伝播するポコポコ様(全4話)

伝播するポコポコ様①−居合道部にて−

市目鯖しめさば女子中学校 体育館

居合道部の顧問・田代たしろと唯一の部員・荒川あらかわナガンは、この日の練習を終え、正座のまま向かい合ってお互いに礼をした。


ナガン「田代先生、私、明日から勧誘活動をやろうと思います」


田代「そうか。たしかに、せっかく部として活動するならもっと人数が欲しいよな」


ナガン「部活の勧誘じゃないですよ。これの勧誘です」


ナガンははかまのポケットから四つ折りに畳んだ1枚の紙を取り出し、田代に渡した。田代が紙を開く。黒い下地に白い字で真ん中に大きく「P」、その上部に「ポコポコ様」、下部に「降臨」と書かれたポスターだった。


田代「ポコポコ様?どこかで聞いたような」


ナガン「最近オカルト界隈で流行り出した神様です!信仰している人自体は何千年も前からいるそうですけど」


田代「キミ、そんなものに興味があったのか?」


ナガン「田代先生と鎌鼬かまいたちの戦いをこの目で見たんですから、オカルトに興味がわくに決まってるじゃないですか!で、いろいろ調べてみたらポコポコ様っていう神様のことを知りました。人間を恐怖から解放してくれる存在で、世界各国、大勢の人から支持されてるんですよ」


田代「で、その勧誘ってのは……まさか宗教の勧誘じゃないだろうな?」


ナガン「違いますよー。今月の30日にポコポコ様をテーマにした屋外イベントが日本で開催されるんです!その参加者をたくさん集めて、盛大なイベントにしようと思って」


田代「キミが主催するのか?」


ナガン「いえ、もっと昔からポコポコ様をPRしている団体があって、そこの人たちがやるみたいです。私は参加者の一人に過ぎません」


田代「……このポスター、拙者がもらってもいいか?それから、そのイベントに行くことを止めはしないが、勧誘活動はやめるように」


ナガン「えーっ、大勢で行きたかったのになぁ。田代先生も行きましょうよ!」


田代「考えておくが、良い返事は期待するな」


田代は着物の懐にポスターを仕舞った。

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