Sales , Management & Delete②

浜栗組はまぐりぐみの事務所が入っているビルのエントランスから外に出てきた向風むかいかぜ避山ひやまが歩道のガードレールに寄りかかりながら待っていた。



避山「どうでした?」


向風「NOに近い検討だな。すでに幽霊への対抗手段はあるからと、シゲミの名を出されたよ。やはり彼女たち既存の幽霊暗殺者を排除しないと、見込み客は重い腰を上げないね」


避山「コストカットができるとしても、新しいツールや仕組みの導入に後ろ向きな組織って多いっすよね。契約をまき直したり、内部の体制を変えたりする手間を考えて尻込みしちまうんでしょう」


向風「日本は企業もヤクザも保守的だ。彼らに行動を起こさせるには、緊急性が必要だよ」


避山「……幹部たちに指示し、怪異暗殺者どもの始末を急がせます」


向風「頼むよ。私は生前から取引があったクライアントを優先的に当たってみる。浜栗組のような完全に新規の見込み客より、前向きに検討してくれる可能性は高いだろう」



−−−−−−−−−−



PM 8:37

BAR ヤリーカ

避山の招集で店にやって来た幹部たち。カウンター席の奥から、避山、ヨーコ、リク、Dr.透野とうの出汁素だしもと昌爺まさじいの順で座る。



避山「向風先輩のコネを使っても、クライアントを増やすのには限界がある。新規顧客の獲得は必須。そのためには怪異暗殺者どもの始末を早急に済ませなきゃならねぇ。まずハルミだが」


リク「ハルミはオレがるよ。あの水鉄砲の学生も一緒に。でもすぐには無理。避山さんが言ってたとおり、今のオレじゃまだ勝てない」


避山「確かに言ったが、事情が変わった。ハルミは俺が」


リク「オレがる」


ヨーコ「やらせてあげたら〜?若者の大志をおじさんがくじくのはナンセンスっしょ。ハルミが最優先ってわけでもないでしょうし」


避山「ならヨーコ、お前はどうなんだ?すぐにでも動けるのか?」


ヨーコ「あと10日ちょーだい。作戦は決まったんだけど、実行には時間がかかるの」


避山「はぁ……なんてマイペースな連中だ」


出汁素「避山さん、向風さんはいつ私の店に来てくださるのでしょうかぁ?早く料理を振る舞って差し上げたくてぇ!」


避山「料理より暗殺だ!そんなに料理がしたけりゃ、シゲミ一家を材料にしろ!」


出汁素「それ、いいですねぇ!ではメニューを考えねばぁ!2週間くださいぃ!」


昌爺「あのぉ……拙者、そろそろ寝る時間なので帰ってもよろしいでしょうか?」


避山「まだ夜の8時半だぞ!?」


昌爺「本当は7時半には寝たいのです」


避山「もう!ウスノロばっかり!」


Dr.透野「私は準備OKよ、避山くん。とは明後日会う予定」


避山「さすがだ、Dr.透野。やっぱ医者ってのはしっかりしてるんだな。お前が全員始末してくれないか?」


Dr.透野「それは嫌。仕事以外の殺しを楽しむ時間もほしいから」


避山「……まぁとりあえず頼んだぞ。他の連中はオレがターゲットを割り振り直すから、ちょっと待っとけ!……って俺だけやること多くねぇか?これで他の幹部と同じ給料だったら割に合わんぞ」


ヨーコ「大変だねー、中間管理職」

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