VS ポコポコ(全5話)

秘密

PM 5:25

幽霊駆除業者『ワーナー・ゴースト・トラップ 西新宿支店』。

幽霊を駆除するのための様々な武器や罠が置かれたガレージの中心で、車椅子を改造している店長・大端おおはし。その様子を、パイプ椅子に座って眺めつつ、ああだこうだと口出しするタンクトップスキンヘッド・撃山うちやま。両足は太いギプスで固められたままだ。



撃山「前に付けてもらった装備じゃ火力が足りねぇ!お前の会社の技術をフル活用しろ!」


大端「もちろんです。20億も貰っちゃいましたからね。ご期待に沿う戦闘車椅子に仕立て上げてみせますよ」



ガレージのシャッターが開く。外から剣崎けんざきが入って来た。



剣崎「撃山様、こちらにいましたか」


撃山「俺の居場所を調べるのなんて、アンタにとっちゃ朝飯前のようだな」


剣崎「先日居酒屋でお話しした際、ギプスに発信機を取り付けさせてもらいましたので」


撃山「しれっと洒落にならないことしやがって」


剣崎「それより、状況が大きく変わりました。ポコポコのほうから攻撃を仕掛けてきたようです。田代たしろ様、シゲミ様ともに怪異と戦闘となり、病院に運ばれました」


撃山「マジか……2人とも無事なのか?」


剣崎「はい。治療を終え、今は安定していると報告を受けております。そしてお2人ともポコポコの部下と思しき怪異を仕留めたとおっしゃっておりました」


撃山「さすがだぜ。なら今こそポコポコを攻めるチャンスだな。急げ大端!あと3時間で完成させろ!」



撃山のジーンズの右ポケット内でスマートフォンが鳴動する。画面を見るが、知らない番号からの着信だった。通話ボタンを押し、機体を右耳に当てる撃山。



撃山「誰だ?」


???「突然のお電話失礼いたします。こちらは撃山様のお電話でお間違いなかったでしょうか?」


撃山「テレアポか?悪いが何も買う気はねぇよ!分かったら3秒以内に電話を切れ!さもないとテメーのケツに弾丸ぶち込んで穴を7つにするぞ!」


???「す、すみません!シゲミさんより撃山様の連絡先を紹介されたものですから!そして撃山様がポコポコと戦おうとしていると」


撃山「その通りだが……」


血吸ちすい「申し遅れました。私、血吸という者です。ポコポコに関する重要な情報があります。いま少しだけお話しできますか?」


撃山「ポコポコの除霊方法ならシゲミ嬢ちゃんから聞いてる。それ以外の情報か?」


血吸「ええ。シゲミさんでは知り得ないヤツの秘密です。ポコポコと戦うなら絶対に知っておく必要があります」


撃山「……話してくれ」


血吸「100年ほど前にさかのぼります。あれは私が大学生のころ……」



−−−−−−−−−−



当時、PTU(POKOPOKO TEACHING UNIVERSITY)に通う学生たちの間でボクシングが流行っていた。休み時間になるとキャンパスの空きスペースを使って、学生たちが手製のグローブをはめてパンチを打ち合う。


学生の中で一番強かったのが若かりしころの血吸。どんなに体格が良い学生でも、吸血鬼の血吸には力負けしてしまう。そんな評判を聞きつけた学長兼教授のポコポコが、血吸にタイマンを挑んだことがあった。


グローブをはめ、向かい合って立つポコポコと血吸。



血吸「本気でいきますよ?負けても、成績を悪く付けたりしないでくださいね?」


ポコポコ「もちろんや。親の仇やと思って殴ってこい」



血吸は軽快なフットワークでポコポコに近づき、顔面に向かって右ストレートを放つ。しかしポコポコの体から30cmほど離れた位置で、拳が壁に当だったかのように止まってしまった。続けざまに左フックをポコポコの脇腹目掛けて放つが、これも空中で静止。ポコポコにパンチが当たらない。



血吸「どうなってる……?」


ポコポコ「だーっはっはっはっ!これが大学を支配する者の力だ!キミのヒョロヒョロパンチなど1000回打っても当たらんよ!だーっはっはっはーい!」



高らかに笑い声を上げるポコポコの後頭部に、どこからか飛んで来たラグビーボールが直撃した。



ラガーマン「すみませーん、ボールそっちに行っちゃいましたー」


ポコポコ「このノーコン!便器に向かって小便するときみてぇに慎重にコントロールしろや!」



ポコポコは後頭部を手で押さえながら、ラガーマンにラグビーボールを投げ返した。



−−−−−−−−−−



血吸「……おそらくポコポコは、自分が認識している攻撃は何らかの力で防げますが、意識外からの攻撃は防げない。つまり不意打ちならダメージを与えられる」


撃山「そうか、だからあのビルで戦ったとき、俺が撃った銃はポコポコに当たらなかったのか。ヤツの正面からの攻撃だったから」


血吸「これが私の伝えたかった秘密です」


撃山「ありがとう。ヤツを倒す大きな手掛かりになりそうだ。まぁ、100年前のポコポコを知ってるってことは、アンタも只者じゃないんだろう。でも詮索はしねぇよ。これ以上は危険だ。俺らには関わらず、自分の身を守れ」



通話を終える撃山。



撃山「……剣崎の兄ちゃん。アンタとあるじは、ポコポコとり合える殺し屋を探してたんだよな?残りの軍資金36億円で仕事を請けてくれそうな殺し屋に心当たりはないか?ヤツから時間を稼げる、凄腕だと助かるんだが」


剣崎「……適任の方が1人おります。以前は断られましたが、現在の状況に加えそれだけの報酬を提示できれば、協力してくれるかもしれません」


撃山「今夜すぐ動けるかどうかも聞いてほしい。ソイツがOKして、車椅子が完成したらポコポコを討ち取りに行く」

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