無限タクシー②
運転手「……その拳銃、さっきの家族を殺したものですね?その拳銃で私の頭もぶち抜くのですか?」
運転手「違いますよ。私は探していたのです、アナタのような人間を。さっき路上で殺人を犯す姿を見て確信しました。アナタは私が探していたオガクズ野郎だと」
麹町「何をわけの分からないこと言ってやがる!早く車を止めろこのあんぽんたん!」
運転手は麹町の脅しを無視し、アクセルを力一杯踏んでタクシーを加速させる。
運転手「いいえ止めませんよぉ!正しく言えば止められないのです!もし止めたければその銃で私を撃ち殺すことですねぇ!アナタにできるのならですがぁっはっはっはぁ!」
麹町「脅しだと思ってるようだな?よく聞け、俺は
運転手「鮮魚ぉ?汚れ仕事ぉ?ああ、スーパーの鮮魚コーナーを掃除する仕事をされてるんですかぁ!大変なお仕事ですよねぇ!?」
麹町「ちげぇよ薄らボケ!マジモンの
麹町は引き金に指をかける。運転手はブレーキをかけない。
麹町「さっき殺したヤツも同じ構成員だったが、何の未練もない!一緒にいた女とガキは無関係だったが、殺した罪悪感は微塵もない!分かるか?テメェも同じだ!殺したところで俺は何も感じることなく今夜もスヤスヤ眠るだろうよ!」
運転手「そうそうそうそう!アナタみたいな頭のネジが外れた、何でも暴力で解決しようとするマヌケを待ってたんだ!50年も!ずっと!」
麹町「はっ!自殺志願者か?ご苦労なこったな!引退生活はあの世で送れこのスカタン!」
麹町は引き金を思い切り引いた。弾丸が運転手のこめかみをえぐる。車内に血が飛び散った。
麹町が瞬きをすると、運転席に座っていた。後部座席にいたはずなのに、運転席で、タクシー運転手の制服を着て、ハンドルを握っている。ラジオからは相変わらず『Don't stop me now』が流れたまま。さっきまで運転していた男性はいない。死体もない。弾丸によって飛び散った血も消えている。
麹町「なんだ……?どうなって……?」
タクシーはアクセルを踏んでいないのに時速50キロで走り続けている。ハンドルも道に合わせてひとりでに回転している。
麹町は気付く。両手がハンドルと、背中と尻が座席と一体化していることに。手を離そうとしても、皮膚が指の先まで完全にハンドルに張り付いていて動かない。体を動かそうとしても、頭蓋骨と背骨が座席のほうに引っ張られる。
麹町「ふざけんな!おい出せぇ!出せぇぇぇ!!」
無限タクシー。誰かに殺されるまで運転し続けなければならないタクシー。前の運転手を殺した者は、次の運転手に選ばれる。
<無限タクシー-完->
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