ先輩は、勧誘しろと言っていた。でもコイツらは誰も幽霊にならなかった」


ヨーコ「なるほどね」


避山「俺らがったことはバレないだろうが、ヨーコ、念のためこの店ごと死体を全部燃やせ」


ヨーコ「りょ」



−−−−−−−−−−



AM 0:37

某県にある広大な公園・味付雷あじふらい公園

入口の門の前で裏皮うらかわ クシカズがハンディカムを構える。裏皮から3mほど離れて立つ、紫色のワンピースを着たアイドル・広背ひろせ モモ。



モモ「元気MAXネギMAXで、今日も1日がっつくね!広背 モモで〜す!今回は、味付雷公園にやって来ました〜!なんでも、この公園の一角にある『隠匿いんとくの森』と呼ばれる場所には、夜になると鎧武者の幽霊が出るのだとか!ということで、その幽霊を私の絶叫で除霊しちゃいま〜す!」


裏皮「はぁいカットォ!オープニングOK!次は隠匿の森に入る直前から撮影しよう」


モモ「ここは撮影許可取ってるんですよね?」


裏皮「心配すんな!俺の交渉術で見事許可取りに成功した!土下座と500万円の小切手が決め手だったな!」


モモ「交渉術の『こ』の字もない〜!」



モモと裏皮に、どこからともなく現れた避山が近づく。



避山「広背 モモっすよね?いつも動画見てます。サインくれません?色紙が無いんで手のひらに書いてください」


裏皮「あー、ファンの人?ごめんなさいね、撮影中だから後にしてもらえるかな?」


避山「どうしても今がいいんすよ。早く帰って飲みたいんで」


モモ「私は全然構わないですけど〜」


裏皮「撮影許可は時間制限付きで出してもらったんだ。かなりタイトだから、先に撮影を」



裏皮の背後、暗い夜の闇の中から手を伸ばして裏皮の右肩に触れるヨーコ。直後、裏皮の全身が青い炎に包まれた。



ヨーコ「そう固いこと言わずにさぁ、ファンサしてあげてよ」



炎が消え、裏皮は人間の形をした灰の塊になる。ヨーコが灰の塊を蹴ると、粉々に砕け散り、夜風と共に吹き飛んでいった。


裏皮が目の前で焼死したことに恐怖し、言葉を失うモモ。



避山「広背 モモ。お前が生きてるとマジで厄介なんだ」



避山は左腰に下げたダガーナイフをさやから引き抜く。



モモ「ひぃぃきぃ」



モモが息を吸って除霊絶叫をしようとした瞬間、正面にいたはずの避山が背後に現れ、逆手に握ったダガーナイフでモモの喉笛を斬り裂いた。



避山「除霊絶叫それは俺らにとって深い極まりない」



口から血の泡を吹き出すモモ。喉の傷から空気が漏れてしまい、声帯を震わせることができない。



避山「悪いね。俺はんだ」



避山はモモの背中を7度突き刺す。白目をむいてうつ伏せに倒れるモモ。地面が血だまりと化した。



避山「コイツも幽霊にはならなかったか……ヨーコ、燃やせ」


ヨーコ「りょ。つーかさ、これって残業代出るんだよね?」


避山「出すよ」


ヨーコ「深夜割増は?」


避山「……向風先輩に聞いておく」



<Sales , Management & Delete-完->

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