復讐したい③

ポコポコの母「生配信ですか。ええ、構いませんよ」


モモ「ありがとうございま〜す!いま企画で、心霊現象に悩む方を探しているんです〜!何かお悩みないですか〜?幽霊の悩み〜」


ポコポコの母「幽霊の悩みですか……ありますよ」


モモ「え〜本当ですか〜!?まさかの1人目でいきなり!どんなお悩みですか〜?」


ポコポコの母「私の大切な息子、ポコポコをよみがえらせたいのですが、人が足りないんです」


モモ「えっ……ポコポコって、あのポコポコですか〜?ニュースになってた」


ポコポコの母「ご存知ですか?あの子を復活させるには、大勢の人の祈りと魂を捧げなければなりません。だから人を集めています。これ、ビラです」



ポコポコの母は左手でモモにビラを1枚渡す。



ポコポコの母「右手を怪我しているので、片手ですみません」


モモ「い、いえお気遣いなく〜……息子と言ってましたけど、もしかしてポコポコのお母さん?」


ポコポコの母「はい。ポコポコの母でございます」


モモ「……ちょっとすみませ〜ん。う、裏皮うらかわさ〜ん……どうします〜?」



モモはスマートフォンを持つ裏皮に困惑した表情を向ける。



裏皮「どうするって、インタビューするんだ!もし本当ならこの生配信も絶対にバズるぞ!」


モモ「ただのヤバい人かも……」


裏皮「それでもいいんだよ!生配信はこういうハプニングが起きてナンボだ!視聴者もそれを楽しみにしてる!」


モモ「わ、わかりました〜」



モモは再びポコポコの母のほうへ体を向ける。



モモ「失礼しました〜!ポコポコのお母さんは今、勧誘活動中ということでしょうか〜?」


ポコポコの母「そんなところですね。でもビラ配りだけでは効率が悪いので、この生配信で呼びかけさせてもらっても良いですか?」



モモは再び裏皮へ顔を向ける。裏皮は右手でOKサインを出した。



モモ「はい、どうぞ〜」


ポコポコの母「ありがとうございます。この配信をご覧の皆さん、どうかお願いです。私の可愛い息子をこの世に蘇らせる手助けをしてください。そしてあの子が伸び伸びと暮らせる世界を創りましょう。協力してくださる方は、東京都胃倉区軍艦町いくらくぐんかんちょう3丁目にある屋敷へお越しください。とても大きな屋敷なので、すぐに見つかると思います」



眉間にシワを寄せるモモ。裏皮は手を左右に振りながら「もっと話を聞き出せ」と合図を送る。うんざりした表情を浮かべ、モモはポコポコの母に向かって口を開く。



モモ「……これは私の意見ですが、ポコポコは凶悪犯です〜。アナタの発言はポコポコを賞賛し、人々に犯罪を促しているように思います〜」


ポコポコの母「……はぁ?」



裏皮は口元で右手を開いたり閉じたりする。モモに「もっと話を聞き出せ!せめてキャラがブレないよう注意して話せ」と合図を送っているのだ。しかしモモは合図を無視し、ポコポコの母に詰問する。



モモ「共犯者を募っているんですか〜?だとしたら警察を呼びますよ〜?ポコポコなんて危険人物の名前を使うのも、冗談でもやってはいけないことだと思います〜。ポコポコによって多くの人の命が奪われてるんですよ〜?分かってるんですか〜?」


ポコポコの母「……私に対する非難は甘んじて受け入れましょう。しかし息子のことを悪く言うのはやめていただきたい」


モモ「私が言っているのは全て事実ですから、訂正するつもりはありませ〜ん」


ポコポコの母「そうですか。では生配信中に死ねこの『欠陥品』が!」



ポコポコの母は左腕をまっすぐ上に伸ばす。腕は巨大な水の斧へと変形した。



モモ「キィィィィィヤァァァァァァァイィィィィィキィィィィィィィィィィ」



モモは絶叫。その声は超音波となって渋谷駅前に広がった。超音波がポコポコの母の体に伝わり、形を保てなくなる。全身が破裂し、水飛沫と化した。


超音波を聞いた渋谷駅前の人々が次から次へと倒れる。裏皮は両耳を手で塞いだまま絶叫するモモへと近づき、頭突きを見舞った。頭に衝撃が走り、モモは絶叫を止める。



裏皮「逃げるぞぉ!」



裏皮は配信を切り、モモを羽交締めしながら近くに停めておいたワンボックスカーに乗り込んだ。



−−−−−−−−−−



シゲミの部屋

カズヒロがパソコン画面の共有を停止した。心霊同好会メンバーそれぞれの顔が映る4分割の画面に切り替わる。



サエ「終わっちゃった……」


カズヒロ「モモの生除霊が見れた……じゃなくて!さっきのおばちゃん、ポコポコの母って言ってたよなー?」


トシキ「体も水みだったし、人間じゃないよ……まさか」


シゲミ「まずい事態だね」


カズヒロ「どうするよシゲミー?」


シゲミ「……カズヒロくん、ダメ元で広背ひろせモモに連絡してみてくれない?できれば彼女と話がしたい」



−−−−−−−−−−



モモと裏皮が立ち去った後の渋谷駅前。

多くの救急隊員が出動し、モモの絶叫を聞いて倒れた人々を看病している。


その傍ら、道路の側溝から水がボコボコと噴き出す。水は次第にポコポコの母の体を形成した。車にひかれないよう、歩道に移動するポコポコの母。



ポコポコの母「……あの超音波女、厄介ですね。ターゲット変更。次はあの女を始末しましょう。それにしても騒音で攻撃されるわ、人も集まらないわで、ムカっ腹のコキっ腹が立ちます」



2人の若い男女が横に並んで歩き、ポコポコの母に近づく。



男「邪魔だババア」


女「マジ早くどきなぁ、オバさん。ウチのカレシ超ケンカつよ」



ポコポコの母は左の人差し指の先から細長い水をウォーターカッターのように放出し、指を右から左へ動かす。水流が男女の首を切断した。



ポコポコの母「横に広がって歩くほうが邪魔だ!交尾しか頭にない性欲魔獣どもが!」



苛立つポコポコの母の背後から、電動キックボードに乗った中年男が急接近する。



男「うわぁぁどいてどいてどいてぇ!」



ポコポコの母は全身を大きな水の球に変化させ、キックボードごと男を包み込んだ。男は溺死。ポコポコの母は水の球から男とキックボードを吐き出し、元の体に戻る。



ポコポコの母「そんな物で歩道を走るな!あの世でママチャリにでも乗ってろこの迷惑ミーハーオヤジが!」



<復讐したい-完->

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