ゴリラな背後霊②
PM 8:45
仕事を終え、最寄駅で電車を降り、閑静な住宅街の中を自宅へ向かって歩く猿井。その背後、電柱や木に身を隠しながらバトルナイフ三沢が接近する。その右手にはサバイバルナイフ。
バトルナイフ三沢「しばらく尾行して観察していたが、この男、依頼人のじいさんが言ったとおり何の脅威もねぇ。目を見張る部分もねぇ。食パンみたいなリーマンだ」
凶刃が猿井の背後から迫る。そのことに猿井は全く気付いていない。
バトルナイフ三沢「隙だらけだ!死ねぃ!」
バトルナイフ三沢は走り、猿井との距離を一気に詰めようとする。しかし、
自分の姿をターゲットに見られてもバトルナイフ三沢は逃げない。立ち上がりながら猿井に向けてナイフを突き出す。ナイフが刺さる感覚はあったが、切っ先は猿井から1.5mほど離れている。刺さったはずなのに、ナイフは空中でピタリと止まっているのだ。いくら力を入れても、凍り付いたかのように動かない。
直後、ナイフの刃が
ナイフはゴリラの腹部に深々と刺さっている。どこからともなく現れたゴリラの強靭な腹筋により動かせなくなっていたのだ。
バトルナイフ三沢「なんだこのゴリラ!っていうかなんで野生のゴリラが日本にいる!?」
理解が追いつかず混乱するバトルナイフ三沢。そんな彼を、ゴリラは鋭い眼光で見下ろす。言葉を交わさなくても、ゴリラが強い殺意を自分に向けていることをバトルナイフ三沢は察した。左手を腰に回し、もう1本のサバイバルナイフを取り出す。
🦍「ウホォッ!」
もう1本のナイフが刺さるより前に、ゴリラの右拳がバトルナイフ三沢の左こめかみにクリーンヒット。バトルナイフ三沢は大きく吹き飛び、氷上のように地面を滑った。一撃で頭蓋骨が砕け、その破片が脳髄に突き刺さり即死。
ゴリラは腹部に刺さったナイフを引き抜き、投げ捨てた。
ゴリラとバトルナイフ三沢が交戦していた地点から西へ約150m。10階建ての大型立体駐車場の8階で狙撃銃を構えるホークアイ潤子。銃に取り付けた暗視スコープでバトルナイフ三沢が謎のゴリラに吹き飛ばされる一部始終を見ていた。
ホークアイ潤子「何なのあのゴリラ……それにしても、薄らナイフバカのおかげでターゲットがなぜ元軍人の部隊を壊滅させられたのか分かった。あのゴリラが守っているのね。まだ頭の中が整理できてないけど、この距離ならゴリラに反撃されることなく始末できる」
ホークアイ潤子は猿井の頭に照準を合わせ、引き金を引く。
ホークアイ潤子「20億、もらったぁっ!」
銃口から放たれた凶弾が、超高速で猿井へと迫る。しかしあと30cmで当たるというところで、ゴリラが右手の人差し指と親指で弾丸をキャッチした。
ホークアイ潤子「バカな!?なんて動体視力!そして指の力!」
ゴリラは弾丸が飛んできた方向へ体を向けると、野球のピッチャーのような投球フォームで投げ返した。弾丸は狙撃銃で撃つよりも速く飛び、ホークアイ潤子の眉間に命中。手から狙撃銃が落ち、その場に仰向けで倒れるホークアイ潤子。
🦍「ウホホォッ!」
ゴリラは短く雄叫びを上げると、猿井の側を離れ、近くの電柱をよじ登り始める。そして民家の屋根やアパートの屋上を飛び移り、ホークアイ潤子のいる立体駐車場の壁面に張り付いた。両手と両足を使って壁を駆け上り、8階で降り立つ。
ゴリラの足元に倒れるホークアイ潤子。まだわずかに息が残っているが、もう動くことはできない。ゴリラは左足を高く上げるとホークアイ潤子の頭を踏み潰した。頭蓋骨が砕ける音と脳の破裂する音が駐車場内にこだまする。
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