服来の秘密②
撃山「はぁ!?何だよその異常な話!聞いてねーぞ!」
服来「撃山さんに報告する義務なんてないじゃないですか!」
老婆「それは偶然などではありません。お付き合いした女性は皆、アナタの強過ぎる邪気に当てられ、心を壊してしまったのです。アナタの近くに長時間いると、精神を
服来「まさかボクのせい……?そういえば、ボクがまだ交番勤務だったとき、見知らぬ男が交番で拳銃を乱射して、ボク以外の警官がみんな死んでしまったことがありました。もしかして」
老婆「それもアナタの邪気が呼び寄せたこと。アナタは死を招く人間なのです。一方、その邪気はこの世ならざる者にとっては活力、いや興奮作用がある麻薬に近い。アナタの邪気を吸い尽くそうと近付いて来る幽霊の類も、これまでにたくさんいたはず」
服来「……じゃあ民家で幽霊の群れに襲われたのも、ミイラが復活したのも、首無しライダーが突っ込んできたのも、全部ボクが原因……?」
撃山「デタラメぶっこいてんじゃねぇぞこのカマドウマ!」
撃山は右腰に下げたホルスターから拳銃を抜き、銃口を老婆に向ける。
服来「撃山さんダメですよ!」
撃山「気分悪くさせてすまねぇな服来。占いなんてやるんじゃなかった。どうせこの後、妙な水晶玉やら数珠やら壺やらを買わせようとしてくるに違いねぇ!」
老婆「そんなつもりは全くありません。私はただ事実を述べただけ。なんなら、今回の占いは全て無料にします」
撃山「油断すんなよ服来!コイツはまだ『霊感商法を仕掛ける気満々』ってツラしてやがる!」
老婆「ちなみにスキンヘッドのアナタは、本当に何も言うことがない。将来も大したことないし、背後霊もついてないし、オーラや気も出ていない。何者でもない。そのツルツル頭のように、人生までハゲ上がっている。だから拳銃なんか持って破天荒っぽく装い、自分は特別なのだと自分をも騙そうとしている。違いますか?」
撃山「ぐっ……このねぇちゃん……」
老婆「しかし、アナタは何もないがゆえに服来さんと一緒にいても邪気の影響を受けない。邪気に何時間当てられても変化しない。元々が空っぽだから。プラスにもマイナスにもならない。だから一緒にいられる」
撃山「これ以上俺を分析するな!もう疑わねぇから!」
拳銃をホルスターに戻す撃山。
老婆「とにかく服来さん、これからもアナタは人に死を与え、怪異を呼び寄せる。それは運命として受け入れなければなりません。ある意味、その強い邪気もアナタに与えられた才能なのです」
服来「才能……?」
老婆「その気になれば、アナタは全ての怪異を従える王になれる素質を持っている」
服来「王……?」
老婆「もちろん、アナタが望むならですが……」
うつむく服来。その肩をポンッと撃山が軽く叩く。
撃山「安心しろ服来。お前をバケモノの王にはさせない」
服来「撃山さん……」
撃山「幽霊が出ても、これまでみたいに俺が全部追っ払ってやる。何億体でも年兆体でもな」
服来「……ありがとう……ございます」
撃山「ってことだ、ねぇちゃん。コイツは王にならず、俺と一緒にしばらく警備員やるからよ」
微笑む老婆。
老婆「そうですか。確たる信念があるのなら、私にはもう何も言うことはありません」
撃山と服来は再び歩き始め、その場を立ち去る。2人の後ろ姿を見ながら、老婆は足元に置いたカバンからスマートフォンを取り出し電話をかけた。
老婆「もしもし?見つけました。ポコポコ様が現世に復活するための
翌日、服来は会社にも撃山にも連絡なく姿をくらました。
<服来の秘密-完->
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