シゲミ&ジン VS 剣崎
現・ポコポコの母の屋敷 庭園
ブラックウォーターガンから放たれる高速の水流をかわし、執事と信者を爆弾で吹き飛ばし続けるシゲミ。致命的なほど深い傷は負っていないが、出血を伴う傷が両手足に十数箇所。今すぐ死に至ることはないものの、戦いが長引き出血量が増えれば立つことすら出来なくなる。そんな自身の状況を把握していたシゲミは、右手に持った手榴弾1つを残し、持参した爆薬類を全て使い切った。
数十回の爆音が響き、庭園内が煙に覆われる。煙は風に流され、芝生の上に倒れる執事300人と首無しの信者1000人を
70m離れた樹上からシゲミの鬼のような火力を目の当たりにし、息を呑むジン。
ジン「シゲミさん一人でほぼ全滅させちゃったよ。俺も少しは貢献できたけど……まだまだだなぁ。さて、残りは1人か」
シゲミと向かい合うように立つ最後の執事、オールバックに銀縁メガネをかけた男・
シゲミ「剣崎さん……悪いけど、アナタも始末する。もうこれ以上、操られないで」
剣崎はブラックウォーターガンを構え引き金を引くが、銃口から水が出ない。銃身に入れてあった水は全て撃ち尽くし空になっていた。武器としての力を失ったブラックウォーターガンを投げ捨てる。
直後、剣崎の顔面に向かって、ジンが樹上から放った水の弾丸が飛来する。剣崎は頭を右に傾け、弾丸を軽々と避けた。
シゲミ「その身のこなしで私の爆弾からも逃げ続けたのね……他の黒スーツより身体能力が格段に上の、特別製ってところかしら」
剣崎は両手をズボンのポケットに入れ、瞬時に取り出す。左右の手にプラスチック製の青いヨーヨーが握られていた。
シゲミ「ここで新しい武器を使われるのはキツい……今の体で対応できるかどうか」
2つのヨーヨーをシゲミに投げつける剣崎。クロスするように飛ぶヨーヨーから、それぞれ4枚の刃が飛び出した。宙を舞う回転カッター。シゲミは後ろに下がり、体に当たるギリギリのところでかわす。空を切ったヨーヨーは剣崎の手の中に戻った。
シゲミ「仕込みヨーヨー……紐を一定の長さまで伸ばすとヨーヨー本体に仕込んだ刃が飛び出し、手元に引き戻すと刃は仕舞われる。そういう仕組みね」
剣崎は前進しつつ左右のヨーヨーをシゲミに向けて何度も投げる。後退しながら避けるシゲミだが、出血により体が思うように動かず、ヨーヨーの刃が左腕と右足をかすめた。
シゲミが剣崎を仕留める手段は、残っている手榴弾1つのみ。一度逃げに徹して剣崎から離れることも考えたが、距離が開くと爆発に巻き込めなくなる可能性が高まる。さらに今のシゲミの出血量では逃げ回るほど体力が奪われ、戦況は一層不利になってしまう。
そんなシゲミの状況を知ってか知らずか、剣崎はシゲミに近づき過ぎない絶妙な距離を保ちながらヨーヨーを投げ、裂傷を与え続ける。シゲミは少しずつ追い込まれていた。
シゲミが劣勢なのは、遠目で見ていたジンにも明らか。援護射撃をするが、剣崎は弾道を全て見切っており、遠距離からでは一発も当たらない。ジンのブラックウォーターガン内の水は残り少なく、ムダ撃ちできない状況。
そんな中でジンが採れる選択肢は、剣崎が反応できない至近距離から撃つことくらい。しかし満身創痍とはいえ、あのシゲミが追い込まれるほどの攻防に近づき、引き金を引く勇気が出せずにいた。
木から地面に降りるジン。いつでも近づくことはできるものの、「シゲミを襲うヨーヨーが自分のほうを向いたら」という考えが、次の行動を
ヨーヨーによる攻撃をかわしながら、シゲミは横目でジンの姿を捉える。その時間は0.5秒にも満たなかったが、致命的な隙を生んだ。ヨーヨーがシゲミの両肩を切り裂く。傷の深さは、噴水のように吹き出る血が物語っていた。
大量に出血したシゲミを見たジンは、無意識に走り出した。勝算は無い。ただ反射的に取った行動だ。
ジンが駆け寄ってくる足音を聞いたシゲミは、最後の手榴弾のピンを抜き、自身と剣崎の間合いの中間あたりにほうり投げた。そして力を振り絞り、爆発に巻き込まれないよう下がるが、足がもつれ芝生の上に倒れる。剣崎もバックステップで大きく後退した。
手榴弾が爆発する。剣崎の手元に引き戻される途中だったヨーヨーは爆発に飲まれ、武器として使えないほど破損した。一方シゲミも最後の武器を使い、体力も限界を迎えた。
シゲミにトドメの一撃を食らわせようと、爆発で生まれた煙の中に飛び込む剣崎。その眉間を水の弾丸が貫いた。
煙が風に吹かれて消失する。倒れるシゲミの前に、片手でブラックウォーターガンを構えるジンが立っていた。
ジン「シゲミさん、
シゲミ「半人前の小心者。でも助かった」
芝生に崩れ落ちる剣崎。眉間に空いた穴から血の代わりに水が流れ出た。
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