少年とおじさん③
学校から帰宅したショウタ。自室で椅子に座り、ベッドに腰掛ける
ショウタ「カメラのおじさん、さっきはありがとうございました」
武里村「タメ口で良い。そのほうが、キミも気を遣う必要がなくて楽だろう?同級生だと思って話してくれ」
ショウタ「同級生とは思えないほど老けてるけど分かりまし……分かった。ボク、アイツらにいじめられてて……誰かに言いつけたらボコボコにするって脅されて……」
武里村「いじめの相談はしにくいものだ。私が受け持っていた生徒にも同じように悩んでいる子がいたよ」
3時間近く語り合った2人。いじめのことを家族や先生に話せずにいたショウタにとって、「カメラのおじさん」は良き相談相手になった。
武里村「ショウタくんが言いにくいことを相談してくれたんだ。私も1つ、誰にも言えない秘密をキミに話そう」
武里村は自身が幽霊であることを打ち明けた。理由は「人に言えない秘密を共有している間柄」としてショウタからの信頼を強固にし、何かあった場合の駒として利用しやすくするため。武里村が小学校に行ったのもショウタが困っているところを助けて恩を売り、懐柔することが目的。ショウタがいじめられている現場に遭遇できたのは、武里村にとって渡りに船だった。
会話の途中でショウタの部屋の扉がノックされる。
ショウタ「おじさん隠れて!」
ショウタは小声で武里村にベッドの下に入るよう促す。武里村はうつ伏せで狭い隙間に入り、息を潜めた。
扉を開けて部屋に入ってきたのは、
サエ「ショウタ〜?誰かとしゃべってた〜?」
ショウタ「いや、タブレットで動画見てただけ!クソつまらないXYZtuberの動画ばかりおすすめに表示されるから、文句言ってたんだよ!」
サエ「あっそう。私、同級生のお見舞いに行ってくるから、お母さん帰ってくるまで留守番よろしくね〜」
ショウタ「分かった」
サエ「動画はほどほどにして、夕飯までに宿題済ませときな〜」
ショウタ「姉ちゃんも試験の勉強しなよ!」
サエ「はいはい、分かってますよ〜」
サエはショウタの部屋を後にする。ショウタは扉を閉めると耳を当て、サエが遠ざかるのを確認し、ベッドの下の武里村に「もう大丈夫だよ」と声をかけた。
隙間からスルリと出て、立ち上がる武里村。
ショウタ「さっきのが姉ちゃん。友達とオバケを調べるのが趣味なんだけど、カメラのおじさんのことは内緒にしたほうがいいかなと思って」
武里村「とっさに私をかくまってくれたのか。キミはとても優秀だ」
武里村はほくそ笑む。
武里村「そしてあの横断歩道でキミを助けた私はなんて運が良いのだろうか……こんな巡り合わせがあるなんて……」
ショウタ「あの……カメラのおじさん、これからは倉庫じゃなくてボクの部屋にいてよ!ウチ、お父さんもお母さんも働いてて、姉ちゃんも出かけてることが多いから部屋にはほとんど誰も来ないし!もし誰か来ても、さっきみたいにベッドの下に隠れれば大丈夫だから!」
武里村「いいのかい?ここまで良くしてもらえるなんて、つくづく私は運が良い」
ショウタ「その代わりに……明日から学校について来てくれない?またいじめられるかもしれないから」
武里村「お安いご用だ。キミと私は交換条件を出して助け合う、Win-Winな関係でいよう。それでは、私からも追加で1つ。明日以降もいじめっ子どもを追い払う代わりに、お姉さんの部屋がどこか教えてもらえるかな?」
ショウタ「いいよ!」
<少年とおじさん-完->
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