強襲

PM 11:10

フキヤドクガエルビルへと向かい、夜の千川通せんかわどおり沿いを歩くシゲミ・田代たしろ撃山うちやま


田代「それで、作戦はあるのか?」


撃山「ああ。23時30分に3人でビルに侵入したら、俺は服来ふくらいを探す。シゲミ嬢ちゃんはビル中にC-4を仕掛けて回れ。田代のとっつぁんは嬢ちゃんの護衛だ。完了したら脱出し、0時ちょうどに爆弾を全て起動しろ。俺と服来が戻らなくても0時ピッタリにビルごと吹き飛ばせ」


シゲミ「承知」


田代「ビルに入ってからのことは理解した。大した策は無いということをな。で、どうやって侵入する?」


撃山「それも考えがある」



−−−−−−−−−−



PM 11:30

フキヤドクガエルビル

ガラス張りの1階正面エントランスに、6トントラックが勢い良く突っ込んだ。ガラスがバリバリという音と共に全て割れ、ビル内の床に降り注ぐ。


トラックの運転席から降り、ガラスの破片を踏み締める撃山。助手席側から田代とシゲミが続いて降りる。


撃山「正面突破だ」


田代「人はこれを無策と呼ぶのだ」


シゲミ「後でこのトラックの持ち主に謝らないとですね。盗んだ上に車体ボッコボコにしちゃいましたし」


撃山「気にすんな。キーをつけたまま路上駐車してるヤツが悪いんだ」



−−−−−−−−−−



トラックが1階のガラスを突き破る音は、ビルの最上階である5階にいるポコポコ教幹部たちの耳にも届いていた。


トシキ「何だぁ!?」


貞春さだはる「侵入者か」


猿井さるい「信者たちがおらず、警備が甘くなる夜間を狙ってきたようですね」


トシキ「警察でしょうか?」


貞春「日本の警察が何の警告もなく突入なんてあり得ない。おそらくテロリストだろう」


フォカッチャ「慌てるな。こういう事態を想定し、我々がここでポコポコ様の依代よりしろを守っているのではないか」


5階の広い床全面に描かれた巨大な魔法陣の中心、フォカッチャの隣で、ブルーフ一丁のままオフィスチェアにロープで体を縛られている服来。うな垂れており、意識を失っている


フォカッチャ「出る杭は打たれる。大志を抱く人間の足を引っ張ろうとする輩は、いつの時代にも必ずいるのだ」


猿井「我々に攻撃したことを後悔させ、ついでにポコポコ教に入信させましょう」


フォカッチャ「その必要はない。各担当フロアに向かえ。侵入者ゴキブリどもが来たらその場で殺していい」


猿井・貞春・トシキ「御意ぎょい


フォカッチャ「私は全世界の信者に今すぐ祈りを捧げるよう通達する。計画より早いが、この場でポコポコ様にお目覚めいただくぞ」



−−−−−−−−−−



正面エントランスには東側と西側にそれぞれ上階へ続く階段があった。


撃山「嬢ちゃんととっつぁんは東側から登れ。俺は西側から行く」


二手に分かれ階段を登り始める。途中シゲミは、壁や手すりにC-4を仕掛けまくった。


シゲミと田代が2階に到着。デスクの一つすら置かれていない、だたっ広くて薄暗い空間に出た。その中心、窓ガラスから差し込む月明かりを反射し、銀色に輝くスーツを着た男が立っている。ポコポコ教幹部であり、ターゲットの一人でもある猿井 猛だ。


シゲミたちが登ってきた階段は2階までしか通じておらず、3階へ登るには猿井を超えてフロアの向こう側にある別の階段を使うしかない。侵入者がいても一気に最上階までいけないようにし、各階で迎撃できる構造になっている。フロアも戦うには十分な広さだ。

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