ポコポコ教襲撃戦(全8話)

依頼

東京都内某所

コンクリートが剥き出しになり、窓ガラスのほとんどが割れた、汚い廃ビルの一角に集められた3人の男女。


白いタンクトップの上から拳銃用のホルスターサスペンダーを装着し、ジーンズを履いたスキンヘッドの男性・撃山 九連うちやま くれん

青い和服で左腰に日本刀を帯びたまゆ無しスキンヘッドの男性・田代たしろ

ブレザーを着て右肩にスクールバッグをかけた女子高生・シゲミ。


3人の前には黒スーツに銀縁メガネをかけた男が、ノートパソコンを開いて立っている。画面にはよわい80は超えているであろう、白髪をオールバックにした老爺の上半身。


男「我が主人あるじより、皆さまへの依頼についてお話しさせていただきます」


老爺「集めた3人のうち2人がスキンヘッドとは。ドラゴンボールを読んでるかと思ったぞ」


撃山「世界一ナイスなヘアスタイルだ。そんなことより、本題を話してくれよ」


老爺「私は以前から猿井さるいという男の暗殺を計画していた。この男にそそのかされた私の娘夫婦が失踪してな。他にも被害者がいるだろうと思い、猿井を抹殺しようと思ったのだ。だが、最近になってこの男は『ポコポコ教』という教団の幹部であることが分かった」


シゲミ「ポコポコ教……」


シゲミは両の拳にギュッと力を入れる。


老爺「この教団が存在し続ける以上、猿井一人を殺したところで大した意味はない。幹部全員を消し、教団そのものを瓦解がかいさせる必要がある」


田代「拙者の教え子もポコポコ教のイベントの参加者を集めていた。早く叩かなければ、どんどん拡大していくだろう」


老爺「此奴こやつらは、この世ならざる者、つまり怪異の力を使いさまざまな宗教団体を潰し、信者を取り込んでいると聞く」


撃山「俺の同僚、服来ふくらいさらったのもポコポコ教の信者で間違いないな。アイツ、変な占い師に『怪異の王になれる』と言われていた。あの占い師もグルだったに違いねぇ」


老爺「そしてポコポコ教が主催するイベント、ポコポコ様とかいう神の復活祭が明日開催されるそうだ。その前準備として、今夜幹部の数名があるビルに集まるとの情報を得た」


パソコンの画面上、老爺に被さるように5階建てのビルの航空写真が表示される。ビルの周囲数十mは空き地になっている。


老爺「東京・練馬区の千川通せんかわどおり沿いから少し奥まった場所にある『フキヤドクガエルビル』。とある清掃会社の自社ビルとして登録されているが、この会社は実態のないダミー企業。ここに猿井などポコポコ教の信者たちが出入りしていることも判明した。ヤツらの巣と見て間違いないだろう」


男「先ほど皆さまのスマートフォンに、『フキヤドクガエルビル』の位置情報と、今回のターゲットである幹部4人の名前および顔写真のリストを送りました。これらは教団に潜伏した私の部下が集めた情報で、正確性に関しては保証します」


3人はそれぞれスマートフォンを取り出し、画面を見る。リストにあるターゲットは次の4人。


エセエクソシスト・フォカッチャ

製薬企業研究員・邪馬下 貞春やました さだはる

食品メーカー会社員・猿井 猛さるい たける

市目鯖しめさば高校2年・トシキ


シゲミ「トシキくん、たった数週間でもう幹部に……別の方向にその才能を活用できなかったのかな?」


老爺「此奴らを始末できるのは、怪異と戦い勝利した経験のあるキミらだけだ!殺し屋デカ撃山!爆弾魔シゲミ!かまいたち戦いニキ田代!」


撃山「細かいけど『元』デカだ。今は警備員だよ」


シゲミ「私は訂正なし。けっこう気に入ってる」


田代「拙者は不服だ。もっとカッコいい異名が欲しい」


老爺「成功したあかつきには、キミら一人ずつに20億円を支払う。急な話だが、けてくれるかね?」


シゲミ「報酬はいらない。私は同級生の目を覚ましに行く。その機会をくれてありがとう、おじいさん」


田代「拙者も報酬は不要。拙者の本来の使命は、子どもたちを危険から守ることだ」


撃山「じゃあ俺もいらねぇ。服来を取り戻せればそれで良い」


老爺「……いやはや、なんと礼を言ったら良いか。金で動く殺し屋ならいくらでも雇える。しかし今回の依頼は、報酬など無くても確固たる覚悟を持って臨んでくれる殺し屋に依頼したかった。そう、キミたちのような」


シゲミ「……えっ、本当にくれないの?」


田代「こういう場合のマナーとしてまずは断ったけれど、建前のつもりだったのだが……」


撃山「金なんて欲しいに決まってるだろ」


老爺「なんじゃい!結局お前らも金かい!」


撃山「冗談だよ。タダでやるよ」


老爺「マジで頼むぞ。現在の時刻が午後5時。遅くとも明日のイベントが開始される朝10時までに片付けてくれ」


シゲミ・田代・撃山「了解」


老爺「では健闘を祈る」


男はノートパソコンを閉じた。


男「ここからは、撃山様をリーダーとして行動をお願いします。詳しい作戦や暗殺の手段などは問いません。完了しましたら、この場所にお集まりください」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る