母親と親友
現・ポコポコの母の屋敷 書斎
椅子に座るポコポコの母に近寄るキョウカとストロベリー。その後ろ、少し離れた場所から車椅子の
ポコポコの母「あの子、親友を作れるようになってたなんて……ポコポコのこと、詳しく聞かせてもらえませんか?」
キョウカ「彼はとにかく友達を欲しがっていた。そんな中で彼が出会った人間の1人が私」
ポコポコの母「そうでしたか。アナタから見て息子は、どんな子でしたか?」
キョウカ「一言で言うなら、人智を超えた存在」
ポコポコの母「そうでしょう!私がそうなるよう育てたのです!この世の誰にも負けない、まさに『完璧』な我が子!」
キョウカ「誰にも負けない『完璧』な彼が他人に依存しようとしていたのはなぜ?」
ポコポコの母「……私の教育によってあの子は勉強も運動も芸術も、同年代の誰にも負けないナンバーワンになりました。誰もがうらやむ理想通りの子。でもその能力の高さ故か、あの子は孤立しました。友人関係の無さというただ1点において、他の子たちに劣ってしまったのです」
キョウカ「だから殴ってでも友達を作りを強制したの?友達の数で他の子に負けないために?」
ポコポコの母「……知っていましたか。たしかに多少強引な手を使いました。しかし、それも必要な教育だったと思っています。結果、あの子は数え切れないほどの友達に囲まれて育ちました。『欠陥品』どもにあの子の完璧さは到底理解できないというハードルはありましたが、見事に乗り越えたのです!」
キョウカ「そうして生まれたのが彼の友達の輪……ポコポコ教ってわけね。ありがとう。アナタと話してみて確信したことが2つある。1つ、ポコポコくんが友達に固執していた原因はアナタの虐待。もう1つ、アナタは私がこれまでに出会った生物の中でぶっちぎりのバカ」
ポコポコの母「……」
キョウカ「そもそもアナタは自分の息子について何も理解していない。私がポコポコくんといた期間は短かったけど、アナタより彼のことをよく理解してる。彼はマヌケで、不器用で、さみしがり屋で、頭のネジが外れた、アナタの言う『欠陥品』よ」
ポコポコの母「……私をバカと言ったことは100億歩譲って許しましょう。しかし息子を悪く言うことは許しません」
キョウカ「100億歩も譲らなくて結構。私が
ポコポコの母「はぁ?」
キョウカ「ポコポコくんは友人関係の無さという点で他の子に劣っていたと言ったわよね?じゃあ聞くけど、友達が多ければ、何がどれくらい優れていることになるの?何人友達がいれば、誰に勝ったことになるの?」
ポコポコの母「……」
キョウカ「アナタが言ってること、全く論理的じゃないし破綻してるの。自分の思い込みや先入観を一般論のように語り、子どもに押しつけただけ。そんなことも理解できないアナタは超ド級のバカ」
ポコポコの母「………」
キョウカ「言っとくけど、友達の多寡で人としての優劣は決まらない。友達の数は人の価値を測る指標じゃないの。多くても少なくても、仮にゼロでも、生きていければそれでいい」
ポコポコの母「……………」
キョウカ「それと、ポコポコくんの友達の作り方、知ってる?金や暴力を見せつけて屈服させるだけよ。そうやって集めた人間を彼は友達と呼んでいた。力で押さえつけられ、思考停止で彼を神と崇める人間たちを。それが、アナタが彼に教えた友達の姿?」
ポコポコの母「…………………」
キョウカ「バカなアナタには分からないだろうけど、教えてあげる。私たちは『欠陥品』だから、必要に応じて足りない部品を補うように友達になるの。それは生きていくためであり、自分の価値や能力を誇示するためではない」
ポコポコの母「………………………」
キョウカ「アナタが『完璧』に育てたつもりのポコポコくんも、私たちと何ら変わらない、生きていくために友達が必要な『欠陥品』だった。でも彼は、欠けてはならない頭のネジが外れていて、友達をまるでブランド品感覚で集めていた。そしてそのネジは自然に外れたんじゃない」
ポコポコの母「……………………………」
キョウカ「子どものことを理解せず、
ポコポコの母「…………………………………殺す」
ポコポコの母は左腕を振り上げる。肘から先が液状化し、巨大な斧に変わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます