ブラックウォーターガン②

末鬼玩具まつきがんぐの自社ビル内3階にある製品企画開発室。

部屋の中心に置かれた縦長の机に向かう12名の男女。


開発室の扉が開き、液野えきの上蒸かみじょうが社長室から戻って来た。



液野「末鬼まつきは死んだ。私たちの静かな戦いは勝利で終わったのだ!」



開発室が歓喜の声に包まれる。液野は持っていた水鉄砲を机の上に置いた。



男性社員「さすが液野部長!絶対にぶっ殺してくれると思ってました!」


女性社員「製品開発のふりをして、社長を殺すための武器を作る!そんな作戦を思い付いた上蒸さんもすごいですよね!」


上蒸「キミたちが寝ずに開発した、この水鉄砲があったからこそ成功したんだよ。次の社長にはCOOの山本さんが就任するだろう。社員想いで、末鬼と対立していた山本さんなら、業績こそ分からないが労働環境は大幅に改善してくれるはずだ」



開発室メンバーたちは「YEEEEAH!!」と大声を上げる。指笛を鳴らす者もいた。



液野「全員、明日は有給を取れ!これから祝勝会だ!昼まで飲むぞ!しかも私の奢りだ!狂喜乱舞しろぉ!」



再び開発室は大盛り上がり。ボクサーパンツ一丁になって机に乗り、踊り出す男性社員もいた。その社員があることに気付く。



ボクサーパンツの社員「あれ?液野部長、水鉄砲どこにやりました?」


液野「どこにって、そこに置いたが……」



先ほどまで机の上にあった水鉄砲が無くなっていた。直後、ボクサーパンツの社員の胸と背中から血が吹き出す。周りの社員たちに血が雨のように降り注ぎ、ボクサーパンツの社員は力無く床へと崩れ落ちた。


女性社員の悲鳴が響く。



???「全員動くんじゃねぇ!!」



男の怒号が悲鳴を遮った。全員が声のしたほうへ向く。上裸で目を血走らせた末鬼が部屋の隅に立っていた。全身はやや透き通っており、手には水鉄砲が握られている。



液野「末鬼……社長、なぜ……?」


末鬼「お前らを殺すために地獄から舞い戻ったのだ。この体のおかげで、壁を通り抜けて誰にも気付かれることなく開発室に侵入できたぞ。それにしても、開発部が主導して俺の暗殺計画を立ててやがったとはなぁ」


液野「暗殺計画なんて、そんな物騒な。社長、あれはアクシデントですよ。急いで作った試作品だったので、威力を誤ってしまったのです。すぐに作り直しますから」


末鬼「……なんだぁ、そうだったのかぁ。てっきり、俺に不満があって殺そうとしてたのかと思ったよぉ〜……なんて言うと思ったかぁ!全部聞いてたわテメェらの話!」


液野「……落ち着いてください社長。このままでは大問題になりますよ。現に社員が1人死んでいる。アナタは殺人の罪に問われるでしょう」


末鬼「なんで俺の死をカウントしてねぇんだよぉ!……まぁいい。幽霊になった俺には法律なんて適用されん!そしてこの『出力高すぎ水鉄砲』も俺の手の中!まさに俺は無敵の人だ!」


液野「……とにかく、アナタは冷静な判断ができなくなっている。一度、深呼吸をして、冷静に話をしましょう」


末鬼「……そうだな。口から大きく息を吐いて、鼻からスーッ……ってやるわけねぇだろ大ボケェ!今の俺は超クールだ!とっっっっても冷静にテメェら全員殺すことだけを考えてるんだよぉ!」

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