元特殊部隊員ダニエラ VS 殺し屋小学生姉妹①

シゲミたち家族が暮らす家は、野球のグラウンドが8つは入るほどの広大な敷地に建つ日本家屋。敷地をぐるっと囲むように城壁を思わせる、高さ15mはあろう壁が立っている。外から侵入するのは難しい。



PM 3:40

徒歩でシゲミ邸の門前までやって来た、元特殊部隊員の幽霊・ダニエラ。長いブロンドヘアをポニーテールにし、迷彩柄のツナギを着ている。



ダニエラ「情報では、シゲミの家族は全員が怪異専門の殺し屋。つまりこんなデカい家を建てられるくらい同胞たちを殺して稼いだということか……ヘドが出る。すぐ始末してやる」



ダニエラは門の脇に設置してあるインターホンを連打した。



ダニエラ「シゲミちゃーん?遊びましょー?ねぇー?いるのー?聞こえるー?ねぇー?遊ぼうよー?」



近隣住民や中にいる人間などお構いなしにインターホンを鳴らすダニエラ。突如、左首にヒンヤリとした感覚が走る。ダニエラは瞬時に身を屈め、曲げた足を伸ばす勢いで右横にジャンプした。シゲミの妹・キリミの振るうコンバットナイフが空を切る。キリミはダニエラの背後から首を切り落とそうと狙ってたのだ。



ダニエラ「私の背中を取るとは……ただの女児じゃなさそうね」


キリミ「お前もただの人間じゃねーな。隠しても無駄だぜ、アタシは怪異殺しのプロだ」


ダニエラ「そう。じゃあアナタ、シゲミちゃんの家族ね?私、ダニエラ。今日シゲミちゃんと遊ぶ約束をしてるの。どこにいるか知らないかな?」


キリミ「シゲミねぇの同級生か?にしちゃ、だいぶ歳食ってるな」


ダニエラ「あら、随分とお口が悪いわねぇ。どういう教育を受けてるのかしらこのゲジゲジは」


キリミ「シゲミ姉は修学旅行で留守だぜ。遊びたいなら、アタシらと遊んでけよ」


ダニエラ「アタシ?」


ダニエラの頭上から長い針が無数に降り注ぐ。体が針と接触する寸前、バック宙でかわすダニエラ。針はコンクリートの道路に深々と突き刺さった。シゲミ邸を取り囲む壁の上部に、針を投げた主である少女が立っている。キリミの双子の妹・サシミ。



サシミ「もう!お姉ちゃんが複数形で言うから私がいること勘付かれたじゃん!」


キリミ「チッ、いちいち細けぇんだよ」



サシミは壁から飛び降り、キリミとダニエラの中間あたりに着地。すくりと立ち上がった。両手の指の間に針を1本ずつ、計8本挟んでいる。



ダニエラ「コイツらも殺し屋ならば、ポコポコ様の敵となり得る……ここで消しておくべきか」


キリミ「何だって?チン⚫︎コ様ぁ?」


サシミ「ポコポコ様。ほら、最近シゲミ姉が殺し方を調べてた悪い神様だよ」


キリミ「ああ。じゃあコイツはその信者か?」


サシミ「たぶんね」



2人の会話をよそにダニエラは右腕を自分の腹部に突っ込んだ。腹が右腕の肘から先を完全に飲み込んでいる。そしてゆっくりと腕を腹部から引き抜く。その手にはサブマシンガンMP5が握られていた。



ダニエラ「幽霊は体を透過させることで物体をすり抜けられる。怪異殺しのプロなら知ってるでしょ?この力を応用し、私は体内にあらゆる武器をしまっているの。つまり私は『歩く武器庫』……ポコポコ様の邪気によってたどり着いた私の究極形態!」



銃口をサシミとキリミに向けるダニエラ。



ダニエラ「さて、そんな私と遊んでくれるのよね?お嬢ちゃんたち?」



引き金を引き、銃口から弾丸が連射される。直後、サシミが目にも止まらぬ速度で両腕を振り、弾丸に向かって針を次々と投げつけた。弾丸と針がぶつかり合い、地面に落下する。ダニエラはマガジンに装填された弾を全て撃ち尽くした。しかしサシミにも、キリミにも外傷はない。



ダニエラ「まさか……」


サシミ「マシンガンの弾の威力を針で相殺する技術は4歳でマスターしたよ」


キリミ「サシミは殺しの才能に関しちゃ、ウチの家族でダントツなんだぜ。とはいえ、アタシの見せ場がないのはしゃくだなぁ!」



キリミはナイフを逆手に握り、サシミの横を猛スピード駆け抜けダニエラへ突進する。ダニエラはサブマシンガンを地面に捨てると、左手の甲からサバイバルナイフの刃だけを露出させ、キリミのナイフを受け止めた。


激しく切り結ぶダニエラとキリミ。猛獣のようにナイフを振るうキリミに対し、ダニエラは防戦一方である。



ダニエラ「このガキ……ナイフ戦闘術で私を上回るだと?」



突如、キリミが猛攻が止め、ダニエラから見て右横へ移動した。その背後からサシミが距離を詰めており、ダニエラに向かって至近距離で針を4本投げつける。そのうち3本がダニエラの左肩を貫いた。


激しい痛みでダニエラの動きが止まる。その隙を狙ってキリミが追撃を加えようと接近。ダニエラは力を振り絞って後方へと大きくジャンプしたが、キリミが下から上に振り抜いたナイフを完全にはかわし切れなかった。右肩に大きな切り傷を負う。両肩を負傷したことで、ダニエラは左右の腕が動かせなくなった。



ダニエラ「霊体の私が負傷するなんて……あのイエダニどもが使う得物、ただの武器じゃないのか?」


キリミ「この連携攻撃で殺せなかったのはお前が初めてだ。単身でウチに乗り込んでくるだけあるな。誇っていいよ」


サシミ「誰に誇るの?ここで殺すんでしょ?」


キリミ「そうだった」



劣勢に追い込まれたダニエラだが、不敵な笑みを浮かべている。

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