ドラキュラ家庭教師②
PM 4:28
血吸は小声で「失礼しまぁす」と言いながら、恐る恐る扉を開ける。10畳ほどの部屋の至るところにグッバイ・キティのポスターやぬいぐるみ。かわいらしい女の子の部屋といった雰囲気だ。部屋の奥に置かれた学習机の前で椅子にふんぞり返る、金髪ロングヘアのミキホ。高校から帰って来たばかりで、ブレザーを着ている。
血吸「は、初めまして〜!今日から家庭教師を務める、
ミキホ「……座れ」
血吸「……座れっていっても椅子がなくて」
ミキホ「床に座るんだよ。あぐらかくなよ。結婚のあいさつしに来たみてぇにお行儀良く正座しろ」
血吸はミキホの右隣で正座をする。黙ったまま貧乏揺すりをするミキホ。沈黙の時間が数十秒流れた。
血吸「……軽く自己紹介をしようか!私は前に小学校の教師をしていて」
ミキホ「興味ねぇよ」
血吸「そ、そっか。じゃあさっそく授業を始めよう!苦手科目はあるかな?その科目からやろう」
ミキホ「無い」
ミキホは机の横のフックに掛かったスクールバッグに右手を入れると、数枚の紙を取り出し血吸の顔に向かって乱暴に投げつけた。顔に当たって床に散らばった紙を拾い上げる血吸。全て期末試験の答案用紙だった。
血吸「英語II……98点、現代文……99点、数学B……98点、生物……100点!他の教科も全部98点以上!?」
ミキホ「オヤジに見せたら、『これだけ勉強ができるなら大学に行け』って言われるだろうから隠しているが、私は勉強ができないわけじゃない」
血吸「私が見ても同じことを言うよ!大学を目指すべきだ!しかも難関大を!」
ミキホ「私が勉強してるのはヤクザになるためだ。頭を使わなくてもヤクザができる時代なんてとっくの昔に終わってる。組を企業に近い1つの組織として捉え、効率的に運営する。そのための知識や判断力を能動的に学習する訓練を今のうちからしてるだけだ」
血吸「なんか賢いなぁ!そこらの高校生よりよっぽど将来見据えてる!」
ミキホ「仮に進学するにしても、アンタら家庭教師なんて不要なくらい私は勉強ができるんだよ」
血吸「う、う〜む……」
ミキホ「今すぐ帰ってくれればアンタに危害は加えねぇ。他の家庭教師どもはテストの点数を見せたら、おとなしく引き下がってくれたぜ?」
血吸「でも」
ミキホ「オヤジに脅されてんだろ?安心しろ。私から『相性が悪かったから辞めてもらった』って伝えとくからよ。今までの家庭教師もそれでおとがめなく辞められてる」
迷う血吸。ミキホの言うとおり、血吸が大学進学をすすめるのは浜栗組長から脅迫に近い依頼をされているから。しかしそれは数分前までの話。ミキホの成績やヤクザになるための考え方を知り、元教育者として進学してほしいという気持ちが強まっていた。
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