異文化交流暗殺④
シゲミの待ち伏せを警戒しながら、ロバートは明かりの消えた校舎の廊下を歩く。15mほど前方、廊下の突き当たりにシゲミの後ろ姿を捉えたロバート。すかさず発砲するが、シゲミが死角に逃げたため弾丸は当たらず、壁に無数の小さな弾痕が残る。
ロバートは後を追おうとする。だが視界の隅、足元を照らす非常灯のすぐ隣に貼り付く何かが見え、足を止めた。そしてその何かに顔を近づける。粘土のような物体、C-4だ。瞬時にシゲミの作戦を予測したロバート。シゲミは自身を囮にしてC-4の設置箇所にロバートを誘い込み、爆破しようとしている。ショットガンを持ったロバートを倒すには多少の犠牲はやむなしで、学校を爆破させることを選んだのだ、と。
ロバートはC-4を警戒し、シゲミの後を追わず、別の道から回り込むことにした。
階段を数段抜かしでジャンプするように降りるシゲミ。ロバートを作戦通りに誘き出せることを祈りつつ、なるべく距離を取る。
脱兎のごとく動き回るシゲミに対し、ロバートの動きは慎重そのもの。床、壁、天井を舐めるように見回しながらゆっくり歩き、シゲミが設置したC-4を見つけたら道を変える。
C-4がある場所はシゲミもなるべく近寄りたくない場所。なぜなら爆破させればロバートだけでなくシゲミも巻き込まれてしまうから。つまりロバートがC-4の無い道を選び、その裏をかこうとシゲミがC-4の設置箇所を増やせば、シゲミ自身の逃げ道も狭まっていく。ロバートは徐々にシゲミを追い詰めていた。
C-4が設置されていないルートを辿り続け、ロバートが行き着いたのは校舎の裏口。シゲミが最終的な逃走経路として用意した場所だということは容易に察しが付いた。
この状況からシゲミが逆転する手段があるとしたら、裏口から外に出て、C-4を全て起動させ校舎もろともロバートを葬ること。ロバートはその逆転の可能性をも潰すため、裏口から校舎の外に出た。これで校舎が爆破されても遠くに避難でき、巻き込まれるリスクはほぼゼロ。
校舎裏は職員用の駐車場になっており、奥の方に白い乗用車が1台だけ停まっている。間違いなく車の陰にシゲミが隠れている。それ以外に隠れる場所はない。ロバートはそう確信し、ズボンのポケットから弾丸を取り出し、ショットガンに装填した。
ロバート「Ms.シゲミ!The end デスヨ!諦めて出てくれば、殺さずに見逃してあげマース!」
そう言うロバートだが、もちろん見逃すつもりなど微塵もない。強い者を殺すことこそ彼の楽しみであり、シゲミを殺すためだけにわざわざアメリカから来たのだ。
ショットガンの銃口を真っ直ぐ前に向け、足音を立てないようゆっくり車の横から近づくロバート。車まであと2mの距離まで近づいたところで、一気にスピードを上げ、陰になっている車の反対側を覗き、ショットガンを発砲した。しかしそこにシゲミはいない。
直後、ロバートの背中がポンッと叩かれ、背後からシゲミの声がロバートの鼓膜を揺らす。
シゲミ「諦めて国に帰り、二度と殺しはしないと誓うなら見逃してあげるけど?」
ロバート「……どこに隠れていたのデスカ?」
シゲミ「アナタの後ろ。数分前から20mくらい離れて尾行してた。かなり大変だったのよ。偽物のC-4を仕掛けて回りつつ、アナタの背後を取るのは」
ロバート「偽物のC-4?じゃあまさか……」
シゲミ「アナタの言うとおり、学校を爆破するわけにはいかない。だからC-4を起爆させても被害が少ない屋外にアナタを誘導したかったの。校舎内に仕掛けたC-4は全部ただの紙粘土。私がC-4を使うことを知っているアナタなら、紙粘土を見ただけで警戒し、C-4の無い場所に移動すると思った。本物は今、アナタの背中に貼り付けた1つだけ」
ロバート「……全てアナタの手のひらの上でしたか。
ショットガンを地面に落とし、両手を上げるロバート。シゲミはロバートに背を向けながら歩いて距離を取る。十数mほど離れたところで、右手に握った円筒形のスイッチを押し、C-4を起爆させた。爆発音とともにロバートの体が弾け飛ぶ。駐車場には、焦げ跡と肉片と血痕が残った。
シゲミはスカートのポケットからスマートフォンを取り出し、耳に当てる。
シゲミ「もしもし父上?今から学校に来て、死体を2つ処理してほしい。で、死体の本人は失踪扱いにしてもらえない?1つはバラバラで処理に時間がかかるだろうけど、明日の朝までにお願い」
<異文化交流暗殺-完->
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