囮と侵入

PM 3:14

現・ポコポコの母の屋敷 庭園

徘徊する黒スーツの執事たち200人。そのうちの1人の足下に手榴弾が転がり、執事数名を巻き込んで爆発する。この爆発を皮切りに、次々と手榴弾が降り注いだ。庭園の東側に侵入したシゲミが方々へ、左肩にかけたスクールバッグの中の手榴弾を投げつける。



シゲミ「多対一たたいいちは私の縄張り。全員かかって来い」



爆発に巻き込まれなかった執事たちが、ブラックウォーターガンをシゲミに向かって放つ。幾多の水の弾丸をかわしながら手榴弾を投げるシゲミ。執事たちの体が爆風で舞い上がる。宙を舞い、芝生に倒れ込んだ執事は電源が切れたロボットのように動かなくなった。


祈りを捧げていた首の無い信者たちも立ち上がり、シゲミを追いかけ始める。しかし信者たちの足下が大爆破。次々に空中へ吹き飛ばされる。シゲミは逃げ回りつつ芝生の上にセットしたC-4プラスチック爆弾を起爆していた。自我を失った操り人形同然の執事と信者たちは、C-4の上に足が乗ってもおかまいなしでシゲミに向かって突き進む。



シゲミ「手榴弾の雨とC-4の地雷でできる限り数を減らす」



走って逃げるシゲミの左後ろから高速で忍び寄り、ブラックウォーターガンを構える1人の執事。引き金を引く寸前、執事の眉間を水流が撃ち抜く。敷地を囲むように生えている木の上に隠れたジンが、ブラックウォーターガンで狙撃した。約70m離れた場所から、シゲミが仕留め切れなかった執事と信者を狙撃し無力化していく。



ジン「背中は俺に任せて思い切り暴れてよ、シゲミさん。本気の戦いを見せてくれ」



シゲミの手榴弾とC-4、ジンの狙撃により、庭園でポコポコの母に操られていた人間たちはどんどん倒れていく。



シゲミ「アナタたちがポコポコの母に従う必要は無い。荒々しくて申し訳ないけど、って」



−−−−−−−−−−



屋敷内 書斎

外から爆音が聞こえ、異変に気付くポコポコの母



ポコポコの母「侵入者ですか。全力で排除しなさい」



ポコポコの母の一言で、屋敷の中を徘徊していた執事たち100人が一斉に正面玄関に集まり、扉を開けて庭園へと飛び出す。その様子は、女王を守ろうとするスズメバチそのもの。


執事たちは爆煙を上げるシゲミのほうへ一直線に向かう。



ジン「第2陣か……」


シゲミ「今がチャンスよ、撃山うちやまさん」



庭園の東側で暴れるシゲミとジンに、屋敷内にいる全ての執事たちが引きつけられていた。警戒が薄くなった西側の生け垣を、外からナガンが妖刀・乳房ちちふさで切り裂き、侵入用の穴を開ける。その穴を通って車椅子の撃山がキョウイチに押されながら入る。続いてストロベリーを連れたキョウカ、スマートフォンを片手に撮影するモモ、最後にナガンが忍び込んだ。



撃山「シゲミ嬢ちゃんたちが囮になっている隙に屋敷へ入るぞ。ポコポコの母を探し出す」



庭園内を走る6人。モモは走りながらスマートフォンのカメラに自分の顔を映す。



モモ「視聴者のみなさ〜ん!ここからはノーカットでお送りますよ〜!」



−−−−−−−−−−



屋敷地下 執事用大浴場

水を張った巨大な浴槽の前に立つポコポコの母。両手を浴槽に向かってかざす。



ポコポコの母「奴隷たちだけでは侵入者を狩れるか不安です。半ば道楽ですが、私が過去戦った怪異の中で苦戦させられた者を水で再現して、戦わせてみましょう」



浴槽の水面からブクブクと水の柱が2本立ち上る。柱は2体の怪異を形成した。1つは両手が鋭い鎌になったイタチ、「鎌鼬かまいたち」。もう1つは体長3mはあろう直立した狼、「人狼じんろう」。



ポコポコの母「さぁ、お前たちも侵入者の排除にかかるのです」

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