爆弾魔 VS 盗撮魔②

廊下を全速力で走る武里村ぶりむら。その15mほど後ろを追うシゲミ。


シゲミは左肩にかけたスクールバッグに手を入れ、閃光手榴弾を取り出し、ピンを抜いて武里村の足下へ投げつける。大きな音と光を放って爆破するが、武里村を成仏させるほどのエネルギーはない。手榴弾かC-4を使えば大量のエネルギーを生み出せるが、校舎を大きく破損してしまう。思ったように攻撃できず、やきもきするシゲミ。



シゲミ「学校ごと吹き飛ばしたいけど、損害賠償いくら請求されるんだろう……というか大勢の人を巻き込んじゃうから無理か」



一方で武里村も、シゲミが閃光手榴弾を持ち歩いていることを知り、焦っていた。シゲミが恐竜の幽霊を倒したという話は聞いていたが、完全に信じていなかった武里村。しかしシゲミは武装しており、幽霊である自分を何の躊躇ためらいもなく真っ先に攻撃しようとした。武里村は今はじめてシゲミを脅威として認めた。



武里村「くそったれぇ!ヤツら全員の魂を奪うつもりがとんだ誤算だ!まずこの修羅場を乗り越えねば……!校長まで上り詰めた私に超えられない壁などなどない!」



思案する武里村。シゲミを撮影しようにも走りながらではブレてしまい、魂を奪うことはできない。撮影するために立ち止まればシゲミの攻撃を食らう可能性が高まる。反撃か逃走か。武里村の下した決断は後者だった。


廊下の横の壁をすり抜けた武里村は、2階から中庭に着地する。シゲミも廊下の窓を開け、中庭に飛び降りた。武里村が屋外に出たことは、シゲミにとって大きなチャンス。手榴弾を使っても校舎を破損させるリスクが少ない。シゲミはバッグから手榴弾を取り出し、ピンに右の人差し指をかける。


シゲミから遠ざかるように走り続ける武里村。そこにスーツを着た中年男性十数名が通りかかった。学校の視察に来ていた教育委員会の人々。


教育委員会の集団に武里村は紛れ込んだ。ピンを引き抜く寸前で手を止めるシゲミ。集団に近づき武里村を探すが、姿をくらませていた。



シゲミ「くそ。木を隠すなら森の中、おっさんを隠すならおっさんの中か……」



校舎から中庭に出てきたカズヒロ、サエ、トシキがシゲミに近づく。



カズヒロ「さっきの子は保健室の先生が病院に連れて行くってさ……性欲校長は?」


シゲミ「取り逃した」


トシキ「そんな……じゃあ手分けして探そうよ!」


シゲミ「いや、校長は得たいの知れない力を持ってる……単独行動は危険よ。このまま4人で固まって学校内を巡回しましょう。校長は外に逃げた可能性もあるけど、私たちが行動していれば牽制になって、少なくとも学校の中でうかつなことはできないはず」


サエ「生徒たちが全員帰宅する日暮れまで巡回してれば、とりあえず大丈夫かな?」


トシキ「学校内を歩きながら校長の幽霊が意識を奪う力を持ってることを言いふらそうよ!生徒たちの警戒心を煽るんだ!ボク、言いふらすの得意だし!」


カズヒロ「信じてもらえっか分からないけど、先生たちにも伝えておこうぜー。もし学校が正式に注意喚起してくれれば、生徒たちも本気で警戒するだろうからなー」



−−−−−−−−−−



市目鯖しめさば高校の敷地外に出ても武里村は走り続け、700mほど離れた駅前商店街の建物と建物の隙間に逃げ込んだ。手を膝について前屈みになり、息を整える。



武里村「なんだアイツは……あんな危険人物が市目鯖の生徒にいたのか……それよりり、予定変更だ……市目鯖に潜み続けるのはリスキー。どこか別の場所に潜伏しながら、盗撮を続けよう……」



<爆弾魔 VS 盗撮魔-完->

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