殺し屋幽霊チーム会議
殺し屋幽霊チーム会議①
PM 11:00
新宿区 歌舞伎町
BAR ヤリーカ
横並びの7つのカウンター席。最奥に
カウンターの中にいる黒いタキシードを着た男性マスターが気まずそうに口を開いた。
マスター「あの〜、私のイメージですが、悪そうな人たちの会議って向かい合わせに座ってやるものでは?横並びっていうのはなんとも……」
向風「いろんな形があっていいじゃない。多様性というヤツだよ。それに、マスターは私たちの計画を知っている。だからここなら安心して会議ができるんだ」
マスター「私に話したのはそのため?」
向風「いや、単に自慢したかっただけさ。店の貸し切り料金は避山にツケといてほしい」
避山「マジっすか!?払えるかな?」
向風「すぐに金に困らないほど忙しくなるさ。では自己紹介をしていこう。私のことは避山から話しているとおりだ。みんなのことを簡単にでいいから知りたい。まずは一番右端のご老人から」
上が黒、下が灰色の袴を着た、白髪を頭の両サイドに残しハゲ上がっている老爺が話し始める。
避山「昌爺は裏社会で『
向風「殺しの経験値は私をも凌ぐだろうな。老いぼれた見た目もターゲットの油断を誘うのに役立ちそうだ。期待しているよ。次は金髪の女性、よろしく」
昌爺の左隣に座る女性がカクテルグラスを口元に運ぶ。金色の長い髪をツインテールにした、くっきりとした目鼻立ちの女性。黒いパーカーを着ている。
ヨーコ「アタシはヨーコ・フレイムフォックス。日本人とアメリカ人のハーフ。年はどうでもいいでしょ?生前は職業じゃないけど、結婚詐欺師をやってた。死んでからもいろんな男をカモってたところを、避山にスカウトされたの。もっと稼げる仕事があるって」
避山「ヨーコはただの結婚詐欺師じゃない。カモった相手に訴えられないよう、金を巻き上げたらこの世から跡形もなく抹消する。詐欺師と殺し屋を兼業してるようなヤツです」
向風「殺し屋が最も苦労するのは、ターゲットに違和感を持たれず接近することだ。その方法として結婚詐欺のノウハウが活かせるだろう。理想的な能力だ。では続いて、白衣の女性」
ヨーコの左隣に座っている、スレンダーな中年女性が長い前髪をかき上げた。黒いワイシャツの上から膝丈まである白衣を着ている。
Dr.
避山「Dr.透野は対価をもらわず、善意で人を殺します。俺には理解できないっすね」
向風「その善意を、今度は我々チームのために活かしてくれたまえ、ドクター。次は筋肉モリモリマッチョマンな方」
Dr.透野の左隣に座る、白い厨房服がはち切れそうなほどの巨体で、天井に届くくらい長いコック帽を被った男性が口を開く。
避山「俺は食う気しないっすけど、出汁素は人肉料理が得意らしいです。食材の調達から調理まで全て自力で行う一流シェフ」
向風「人肉か、食べたことないな。お店、行けたら行くよ。最後は学ランのキミ」
向風は右隣に座る少年の肩に手を置く。1つの中学校に20人はいそうな、特徴のない男子学生。
リク「名前はリク。中2。いじめを受けてて、殴られた拍子に床に頭を打って死んだっぽい。ムカついたから、俺のこといじめてた生徒含め学校の関係者を殺し回ってた。その最中、避山さんと出会った。全人類抹殺計画を遂行中だから、学校以外の人間でも殺すよ」
避山「この店に充満している邪気はすべてリクが放っているもの。邪神ポコポコには数歩劣りますが凄まじい量です。いま生者が店に入れば、1秒足らずで卒倒するでしょう」
向風「さっきから気分が良いと思ったら、キミのおかげだったのか。そのアロマオイルのような邪気は、私たちの士気を高めてくれるだろう」
右手でウイスキーグラスを持ち、頭の上に掲げる向風。
向風「これから我々はチームだ。諸君らにはまず競合の排除をお願いする」
向風はグラスの中の青汁を一気飲みする。他の面々もそれぞれのグラスを掲げ、入っている飲み物を一気に飲み干した。
向風「では各自、割り振ったターゲットの始末にかかってくれ。避山、幹部と面会する場を作ってくれてありがとう。私からもお前に紹介したい人がいる」
避山「どなたです?」
向風「見込み客だよ。それにあたって幽霊を1体連れてきてほしい。30分以内に頼む」
避山「了解っす。ヨーコ、手伝ってくれ」
ヨーコ「いいけど、残業代出せよ」
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