最初の友達(全3話)

最初の友達①

キャバクラ「デーモン・パンプキン池袋東口店」では、キャストの失踪が立て続いていた。1日1人ずつ、1週間で7人。


新人のキャストが突然店に来なくなることは珍しくない。しかし失踪した中には10年近く働き続けていて、毎月売上トップのキャストも含まれている。収入や人間関係に問題があった様子はない。異例の事態だ。


失踪したキャストには共通点がある。とある客とアフターに行った翌日から連絡が取れなくなっていること。ちょうど1週間前から毎日夜10時に店に来ている20代中盤の男性客。毎回必ず、黒地に白いハイビスカスが無数にプリントされたアロハシャツと、ベージュのチノパン姿。一見するとチンピラ風で気性が荒そうだが、店内で問題行為はしていない。一晩で100万円以上使うこともあり、むしろ優良客の部類だ。


この日も、夜10時に来店した男。服装も、キャストを指名せずフリーで来るのもいつも通り。男の席にはキョウカがつくことになった。キョウカは「デーモン・パンプキン池袋東口店」で働くキャバ嬢であり、殺し屋。店にやって来る迷惑な客、痛客を秘密裏に始末するのが彼女の役目である。


自身で開発した無味無臭の毒薬を酒に混ぜて飲ませるのがキョウカの常套手段。体内に入った毒は8時間ほどかけてゆっくりと作用し、心肺を含む体のあらゆる活動を停止させる。しかも毒は体内で完全に分解され、死体を調べても検出されない。


男にキョウカをつけたのは店長の判断だ。すなわち、店長は男を始末する決断をしたということ。店内での素行が良くても、アフターに行ったキャストが出勤しなくなるということは、店外でキャストに何かしらの嫌がらせをしている可能性が高い。そしていくら金払いが良くても、キャストを再度雇うための費用や、そのキャストが将来的に生み出したであろう売上を考えると補填できているとはいえない。諸々を考慮し、男を始末したほうが店にとってメリットが大きいと店長は判断したのだ。


店長の考えはキョウカも理解している。男の隙を見計らって飲み物に毒を混入させるのが、キョウカのミッション。


ソファで大股を広げて座る男の隣に腰掛けたキョウカ。



キョウカ「はじめまして〜!私キョウカっていいます〜!お兄さん、お名前は?」


ポコポコ「俺、ポコポコ言います。どうぞよろしゅう」


キョウカ「なにそれぇ〜あだ名?」


ポコポコ「ちゃうよ。本名や本名。チ⚫︎ポコちゃうよ。ポコポコ」


キョウカ「いきなり下ネタ〜?下品だけど面白〜い!じゃあポコポコさんって呼ぶね!お酒はウイスキーでいい?」


ポコポコ「おお、水割りで頼むわ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る