かまいたち戦いニキ田代 VS 不死身の貞春
C-4を壁や段差に設置しながら階段を上がるシゲミと
3階に到着。2階と同じ構造で、何も置かれていない広いフロアの向こう側に4階へと続く階段がある。そしてフロアの中心には、膝まである長い白衣を着た30歳前後の男。
貞春「やぁ。俺の名前は
田代は男を無視して横を通り過ぎる。男の首に赤い横一閃の線が入り、頭がボトリと床に落ちた。田代はすれ違う一瞬の間に、
田代「急ごう。
首が無くなった男の体が、膝から床に倒れ込む。シゲミはその横を悠然と歩き、田代と共に上階へ続く階段を登ろうとした。
貞春「俺の名前は
シゲミと田代が振り向くと、斬首されたはずの男が起き上がり、自己紹介を続けていた。頭は何ごともなかったかのように体にくっついているが、男の足元には田代が斬った頭が落ちている。
貞春「仕事で不死の薬を開発していてね。俺自身も被験者の一人であり、唯一の成功体だ」
田代「やはりただでは通れぬか。シゲミ殿、今度こそ拙者に任せて先へ」
シゲミは無言でうなずき、階段を駆け上る。田代は刀を鞘から抜いて貞春へと歩み寄った。
貞春「自己紹介を続けさせてもらおう。趣味は我が妻・
田代「さっきの
貞春「教団の規則でね。初対面の相手とはできるだけ会話し、心を近づける。そうすれば、その相手も我が教団に興味を示しポコポコ様を」
ろくろを回すようなジェスチャーをしながら話す貞春の両腕を刀で切断する田代。ボトボトという音を立てて両腕が床に落ち、切り口からは噴水のように血が噴き出す。
貞春「信仰してくれるかもしれないだろ?」
田代「腕が切断されてもお構いなしか。まさにゾンビだな」
貞春の両腕が切り口から徐々に再生する。骨、筋肉、血管、神経、皮膚が、植物の成長を早送りで見ているように伸びていき、元の状態に戻った。
貞春「ところで、下の階にいた猿井は殺したのかね?」
田代「いや。だが無事ではないだろうな」
貞春「そうか。猿井に取り憑いたゴリラは、単純な戦闘力に関しては教団随一なのでな。そんな彼らを突破してきたのなら、俺がキミと戦って勝てる見込みはないと思ってね」
田代は貞春の右太ももを切断した。足が床に落下し、傷口から大量の血が
田代「幹部は弱い順に出てくるのが相場ってものだろう?」
貞春の右太ももから先が再生する。
貞春「敵を早めに排除するには、強い幹部ほど先陣を切るべきでは?」
田代は貞春の左すねを斜めに切り落とす。しかし再生する。
田代「一理ある」
田代は刀の切っ先を貞春の腹部に突き刺し、根元まで押し込んだ後、引き抜いた。貞春の腹部と背部から血が放尿のように飛び出したが、すぐに傷が塞がる。
貞春「俺は運動不足な研究者。できるのは侵入者の足止めがせいぜい。だがそれで良い。おそらく今頃、上の階で仲間がポコポコ様復活の儀式を行っている。それが完了すれば、貴様らに勝機はない」
田代「ポコポコ様とやらが復活するまで、拙者に貴殿を斬り刻み続けろと?」
貞春「そう、まるでお肉屋さんのように。さぁ、次はどこを斬る?」
田代「……貴殿は学者と名乗っていたな?その不死の体を実現するまでに多くの実験をこなしてきたはず」
貞春「Yes」
田代「では拙者にも一つ、実験させてくれぬか?」
田代は刀を両手で握り、頭の上に振り上げると、縦に振り下ろし、貞春をつむじからタ⚫︎キンまで真っ二つにした。体が左右に裂け、ドスンドスンと床に倒れる。
貞春「だから無駄だって」
貞春の右半身のみが喋る。
田代「貴殿の体、切り落とすと肉体の質量の多い方が再生し、欠損した部位を補うようだな」
貞春の右半身から徐々に左半身が再生する。左半身からは右半身が生えてくる。
田代「では頭頂部からタ⚫︎キンまで、
貞春「なるほど。俺もやったことがない実験だ。これは仮説だが、左右両方とも体が再生し、もう一人の俺が出来上がるだろう」
貞春の仮説通り、左右に分かれた半身はそれぞれ再生し、貞春が2人になった。
田代「体は2つに分かれる。が、『自我』はどうだ?」
貞春「何!?」
元々左半身だった貞春が、右半身だった貞春、すなわち田代と会話している貞春に飛び掛かる。元左半身貞春に押し倒され、マウントポジションで首を絞められる元右半身貞春。
元右半身貞春「これは……どういう……」
田代「仮説だが、体が分かれても自我は分かれずどちらかにのみ宿る。そして自我が宿らなかったほうの体は抑制が効かなくなり、精神の安定を求め、もう一方の体を本能で殺そうとする」
元左半身貞春の力は一層強まり、元右半身貞春の首を絞め続ける。
元右半身貞春「ぐっ……くはっ……」
田代「しかし双方不死身なら決着はつかない。永遠に殺し合うがいい」
元右半身貞春「このオチ⚫︎ポ
田代は刀を鞘に納め、上階へと続く階段に向かって歩き始めた。直後、懐に入れていたスマートフォンが鳴動する。シゲミからの着信だった。
シゲミ「もしもし、田代さん?終わった?」
田代「一応な」
シゲミ「なら空手家くんのほうへ加勢に行ってくれる?私は大丈夫だから」
田代「本当か?コイツら、どいつもバケモノじみている。一筋縄ではいかんぞ」
シゲミ「大丈夫だから」
通話を終えるシゲミ。4階のフロアでシゲミを待ち受けていたのは、同じ心霊同好会のメンバーであるトシキだった。
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