元特殊部隊員ダニエラ VS 殺し屋小学生姉妹②

ダニエラ「ふふ……2対1で、両腕が使えないなんて、圧倒的に不利ね……ふふふ……でもSEALsシールズにいたころ、もっと不利な状況をいくつも乗り越えてきた……なんてことはない……ポコポコ様のためなら私が代わりにいくらでも……」


キリミ「死ぬ前の、神への祈りは終わったか?」



キリミがナイフの刃を舌で舐める。



ダニエラ「ふふふ……神に祈るのは、死ぬためではなく生き残るためよ。命の危機を乗り越える方法を授けてくださいと祈るの。私の神・ポコポコ様はきちんと授けてくださっていた……両腕が使えなくても逆転できる方法を!」



ダニエラは上半身を前に倒して腰を90度に曲げると、アゴの関節が外れるほど大きく口を開けた。口の中から、太い砲身が現れる。



キリミ「おいまさか!」


サシミ「お姉ちゃん!」



ダニエラの口から放たれた砲弾が地面に当たり爆発。大爆炎がキリミとサシミを覆う。


炎は数十秒で消え煙幕となった。ダニエラは口から唾液と共にバズーカ砲を吐き出すと、息を切らしながら煙の向こう側で横たわっているであろう姉妹を睨みつける。



ダニエラ「はぁっ……はっはっはっはぁぁぁぁ……りましたぁ……危険因子を2匹ぃ、葬ってみせましたぁっはっはっ……」



煙が風に吹かれ消失する。ダニエラの視界に飛び込んできたのは、少女たちの亡骸なきがらではなく、黒い日傘を指し、マントをつけたタキシード姿の男だった。


男の背後で、飛び交う大量のコウモリに囲まれた姉妹が地面に座り込んでいる。2人とも多少火傷を負っているが、致命傷ではない。男とコウモリの群れが身を挺して爆炎から姉妹を守ったのだ。



血吸ちすい「私の教え子に何をする。あっ、元教え子か」


ダニエラ「誰だこの変態紳士は……」


サシミ「血吸先生!」


血吸「間一髪でしたね」



キリミとサシミを囲んでいたコウモリたちは「姉妹を爆炎から守る」という役目を果たして力尽き、一匹また一匹と地面に落ちる。



キリミ「なんでお前がここに?」


血吸「……『シゲミ』とは、キミたちのお姉さんの名前ですよね?」


サシミ「そうだけど、どうして知ってるの?」


血吸「葱吐露小ねぎとろしょうで戦ったとき、サシミさんが『シゲミねぇに小言を言われる』と言っていたので」


サシミ「そうだったかも」


血吸「私は先日ポコポコ先生の……いや、ポコポコの一味と会いました。そのときにヤツらはシゲミさんの命を狙っていると口にしたのです。もしやと思い警告に来たら、案の定でした」


キリミ「で、うちの住所はどうやって調べた?」


血吸「サシミさんのクラスは私が受け持ってましたので、以前から住所は知っていました。当時の教え子の名前、住所、自宅の電話番号、家族構成、今でも全て記憶しています」


キリミ「マジかよ……」


血吸「こう見えて私は一流大学卒のエリートですから」


サシミ「す、すごい……」


血吸「8浪しましたが」


サシミ「やっぱりすごくないかも」


ダニエラ「血吸……たしかポコポコ様と友達にならなかった吸血鬼の末裔まつえい……バズーカ砲が効かないのか……?」


血吸「私を殺したければ、砲弾にニンニクエキスを塗ることですね」



ダニエラは地面に両膝を付き、涙を流し始める。



ダニエラ「ここまでか……も、申し訳ございませんポコポコ様……私は最後まで……アナタのお側にいたかった……」


キリミ「……なんかさぁ、アイツ、自爆しそうじゃね?」


ダニエラ「当たりだぁ!これが正真正銘最後の手段!全身に仕込んだTNT火薬でテメーら全員ご近所さんごとまとめて吹き飛ばぁす!」



ダニエラが声を上げた直後、血吸は背中のマントをなびかせ、低空飛行でダニエラに急接近。両足で正面に着地すると、左の首筋に噛み付いた。



ダニエラ「なんだこの変態し……あ、あ、ああああああああぁぁぁきぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



ダニエラの体がみるみる血吸の口の中に吸い込まれ、消滅した。ふぅっと息を吐き、キリミとサシミのほうへ振り返る血吸。



血吸「私たち吸血鬼は、他者のエネルギーを吸う怪異。相手が生き物であれば生命の源である血液を、幽霊であれば存在そのものを吸うのです。私は生涯絶対に生き物も幽霊も吸わないと決めていたのですが、今回は急だったので……見なかったことにしてくださいね」


サシミ「うん。ありがとう、先生」


キリミ「……恩に着る。とりあえず救急車呼ぼうぜ」


血吸「そうだ!シゲミさんと連絡は取れますか?伝えねばならぬことがあります」


サシミ「何を?」


血吸「ポコポコと戦うなら知っておくべき、ヤツの秘密です」



<元特殊部隊員ダニエラ VS 殺し屋小学生姉妹-完->

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