吸血鬼 VS 盗撮魔(全3話)
吸血鬼 VS 盗撮魔①
PM 0:21
4限目の授業が終わって昼休みになった直後、教室を飛び出したシゲミは化学実験室へ向かう。実験室の扉を開けると、中でカズヒロとトシキが陰鬱な表情を浮かべながら椅子に座っていた。
シゲミ「サエちゃんのこと、本当?」
カズヒロ「ああ。今朝、部屋で意識を失ってるのを親御さんが見つけたらしい。今は病院にいるそうだが、まだ意識は戻ってないってさ……
トシキ「たぶん、夜中にサエちゃんの部屋に侵入してやったんだよ」
カズヒロ「……サエが襲われたのって、武里村から俺らへの警告だよな?ターゲットは心霊同好会で、家にいても魂を奪えるぞっていう」
シゲミ「だとしても、このまま引き下がれない」
シゲミは化学実験室を出て行こうとする。
トシキ「どこ行くのシゲミちゃん?ボクたち、これからサエちゃんのお見舞いに行こうって話してたんだけど」
シゲミ「2人で行ってくれる?私は武里村を探し出して始末する」
シゲミは化学実験室を後にした。呆然とするカズヒロとトシキ。
トシキ「シゲミちゃん、ブチギレてるね」
カズヒロ「人を呼ぶとき必ず『くん』とか『さん』とか付けるシゲミが『武里村』って呼び捨てにしたからな……」
トシキ「シゲミちゃんが怒ってるところ、初めて見たよ」
カズヒロ「それだけ
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PM 1:12
武里村「ショウタくんをいじめてた連中、今日はキミの舎弟みたいになってたな。いじめっ子なんて所詮、自分の弱さを隠すのに必死な小物だ」
ショウタ「カメラのおじさんのおかげだよ!それより、姉ちゃん大丈夫かな……今朝、救急車で運ばれてたけど……」
武里村はショウタの左肩に右手を置く。
武里村「彼女には、お父さんとお母さんが付いてるから大丈夫さ。でもお姉さんの分もキミがしっかりして、家を守らなきゃな。もちろん私が憑いてるから、安心しなさい」
目尻とつながりそうなほど口角を上げて、笑顔を作る武里村。
ショウタ「ありがとう」
武里村はショウタが寝ている深夜にサエの部屋に侵入して魂を奪った。そのためショウタは武里村が犯人だということを知らない。
武里村「話題を戻そう。せっかく舎弟ができたんだ、このまま学校のトップを目指すのはどうかな?」
ショウタ「番長になるってこと?」
武里村「少し違うな。私とキミで学校中の不良を締め上げて更生させ、校内に平和をもたらす。そして学校中の誰もが敬い、慕う存在になるのさ。キミは今のうちから人の上に立つ感覚を体験しておくべきだ。人間のヒエラルキーは幼いころにほぼ決まる。大人になっても人の上に立つ人間は、決まって幼少期からトップに立っているものなのだよ」
ショウタ「そうなの?」
武里村「現に私がそうさ。小中学時代はずっと成績トップ。県内の進学校に進み、有名国立大学を卒業した。その後、校長という学校のトップに立てたんだ。キミも同じような道を歩むと良い」
ショウタ「トップか……でも、『コイツはそんな器じゃない』ってみんなに気づかれて、すぐ引きずり下ろされちゃうよ」
武里村「トップにはトップの振る舞い方があり、それをやっていれば周りに自然と認められる。とても簡単さ。何があっても頭を下げないこと。人に助けてもらって当たり前。何か問題が起きたら他人のせい。『ありがとう』と『ごめんなさい』を絶対に言わず、美容師以外につむじを見せない。それがトップに立つ者の振る舞いだ」
ショウタ「本当かなぁ?」
ショウタと会話する武里村の視界の隅に、電柱に貼られた紙が映った。自分の顔写真が載った紙。武里村は足を止め、電柱から紙を剥がす。指名手配の貼り紙だった。
ショウタ「どうしたのおじさん?」
武里村「……ショウタくん、おじさんは悪い人たちに狙われているみたいだ。もし誰かが私のことを尋ねてきても、その人が警察官だとしても知らんぷりすると約束してくれないか?今日の宿題を見てあげるから」
ショウタ「いいよ!また交換条件だね!」
再び歩き出す武里村とショウタ。50mほど先、電柱に紙を貼る柄の悪い男が2人見えた。武里村はウサギのように駆け出し、近くの民家と民家の隙間に隠れる。男たちはショウタに気がつき、近寄ってきた。
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