空飛ぶメガロドン(全2話)

空飛ぶメガロドン①

アメリカを飛び立ち、日本へ向かう旅客機内。これから着陸体勢に入るというアナウンスが流れた。エコノミークラスの中ほど、一番右の窓際に座っていた中年男性、マーカス・レイノルズはシートベルトを締めようとする。直後、機体が大きく揺れ、右側に傾いた。乗客の多くが体勢を崩し、ドリンクの容器や雑誌が床を滑る。


シートベルトを締めるのが間に合わず、マーカスは窓に額をぶつけた。衝撃で一瞬目をつむり、開く。その両目に信じられない光景が飛び込んできた。


体長20mはあろう巨大なサメが翼に食い付いているのだ。


驚きのあまりすぐさま顔を窓から離すマーカス。見間違いかと思ったが、他の乗客も異変に気付き、窓の外を覗いている。


出発からずっとマーカスの左隣に座っていた齢70は超えている老爺が、マーカスの体越しに窓の外を見ながら呟く。



老爺「ここは上空1万メートル……サメは水上にジャンプすることはあるが、こんな高さまでは飛べない!私はサメに詳しいんだ!だからこそ断言する!ありえん!」


マーカス「そんなこと誰でも分かりますよこのボケナス!サメ博士なら、この状況を何とかする有益な情報をください!」


老爺「私はサメ博士ではない。ネットでサメのことを調べてるだけの無職だ。他に言えることがあるとすれば、大きさからしてあのサメはメガロドンだろう。しかしメガロドンはすでに絶滅したはず……存在しているわけがない!サメに詳しい私が言うのだから、間違いない!」



再び窓へ視線を向けるマーカス。よく見ると、巨大ザメの体はうっすらと透けていて、さらに遠くの空が見える。マーカスはある仮説を立てた。



マーカス「ボクは幽霊に詳しいのですが、あれは絶滅したメガロドンのゴーストでは?霊体になり、自由に空も飛べるようになった……」


老爺「そうじゃ……そうに違いない!キミは霊能者か何かか?あのゴースト・メガロドンを追い払う方法はないのか?」


マーカス「ボクはオカルトブログを書いてるだけの無職です。除霊なんて……できない」


老爺「この能無しゴミムシダマシが!このままでは墜落するぞ!」



狼狽える2人の背後から女性が歩いてきた。ブロンドのポニーテールに迷彩柄のツナギを着た、身長180cmは超えているモデル体型。女性は悠然と、2人の体をすり抜けながら歩き、機体の壁をもすり抜け、機外の翼に出た。時速800kmで飛行する旅客機の翼の上、吹き荒れる暴風を物ともせず、女性はサメに向かって歩き続ける。



マーカス「彼女は……ゴ、ゴーストだ!ゴースト・ウーマン!幽霊に詳しいボクが言うんだから間違いない!霊体であるがゆえ、人間や壁をすり抜けられるし、風の影響も受けなんだ!」

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