ゴリラな背後霊③
ホークアイ潤子を狙っていたのはゴリラだけではない。狙撃を終えたところを不意打ちし漁夫の利を得ようと、駐車場に停められた白い乗用車の影に身を潜めていた闇討ちヒロシ。しかし実行に移すよりも早く謎のゴリラが出現し、ホークアイ潤子にトドメを刺してしまった。
タイミングを見計らって自分の手で猿井を仕留める。闇討ちヒロシに残された選択肢はそれだけ。しかし行動を起こすタイミングは今ではない。うかつに動けば、ゴリラが襲いかかってくるだろう。額から滲み出た汗が頬を伝い、アゴの先から地面に垂れる。しかし時すでに遅し。ゴリラは研ぎ澄まされた嗅覚で、闇討ちヒロシの汗の匂いを察知していた。
🦍「ウギャギャァァァァァァァッ!」
甲高い叫び声を上げながら、両手のひらで胸を激しく連打するゴリラ。ドラミングだ。雄叫びとドラミングによって生まれた音は強い衝撃波となり、停車している車のガラスや駐車場の照明をすべて砕いた。闇討ちヒロシは両耳を手で塞いで何とか凌ぐ。もし音を直接聞いていたら、鼓膜が破れていただろう。
駐車場が暗闇に包まれた。普通なら視界が悪い暗闇での戦いは避けたいところだろうが、闇討ちヒロシは違う。闇の中こそ彼の独壇場。人並外れた視力で暗闇の中から一方的にターゲットを殺す。そんな彼にとって、ゴリラが駐車場の照明を破壊してくれたことはチャンスに思えた。
懐に隠していた
闇討ちヒロシ「まずい!ゴリラの射程範囲から離れ」
突如、闇討ちヒロシが隠れていた白い乗用車が宙に浮いた。ゴリラが車体を持ち上げている。
闇討ちヒロシ「うわあああぁぁぁぁっ!」
ゴリラは乗用車を闇討ちヒロシの頭上から叩き落とす。肉片と血液が地面に飛び散った。
🦍「ウギャァァッ!」
四つ足でピョンピョンと跳ねながら、上唇をめくり上げ喜ぶゴリラ。ゴリラでもターゲットを仕留めれば嬉しくなるのだ。
山田・ザ・ビースト「見える、見えるぞ。お前の姿」
暗い駐車場内に野太い声が響く。ゴリラの10m後方に、山田・ザ・ビーストが立っていた。
山田・ザ・ビースト「俺の目が暗闇に慣れたことも要因だろう。加えて、大人になったオスのゴリラは背中の毛が白くなり『シルバーバック』と呼ばれる。だから後ろから見れば、闇の中でもお前は丸見えだ」
山田・ザ・ビーストはゆっくりとゴリラに歩み寄る。ゴリラは振り返りながら後ろ足だけで立ち上がり、胸を張った。両者の距離は、1m程度にまで狭まる。
山田・ザ・ビースト「だが俺は元プロボクサー。背後から奇襲を仕掛けるのは流儀に反する。それに、ゴリラと殴り合える機会なんてそう無い。俺のパンチとゴリラのパンチ、どっちが強いか真っ向勝負をしようじゃないか」
🦍「……」
山田・ザ・ビースト「って、口で言っても伝わらねーよな。俺の意思をゴリラに伝えるには、ぶん殴るしかねぇぇっ!」
山田・ザ・ビーストは右アッパーをゴリラのアゴにブチ込む。ゴリラは衝撃で体をのけぞらせた。立て続けに山田・ザ・ビーストの左ストレートがゴリラの腹部を捉える。
山田・ザ・ビースト「さぁどうだ?このワンツーパンチを喰らって意識を保てたヤツはいない!」
よろけながら後ろに
山田・ザ・ビースト「き、効いて」
直後、ゴリラは猛スピードで山田・ザ・ビーストに近づきタックルを喰らわせる。5m以上弾き飛ばされ、駐車していた青い乗用車の側面に叩きつけられる山田・ザ・ビースト。
山田・ザ・ビースト「がはぁっ!なんてパワー……だ」
山田・ザ・ビーストはよろよろと立ち上がる。その隙に、ゴリラは距離を詰めていた。そして両手で山田・ザ・ビーストの顔や胸、腹に何度もパンチを叩き込む。
🦍「ウホウホウホウホウホウホウホウホウホウホウホウホォーーッ!」
上半身の骨が粉々に砕け、眼球が飛び出し、口からは大量に吐血。山田・ザ・ビーストはその場に倒れ込んだ。
🦍「ウキャーーーッ!」
ゴリラは両手で胸を激しくポコポコと叩いた。そうポコポコと。まるで死者、そして死を
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翌日 AM 6:30
殺し屋たちを集めた廃ビルで一人、ノートパソコンを開くスーツの男。画面には、依頼主の老爺が映っている。
男「マスター、4人とも現れません。連絡もつきませんし、おそらく全滅したかと」
老爺「ぐぅぅクソッ!また失敗か!使えんヤツらだ!」
男「お言葉ですが、諦めたらどうでしょう?マスターが身銭を切ってまで猿井を仕留める必要は」
老爺「うるさい!私の娘夫婦は猿井に
<ゴリラな背後霊-完->
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