復活のポコポコ様②

ポコポコが撃山うちやまのほうを向く。


ポコポコ「スキヘッドの兄ちゃんよぉ!オレが邪気全開にしても全然平気そうやん!まだオレも本調子ちゃうけど。珍しいで自分」


ポコポコが撃山へと歩み寄る。ポコポコが1歩前へ進むたびに、撃山は1歩下がる。



ポコポコ「そんな警戒せんと。邪気が効かへんなら、オレら友達になれるやん」



フォカッチャのときのように、ポコポコは撃山にもフランクに接しようとしている。しかし何がポコポコの怒りのトリガーになるか分からない撃山からすると、なおさら不気味に思えた。



撃山「すまねぇな服来。急所は外すからよ」



撃山はポコポコに向かって弾丸を3発放つ。ポコポコの体へ一直線に弾丸は飛んだ。しかし体に当たる寸前、ポコポコを避けるように軌道が変わり、背後の壁に弾痕を残す。続けて5発撃ったが、やはり途中で軌道が変わりポコポコには当たらない。



撃山「クソッたれ!どうなってやがる!?」


ポコポコ「なんや、髪の毛ないヤツは友達になろうという心のゆとりもないんか?そんなヤツと仲良くすんのは、こっちから願い下げや」


撃山「バケモノが!仲良くする気なんてハナからねぇよ!さっさとその体から出ていけ!」



腕を組んで右斜め上を向き、考え込むポコポコ。5秒後、撃山のほうに向き直る。



ポコポコ「アカン。色々やりたいことがあんねん」


撃山「怪異の王になることか?」


ポコポコ「ちゃうちゃう。そんなこと、とうの昔に散々やって、もう飽きとるわ」


撃山「じゃあ……」


ポコポコ「遊ぶに決まってるやん!人間は昔から娯楽を考えるのが得意やから、1800年も経った今なら、もっと楽しい遊びがぎょうさんあるやろ?この人間の体使って遊びまくんねん!」



ポコポコはさらに邪気を強める。フロアの窓ガラスが全て割れた。



ポコポコ「今日はもう腹一杯だから、兄ちゃんは食わんどいてやるわ。んじゃサイナラ」



ポコポコは窓からビルの外へと飛び降りた。



−−−−−−−−−−



1階エントランスの外でビルを爆破させるタイミングを待つシゲミと田代たしろ。シゲミの足元にはトシキが仰向けで気絶している。田代の背中には大怪我を負ったまま眠るキョウイチ。


撃山が指定した0時まで残り5分となった瞬間、ビル5階の窓ガラスが割れ、破片がシゲミたちの頭上から降り注いだ。シゲミはトシキの襟首えりくびを持って引きずり、田代はキョウイチを背負ったままビルの中に避難する。


大量のガラスが地面に落ちて割れた数秒後、ブリーフ姿の男が上空からひざまずくように着地した。男の体をドス黒い邪気が覆っている。



田代「こいつ……まさかポコポコ……シ、シゲミ殿」



田代の左隣でシゲミは呼吸を乱し、床に片膝を付いている。ポコポコが放つ邪気の影響を受けてしまったのだ。ポコポコが立ち上がり、2人のほうへ顔を向ける。



ポコポコ「あれ?アンタもスキンヘッドやん。流行はやってんの?」



田代も邪気の影響を受け、呼吸しにくくなり始めた。背中のキョウイチが冷蔵庫のように重く感じる。



ポコポコ「その腰に差しとる刀、妖刀やんな?妖刀持ってるヤツならオレの邪気にも耐えられて友達なれるかと思たけど、無理そうやな。ほんま、たった2000年弱で友達作るの下手なヤツばっかになっとるわ。世も末やで」



ポコポコが割れたカラスの上を素足で歩き、シゲミと田代に近づく。2人まであと7mほどのところで、上空から撃山が降ってきた。ポコポコとシゲミ・田代の間に両足で着地。ボキリという鈍い音が鳴った。そしてポコポコに向かって両手を広げ、仁王立ちをする。



ポコポコ「両足、折れとるやん。そこまでして後ろの連中守りたいん?」


撃山「……と、友達ってのはなぁ、こうやって作るんだよ」


ポコポコ「ちゃうと思うけど。まぁええわ、その心意気に免じて全員見逃したる。それにもう寝むいわ。この体、めっちゃ燃費悪いな。ちょっと動いただけでめちゃ疲れてまう。慣れるまで相当時間かかりそうや」



ポコポコは両足をカエルのように曲げてその場にしゃがみ込む。



「次会ったときは、お互い価値観が変わって友達になれるとええな」



足を伸ばした勢いで30m以上飛び上がるポコポコ。ビルの向かいにあるマンションの屋上に着地し、そのまま建物の屋根を飛び移って夜の闇へと消えていった。


意識を失い、背中から倒れそうになった撃山を田代が肩で支える。



田代「シゲミ殿、ここを離れるぞ!ついでに爆弾を起動しろ!」



シゲミはふらふらと立ち上がり、右手に握っていた起爆スイッチを押す。ビル中のC-4が一斉に爆発した。

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