伝播するポコポコ様③−空手家&レスラーカップルのデートにて−

PM 7:45

真正面に海が見える公園のベンチに座るキョウイチとアキ。昼からデートし、おしゃれなスポットを探してこの公園にやって来た。


アキ「マスターGとかいう幽霊は、キョウイチの体か完全にら出ていったみたいね。良かった」


キョウイチ「ああ。憑依された俺をアキが裸締はだかじめで締め落としたときに、あのジジイの魂も昇天したみたいだ」


アキ「変だと思ったんだよ。恋愛に奥手なキョウイチが、突然夜這いしようとしてきたから。まさか変態ジジイが取り憑いてたなんて」


キョウイチ「本当に申し訳なかったよ」


アキ「私がレスリングやってて良かったね」


キョウイチ「さすが、小学1年から高2の今まで公式戦無敗の最強レスラーってところだな。でも、最近までジジイの残りかすみたいなのが心の中にあってさ。何度か乗っ取られかけた。もう大丈夫そうだけど」


アキ「マスターGの残りかすに乗っ取られなかったのはキョウイチ自身の力だね。そういえば聞いたよ、昨日の練習中、大学で空手バリバリやってるOBを10人抜きしたって」


キョウイチ「もう誰にも負けないように、そしてマスターGに乗っ取られないように心も体も鍛え上げたんだ」


アキ「キョウイチに勝てる人、もう日本にいないんじゃない?あっ、私のほうが強いかな?」


キョウイチ「押忍!まだまだ精進するッス!」


お互いに微笑んだ後、しばらく沈黙する2人。


アキ「……明日は学校だから、早く帰ろう」


キョウイチ「そ、そうだな……うん、そうしようそうしよう」


アキ「……次のデートなんだけど、ここに行かない?」


アキは肩からかけていた白いポシェットの中に手を入れ、1枚の紙を取り出しキョウイチに渡した。


キョウイチ「P ……?ポコポコ様降臨……?何これ?」


アキ「大きなサークルみたいなのがあって、そこが今月30日に屋外イベントをやるの!たこ焼き屋さんとかお好み焼き屋さんとかも出て、お祭りみたいなんだって!楽しそうだし、どうかな?」


キョウイチは眉間にしわを寄せて考え込む。


キョウイチ「なんか怪しいなぁ。カルト宗教みたいなやつじゃないの?」


アキ「違うよ!普通のお祭りだって!」


キョウイチ「ポスターのデザインも不気味だし……念のため別のところにしようよ。他にも楽しいところたくさんあるしさぁ」


アキ「クラスの子も何人か行くって言ってたし、行こうよー!」


キョウイチ「こういう胡散臭いのには近寄らないほうが良いって。やめよう」


アキ「……そう、そこまで言うなら分かった。キョウイチ……ちょっと後ろ向いてくれる?」


言い過ぎたかと思い少し焦るキョウイチ。口論になったときアキが自分から折れるのは不機嫌になっているサインだ。これ以上反論したり、言うことを聞かなかったりするとさらにへそを曲げてしまうと思ったキョウイチは、ベンチに座ったまま体をアキのいるほうと反対に向ける。


直後、キョウイチの背後からアキの両腕が首に巻き付き、裸締めをかけられた。


キョウイチ「ア……キ……?」


アキ「貴様はポコポコ様を愚弄したチャバネゴキブリだ!死でってポコポコ様に懺悔ざんげしろ!」


アキの力は明らかに冗談ではない強さ。超高校級の絞め技を受け、キョウイチは呼吸ができなくなる。徐々に意識が薄らいでいくのを感じた。


アキ「安心しろ!ポコポコ様は反逆者であっても平等に安らぎを与えてくださる!死という名の安らぎをな!」


このままでは気絶するどころか死んでしまう。キョウイチは覚悟を決めた。


キョウイチ「アキ……ご……めん」


キョウイチは右肘でアキのみぞおちを殴り、気絶させた。首に巻き付いていた腕が解け、呼吸ができるようになる。ハァハァと息を切らせたまま、キョウイチはアキを背負い、帰路についた。

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