動き出す浜栗組(全2話)
動き出す浜栗組①
PM 8:42
柄の悪い組員たち合計60人が横向きで4列に並ぶ。組員たちの正面、向かい合うように立つ3人の男。中央にいるのは灰色のスーツを着た組長・
ドンゾウ「みな知ってのとおり、ミキホの昏睡状態が続いている。ミキホだけじゃなく、同じような状態で入院している若い子が大勢いるらしい。原因は
ざわつく組員たち。
ドンゾウ「信じがたいだろうが、幽霊がやったとしか思えん状況なのは確か。そしてその幽霊が何者か、これもミキホの友達が特定してくれた。蟹沢」
蟹沢「はい」
蟹沢は手に持った紙の束を目の前の組員に渡す。
蟹沢「ある男の顔写真と簡単なプロフィールを載せた紙だ。1人1枚ずつ取って回せ。コイツがミキホ嬢をやった野郎だ」
組員たちはそれぞれ手にした紙を見つめる。
蟹沢「
ドンゾウ「コイツを探し出し、事務所まで連れて来い」
「うおぉぉぉぉ!」「ミキホ嬢の
ドンゾウ「そして、こちらにいる血吸先生も協力してくださる。ミキホの家庭教師だ」
血吸「血吸と申します。武里村という者を必ず捕らえ、ミキホさんの意識を戻させましょう!」
最前列の右隅にいた、黒いジャージを着た若い男性組員が手を上げる。
組員「
ドンゾウ「……そう思うか?」
ドンゾウはジャケットの内ポケットから
血吸「ちょ、ちょっと浜栗さん!いきなり何するんですかぁ!」
穴は10秒足らずで塞がった。組員たちは全員、言葉を失う。
ドンゾウ「血吸先生はハジキで頭をぶち抜かれてもピンピンしてる不死身の吸血鬼だ。これでも足手まといだと思うか?」
組員「い、いえ、すいやせんでした……」
ドンゾウ「目には目を。相手が幽霊なら、こちらも人ならざる者の力を借りるべきだ。血吸先生は貴重な戦力になるだろう」
蟹沢「武里村は他人の意識を奪う手段を持っている。全員ペアで行動し、互いをカバーし合え。武里村の手によると思われる被害者は、ミキホ嬢が通う市目鯖高校の内部とその近隣に集中している。まずは高校周辺を徹底的に探れ」
ドンゾウ「血吸先生には蟹沢を付けます。他所の組やアウトローどもにも顔が利く。役立つはずです」
蟹沢「どうぞよろしく」
血吸「よろしくお願いします」
ドンゾウ「武里村を連れてくるまで、てめぇらの誰1人として事務所には入れねぇ。分かったな?」
「おおおおおぁぁぁ!」と大声で自身を鼓舞する組員たち。
血吸「浜栗さん、組の方々は頼もしいですが、相手の力がどんなものか私にも予想ができず非常に危険です。あまり深追いしないよう指示していただけませんか?」
ドンゾウ「血吸先生、私の部下を
血吸「はぁ……」
ドンゾウ「それに、ウチの組は鮮魚会の中でも武闘派ぞろいでね。汚れ仕事をいくつもこなしてきた凄腕のヒットマンがそろってる。幽霊ごときに遅れをとるような連中じゃありません」
血吸「ですが」
ドンゾウ「例えば、2列目の左から5人目の男。ヤツは『三丁拳銃のタカヒロ』。両手に持った拳銃と、ポ●チンを切り落として取り付けた股間のデリンジャーで戦う。まぁ、ポ●チンを切り落としたのは私ですがね」
血吸「三丁拳銃……な、なんて人だ!」
ドンゾウ「他には3列目の右から4人目、
血吸「切り殺すのではなく腸で絞殺……なんて二度手間なんだ!」
ドンゾウ「それから4列目にいる女。ウチの紅一点『カオリ・ザ・ブッチャー』。ターゲットを色仕掛けで焼き肉屋に誘い、生焼けの肉を食わせて中毒死させる毒殺のプロ」
血吸「焼き肉屋にも大迷惑がかかる……なんて陰湿なんだ!」
ドンゾウ「私は殺しに関して部下に口出ししません。コイツらのやり方に任せるのがベストなんです。だから血吸先生、余計な気を回さず、アナタは自分の身を守りながら武里村を探すことに集中してください」
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