空飛ぶメガロドン②
霊体の女性は翼の上をスタスタと歩き、メガロドンへ接近する。
女性「私の名前はダニエラ・トンプソン、27歳、独身。アメリカ海軍特殊部隊
メガロドンは近づいてくる女性を、感情の宿っていない真っ黒な左側の瞳でギョロリと見つめる。
ダニエラ「この飛行機が無事に着陸してくれないと、私が困るの。他の乗客は知ったこっちゃないけど。だから消え失せてくれるかしら?このフカヒレモンスターがっ!」
ダニエラはメガロドンに向かってドロップキックを放つ。ダニエラを見つめていたメガロドンの目に両足が刺さった。
🦈「ギギギギギ」
それでもサメは翼に噛みついたまま離れない。狙った獲物を取り逃がすことをサメの本能が許さないのだろう。
メガロドンとダニエラの戦いを機内から見つめるマーカスと老爺。
老爺「メガロドンの幽霊と女性の幽霊の一騎打ちか……女性が勝たなければ飛行機は墜落するだろうが、サメに詳しい私としてはメガロドンに勝ってほしい気持ちもある。幽霊に詳しいキミ、賭けをしないか?私はメガロドンの勝利に20ドル賭ける」
マーカス「やらないです」
メガロドンの眼球に突き刺さった両足を引き抜き、翼の上に戻るダニエラ。
ダニエラ「少しは忍耐力があるみたいね。だけど、翼に噛みつくので精一杯ってツラしてるわよ?SEALs入隊試験の1つ『ヘルウィーク』を乗り越えた私にとって上空1万mはまるで温泉のように心地良い。根比べで勝てるなんて思わないことね」
ダニエラは右足をまっすぐ上に向かって振り上げると、メガロドンの脳天にかかと落としを見舞った。メガロドンの頭が大きく湾曲する。人間とは思えない重い一撃だ。
🦈「ギギ……ギ……」
この一撃はメガロドンにとっても耐え難いものだったのだろう。口が翼から離れ、メガロドンは吹き荒れる風に流されるように機体の後方へと飛んでいった。
機内は歓喜の声で包まれる。しかし、喜ぶのはまだ早かった。メガロドンが空を泳ぎ、機体の後ろから迫っている。その速度は旅客機以上だ。まだ墜落させる気満々なのだろう。
ダニエラ「アナタも
ダニエラはジャンプしドロップキックの体勢でメガロドンへ向かい飛んでいく。メガロドンは口を大きく開くと、ダニエラを丸呑みにした。そのまま突き進み、再び翼に狙いを定めるメガロドン。しかしメガロドンの尻尾が霧散。体を突き破るようにダニエラが現れた。ドロップキックでメガロドンの体を一直線に突き破ったのだ。
メガロドンのボロボロと全身が崩れていく。ダニエラは旅客機後方部の壁をすり抜けて機内に着地した。
自分の席へと戻るダニエラに、乗客全員がスタンディングオベーションを送る。その様子を見てダニエラは、CAが使うマイクを奪い取り、大声で乗客に呼びかけた。
ダニエラ「私の力は神・ポコポコ様によって授けられたもの!感謝の念は全てポコポコ様に捧げよ!」
乗客「YEAH〜!POKOPOKO!POKOPOKO!POKOPOKO!PK!PK!PK!」
ダニエラの目的は日本で復活したというポコポコ様と合流すること。アメリカにはダニエラ以外にも多数の信者がいたが、ポコポコ様が行方不明になったことでその多くが信仰心を失った。
さらに、ポコポコ様を復活させた日本の教団がプロの殺し屋たちにより崩壊させられたという知らせが入ったことも、信者の恐怖心を増長。ポコポコ教離れに拍車をかけた。
特殊部隊員で腕っぷしに自信があったダニエラは恐れることなく布教活動を継続。そん中偶然ではあるが、殉職して幽霊になった。彼女は「自身が幽霊になれたのは生前からポコポコ様を信仰し、布教活動を熱心に続けたから」だと信じ込んでいる。そしてポコポコ様に自分の口から感謝を伝え、
ダニエラがポコポコ様と邂逅し、ポコポコ様を狙う殺し屋たちの始末に乗り出すその時は近い。
<空飛ぶメガロドン-完->
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