ポコポコの記憶(全1話)
ポコポコの記憶
シゲミたちが
PM 1:42
東京拘置所 面会室
車椅子に座るタンクトップスキンヘッド・
服来「撃山さぁん、まだ見つからないんですかぁ?怪異事件に強い弁護士ぃ〜!」
撃山「鋭意捜索中だ。今日は別件でな。こちらの嬢ちゃん、キョウカって名前なんだが、お前に頼みごとがあって来たんだ。俺からもぜひお願いしたい」
服来「頼みごと?何ですか?」
キョウカ「アナタの体にもう一度ポコポコくんを憑依させれらないかと思って。彼と話がしたいの」
服来「はぁ!?ダメに決まってるでしょ!アイツのせいでボク左腕を失って、拘置所暮らしなんですよ!しかもまたポコポコを呼び出したらえらい騒ぎになる!」
撃山「リスクは承知の上だ!5分だけでいい!いや10分!」
服来「こういうとき普通減らすでしょ!第一、ポコポコはボクが呼び出したわけじゃなくて、取り憑かせられたんです!ボクの意思でどうにかできることじゃありませんよ!」
撃山「それもそうか……お前は知らないかもしれないが、今シャバでポコポコの母と名乗る女が暴れ回ってる。もしソイツが本当にポコポコの母ちゃんなら、息子のポコポコが一番よく知っているはず。だからどんなヤツか聞ければと思ったんだが……」
服来「ポコポコの母?」
キョウカ「私が撃山に連絡したのもポコポコくんの母親の件。一応私、ポコポコくんの友達だったから、彼女の存在を無視するわけにもいかなくて。でも分からないことだらけだから、何か1つでも手がかりが欲しいの」
服来「そうですか……うーん……そういえば」
撃山「なんだ?思い当たることがあるのか?言え!今すぐ!」
服来「ボク、ポコポコに取り憑かれている間、同じ夢を繰り返し見てました。その夢の内容がポコポコの母に関係があるかも……?」
撃山「どんな夢だ?」
服来「夢の中のボクは小学生くらいの子どもで。でも自分じゃないんです。着てる服は布を体に巻きつけただけの、紀元前の人が着てるようなものだし、竪穴住居みたいな建物の中にいるしで、ボクが子どもの頃の記憶とまるで違う。で、目の前に見知らぬ大人の女性が立ってて、ボクのことを『ポコポコ』って呼びながら怒鳴ってくるんです」
キョウカ「なんて?」
服来「『なんで友達を作らないんだ。友達がいないなんて異常だ。お前は全てにおいて完璧でなければならない』って」
キョウカ「友達……ポコポコくんは執拗に友達を作りたがっていた……その少年は服来さんではなくポコポコくん?」
服来「そうやって追い詰められているうちに、涙が止まらなくなって。泣くと女性は顔を殴ってくるんです。『泣いてどうにかなることではない。今すぐ友達を作りに行け』って言いながら、何度も何度も」
撃山「その夢に現れる女……ポコポコの母ちゃんか?」
服来「夢の中のボクと同じ、布を巻いたような服を着た、長い黒髪の痩せ細った女性でした」
キョウカ「出回っているポコポコくんの母親の特徴に近いわね」
服来「ボク自身が怒鳴られてるわけではないと、頭では分かっているんです。だから映画を見てるみたいに冷静なんですよね。でも絶望感というか、『自分みたいな怪物が友達を作るのなんて無理だ』って、どこか主観的にもなっていて……そんな夢を見ていました」
撃山「そうか」
キョウカ「ありがとう。重要なヒントだわ」
撃山「もう良いのか?」
キョウカ「多分だけど、服来さんが見ていたのはポコポコくんの幼少期の記憶。潜在意識に最も深く刻まれた記憶を追体験していたんだと思う。メカニズムは分からないけれど、ポコポコくんが憑依したときに彼の意識と服来さんの意識がリンクしてしまった」
椅子から立ち上がるキョウカ。
キョウカ「撃山、ポコポコくんの母親を殺す作戦に私も加えてほしい。アナタたちが仕留めちゃう前に彼女から聞きたいことと、彼女に伝えたいことがあるの」
撃山「……いいだろう。ということだ服来、時間を取らせてすまなかったな。また来るぜ」
服来「……えっ、これで面会終わりですか?撃山さん頼みますよ!ポコポコの母を始末したらボクの弁護士を」
撃山「わーかってるよ!順番に進めていくからおとなしくブタ箱に入ってろこのソーセージ野郎!」
服来「あーっ!ボクのことソーセージ野郎って言った!ひどい!看守さーん!このハゲ、拳銃持ち歩いてますよー!」
撃山「くそっ!キョウカ嬢ちゃん、さっさと帰るぞ!」
<ポコポコの記憶-完->
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