深淵への侵入③

3日後 PM 7:30

ある高級居酒屋の個室に撃山うちやまを呼び出した剣崎けんざき。目的は現時点でのポコポコに関する情報を全て渡すこと。


剣崎が椅子に腰掛ける一方、撃山はまだ車椅子のままだ。


テーブルの上にはローストビーフやポテトサラダなどのおつまみが並ぶ。撃山は話しながら、食べ盛りの中学生のようにおつまみを箸で次々と口へ運んだ。



撃山「つまりポコポコの住処すみかは分かったけど、最強の殺し屋が番犬になってるから、うかつに手出しできねぇってわけだ」


剣崎「ええ。それに、ポコポコの部下はFOXフォックスだけではないと思われます。その力でより強力な怪異を手駒にしていることでしょう」


撃山「ちまちまと一般人を勧誘してた信者どもとは比べ物にならない求心力ってわけだ。さすがは教祖様だな。で、ポコポコは部下を集めて何がしたいんだと思う?」


剣崎「私の推察ですが、再び怪異の王となり世界の頂点に君臨することではないでしょうか?」


撃山「どうだかねぇ。もっと単純な理由かもしれないぜ?例えば『友達が欲しいだけで、せっかくなら有能な同類だけのグループを作りたい』とかな」


剣崎「……どのような目的であれ、ポコポコの勢力は強まりつつあります。早めに手を打たなければ、止められなくなるでしょう」



テーブルに箸を置く撃山。



撃山「剣崎の兄ちゃんよ。アンタの雇い主が出資してくれた60億、いや俺がぶっ壊した病院に弁償した分を引いて56億か、明日までに全部俺に現金で渡してくれねぇか?この車椅子をさらに戦闘向けに改造する」


剣崎「承知しました。我があるじに伝えておきます。ところで撃山様、お酒は飲まないのですか?ケガが治るまでお医者様に禁止されてるとか?」


撃山「俺、酒ダメなんだよ。体質的に全く飲めねぇんだ。二十歳の誕生日にカシスウーロンを一杯飲んで急性アル中になってから一滴も飲んでねぇ」


剣崎「そうなんですか。てっきりウォッカを瓶から直接飲むような人だと思ってました」


撃山「だから今度話をするときは、こんな高級居酒屋じゃなくてファミレスでいいぜ」



<深淵への侵入-完->

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