VS ポコポコの母(全8話)

選別と作戦

AM 11:44

胃倉区軍艦町いくらくぐんかんちょう

現・ポコポコの母の屋敷内 書斎

革張りのふかふか椅子に腰掛けるポコポコの母。その両隣に黒いスーツを着た男性執事が2人ずつ立っている。執事たちは腹部に大きな風穴が空き、顔面蒼白。白目をむき、鼻や耳、口から水がだらだらと流れている。その手にはブラックウォーターガン。


ポコポコの母は、机を挟んで向こう側に立つ小太りの男を見つめた。



ポコポコの母「アナタが我が息子、ポコポコをあがめる理由は何ですか?」


小太り男「偶然だと思いますが、ポコポコ様は、酒を飲んで夜道を歩いていた上司を殺してくれました……毎日私を『無能』と罵り、怒鳴り、タバコの火を押しつけてくる……そんな害虫を殺してくださった!だからとても感謝しているのです!」


ポコポコの母「ポコポコにどのくらい尽くせますか?」


小太り男「何でもやります!現に私はポコポコ様アクリルスタンドを自費で制作し、ポコポコ様が消滅した後も信者の勧誘を続けてきました!それくらい本気で慕っているのです!」


ポコポコの母「合格」



ポコポコの母は左手で指を鳴らす。左隣に立っていた執事の1人が小太り男に向かってブラックウォーターガンを放ち、水流で首を切断した。



ポコポコの母「アナタの気持ちと魂はポコポコの復活に役立つでしょう。これからは我が庭園で他の信者どもと共にただ祈り続けなさい」



ポコポコの母が人差し指で書斎の入口を指す。首が落ちた小太り男の体だけが回れ右をし、歩いて書斎から出て行った。



ポコポコの母「これで1000人目。生配信で住所を言ったことで信者を集めやすくなりましたが、冷やかしで来るバカも多い。こうして面接をしないと純度100%の祈りを捧げる信者を選別できないなんて、やや想定外でした。いつの時代にもノータリンは一定数いるものですね」



書斎にインターホンの音が響く。ポコポコの母は机の上にある小さなモニターの電源を入れた。屋敷の外、広大な庭園の正門上部に設置したカメラの映像が表示される。門の前に警察官が2人立っていた。



ポコポコの母「警察は、冷やかしのバカ以上にお呼びではありません。殺してきなさい」



執事たちは獲物を見つけたチーターのように素早く動き、書斎を出て正門前へと向かった。



ポコポコの母「信者の選別に時間がかかって殺し屋どもの始末が進まない……沸騰しそうなくらい腹が立ちますね」



−−−−−−−−−−



PM 1:17

シゲミ一家邸宅内 客室

低いテーブルの一辺に沿って並び、畳の上に座るブレザー姿のシゲミ、ジン。ジンの隣に空手道着のキョウイチ。


お誕生日席の位置に車椅子のスキンヘッドタンクトップ・撃山 九連うちやま くれん


シゲミたちの向かい側に黒いワンピースを着たアイドル・広背ひろせ モモ、袴姿で日本刀を携えた中学生探偵・荒川あらかわ ナガン、薄い黄色のTシャツとデニムを着た元殺し屋キャバ嬢・キョウカ、キョウカの愛犬・ストロベリーが座る。



撃山「これが『ポコポコの母ちゃんぶっ殺そう作戦』のメンバーだ。初めましての人は、屋敷への道中で自己紹介をやっといてくれ」


キョウカ「戦う場所とか、相手の数とかを知りたい」


ジン「午前中に俺と撃山さんとで偵察に行ってきました。周囲を木々に囲まれためちゃくちゃ広い庭の奥にある屋敷、その中にポコポコの母がいると思われます。庭の中央あたりには、芝生に両膝をついて、胸の前で手を組んで祈ってるような信者がざっと1000人。全員首を切り落とされていました」


キョウイチ「マジか」


ナガン「ちょいグロ」


ジン「その信者たちを守るように黒いスーツを着た男たちが徘徊。数は200人。全員、俺も使ってるブラックウォーターガンを所持していて、明らかに生きていられないほどの傷を負っていました」


撃山「スーツの連中は統制の取れた動きをしてやがった。一人ひとりが戦闘のプロと考えたほうがいい。屋敷の中を見張ってるヤツもいるはずだ。敵の実数は俺たちが見た数よりもっと多いだろうな」


モモ「その人たち、首を切られたり死んじゃうような傷を負ってたりするのになんで動けてるんですかね〜?」


撃山「憶測だが、ポコポコの母ちゃんには死者を操る力があるんだろうな。殺した人間を、自我を持たない駒として使ってる」


モモ「ひいい〜!そんな相手と戦うなんて、私またヤバいことに首突っ込んじゃってるかも〜……」


シゲミ「まず庭の黒スーツたちをどうにかしないと、ポコポコの母にはたどり着けなさそうね」


撃山「ああ。見張りを引きつける囮役が必要だ。その隙に残りのメンバーで屋敷に侵入する」


シゲミ「ポコポコの母にダメージを与えられるモモさんは囮にできない」


モモ「あと〜私の超音波、30秒くらいしか出し続けられなくてぇ〜!しかも1回出したら2〜3時間休憩しないと同じ音域にならないんですぅ〜!」


キョウイチ「モモさんをポコポコの母の近くまで護衛し、一発必中の状況を作らないといけないわけか。護衛なら俺、得意です」


ナガン「私も護衛に志願します!というか、自分から人間を斬るのはあまりやりたくなくて……」


撃山「OK、じゃあ各自の役割を伝える」



撃山が作戦の詳細を言いかけたとき、客室の襖が開いた。シゲミの母・トモミが立っている。その足下には襖越しに聞き耳を立てていたキリミとサシミ。盗み聞きしていたことがバレたと思い、2人は慌てた表情を浮かべる。



トモミ「横やりを入れるようですみません。ポコポコの母のことはシゲミに聞きました。彼女と戦うにあたって私から助言したいことがあります」

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