伝播するポコポコ様④−市目鯖高校心霊同好会にて−

市目鯖しめさば高校 化学実験室

授業が終わり、心霊同好会の活動をするべく集まったカズヒロ、サエ、シゲミの3人。実験用の黒い大きな机を囲むようにイスに座って、残りのメンバーであるトシキを待つ。


実験室の扉が開き、トシキが入ってきた。


カズヒロ「そろったな。じゃあ始めっかー」


トシキ「その前に報告!先週電車で『かまいたち戦いニキ』と会ったよ」


サエ「マジ?あのバズってた動画のオッサン?」


カズヒロ「いいなー。連絡先交換したか?今度俺らの動画にも出てもらおうぜー」


トシキ「そんな余裕なかったし、怖い人だったからコラボはやめたほうが

いいよ。それから、もう1つみんなにお知らせがあるんだ」


トシキは左肩に下げたスクールバックから紙の束を取り出し、3人に1枚ずつ渡した。大きく「P」の文字が書かれたポスターだ。


トシキ「今月の30日、ポコポコ様っていう神様をまつるイベントがあるんだ。ここに行かないか?」


シゲミ「ポコポコ様!?」


シゲミが鋭い目つきでトシキを見る。


シゲミ「トシキくん、どこでポコポコ様のことを知ったの?」


トシキ「えっと、『かまいたち戦いニキ』が乗ってた電車で一緒になった女の人から教えてもらったんだ。人々を恐怖から解放する神様がポコポコ様だって」


シゲミはカズヒロとサエからポスターを奪い取ると、ビリビリと破いた。


トシキ「な、何するんだよシゲミちゃん!」


シゲミ「こんなところに行ってはダメ。トシキくん、このポスターまだ持ってるよね?全部渡して。燃やすから」


トシキ「ダメだよ〜!あと1000人勧誘して、幹部になるんだから!」


サエ「幹部?」


カズヒロ「おいおいトシキ、お前なんかヤバいことに関わってないか?」


トシキ「うるさいなぁ、ボクの勝手だろ!とにかくこのポスター全部配り終えるまで、同好会の活動には参加できないんだ。今日はそれを言いに来た。ということで、よろしく!」


そう言い残し、トシキは駆け足で実験室を出て行った。


シゲミ「まさかこんなことになってるとは……」


サエ「シゲミ、なんか知ってんの?」


カズヒロ「アイツ、ポコポコ様とか言ってたよなー?」


シゲミは視線を落としながら口を開く。


シゲミ「祖父が信じていた神様で、私が小さい頃、悪いことをするといつも『ポコポコ様に喰われるぞ』って言われた。実際に見たことはなくて、祖父の話しか聞いたことがないの。でもとにかく恐ろしい存在だって繰り返し聞かされてたから、すっかりトラウマになってしまった。先日は、多分そのポコポコ様の邪気にほんの少し当てられただけで、数日学校に行けなくなったくらい」


サエ「シゲミがトラウマになるって相当エグくない?」


カズヒロ「マジエグ」


シゲミ「一説には、ポコポコ様は『怪異の王』とも言われている。少なくとも、トシキくんが言っていたような人間を救う神ではない。あんな禍々しい気配を放つ存在が、人間を救済するわけがない」


カズヒロ「じゃあやっぱりトシキはヤベー宗教か何かにハマってて、それを普及しようとしてるってことか?」


シゲミ「……トシキくんのことは私に任せてもらえる?何か手を打たないと、深刻な事態になるかもしれない」


<伝播するポコポコ様-完->

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