無限タクシー(全2話)
無限タクシー①
PM 8:35
上下グレーのスーツに黒いワイシャツ、ノーネクタイの男・
麹町は家族と一緒に歩く男を発見。殺そうにも家族に見られてしまうため実行するか迷ったが、場所は人通りのない住宅街で、始末するなら絶好のチャンス。そこで家族もとろも男を撃ち殺した。
殺害現場から少し歩いた、
運転手「どちらまで?」
麹町「
扉が閉まり、発車する。数分の沈黙の後、70歳近いであろう男性運転手が口を開いた。
運転手「お仕事帰りですか?」
麹町は鬱陶しそうな表情を浮かべながら窓の外を眺め、運転手の質問を無視する。
運転手「すみませんね。今日初めてのお客さんなもので、ついお喋りしたくなってしまいました。朝からずっと走り回っているのですが、この時間まで全くお客さんを拾えず」
麹町「だったら1人で喋ってろ。なんでテメェの退屈しのぎに付き合わないといけねぇんだよ、めんどくせぇ」
運転手「そうですか。では続けさせてもらいますね。お客さん、人を殺しましたよね?」
麹町は窓の外に向けていた視線を運転手のほうに切り替える。
麹町「はぁ?何言ってんだよ?」
運転手「あっ、反応してくれた。これ、無視するお客さんでも必ず反応してくれる魔法の言葉なんですよ」
麹町「急に殺人者扱いされたら反応するに決まってんだろ!次やったらマジでぶっ殺すぞ!」
運転手「さっき殺した人たちのようにですか?」
麹町「ああ?いい加減にしろよこのすっとこどっこい!」
運転手「おっと、手厳しいお言葉だ」
麹町「なんでテメェが被害者ヅラしてんだよ!突っかかって来たのはそっちだろうが!」
ラジオの『Don't stop me now』が突然止まり、若い男性の声が流れる。
男性アナウンサー「番組の途中ですが、臨時ニュースです。本日午後8時30分ごろ、東京都内にて男性1名、女性1名、男児1名の計3名が路上で死亡しているのが発見されました。3名は家族と見られ、警察の調べでは拳銃で射殺されているとのこと。詳細な場所の情報も入ってきております。場所は小肌区浜知町2丁目付近で、近隣住民は銃声のような音が聞こえたと……」
運転手「射殺事件ですか。日本も物騒になりましたね……小肌区浜知町2丁目?お客さんを乗せた場所じゃないですか。時間も近い」
麹町「だから何だよ」
運転手「何か聞きませんでしたか?その……銃声とか悲鳴とか」
麹町「……何も聞いてねぇな」
運転手「そうですか。そういえばお客さん、大変失礼ですがその……匂いがするんです。アナタから
麹町「そういう香水をつけてるんだよ!硝煙っぽい匂いの香水を!くせぇとか言うなよ?スメハラになるぞ」
運転手「スメハラ……アニメキャラクターの名前ですか?」
麹町「つーか、テメェよぉ!そうやっていちいち客のこと詮索してんのか?黙って運転しろこのおたんこなす!」
運転手「分かりました。では黙ります。オナラはしても構いませんか?」
麹町「屁もこくな。ゲップもするな。腹の虫も鳴かせるな」
運転手が会話を止めてから30分が経過した。目的地の鯖氷駅にはとっくに到着している時間だ。しかし、一向に駅に到着する気配がない。
麹町「おいまだか?テメェ、わざと遠回りしてるんじゃねぇだろうな?客が少ないからって俺からふんだくってやろうと」
運転手「そうですね、だいぶ遠回りしておりますよ」
麹町「おいメーター!1万2000円って何だよこの金額!」
運転手「すみません、もっと上げたほうがよろしいでしょうか?」
麹町「そうじゃねぇ!高すぎるって言ってんだよ!さっきからおちょくりやがって!俺を怒らせてぇのか!?」
運転手「はい、そうです」
麹町「おとぼけジジイが……タクシーを止めろ。今すぐ止めろ!」
麹町はジャケットの内ポケットから回転式拳銃を取り出し、後部座席から手を伸ばして運転手の頭に銃口を突きつけた。
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