異文化交流暗殺(全4話)

異文化交流暗殺①

PM 3:40

市目鯖しめさば高校1階の廊下を歩く2人の女子高生、サエとシゲミ。今日は2人が所属する心霊同好会の活動がないため、授業終わりに池袋へ遊びに行こうとしていた。


サエ「前から聞きたかったんだけどさー、シゲミって彼氏いんの?」


シゲミ「いるよ」


サエ「マジ?誰?」


シゲミ「私の彼氏は、火薬とニトログリセリンとレーザービーム付きダイナマイト」


サエ「何それ?ウケるー。3人もいるなら1人くらい紹介してよ」


他愛のない会話をするサエとシゲミだが、知らず知らずのうちに異様な事態に巻き込まれていた。窓から差し込む太陽の光が徐々に弱くなる。まだ日暮れには早い。天井の蛍光灯が明滅し、1つずつ消えていく。消灯時間にも早い。外はあっという間に夜になり、廊下も真っ暗になった。


サエ「えっ!?何ごと?なんでこんな暗いの?」


シゲミ「サエちゃん、私の後ろに下がってて」


サエとシゲミが見据える先、廊下の曲がり角から、体毛が全て抜け落ちたニホンザルのようなナニカが這いつくばりながら現れた。頭には2本の短い角が生えており、顔のパーツは口以外が無い。そのナニカは10体以上おり、床や壁、窓、天井に四つん這いの状態で貼り付きながら、シゲミたちへと迫る。


サエ「ヒッ!何あれ!?」


シゲミは左肩から下げたスクールバッグの中に右手を突っ込んだ。


シゲミ「私が合図するまで目を閉じて、耳を塞いでて」


シゲミの指示通り、まぶたを閉じて両手を耳に当てるサエ。シゲミは迫り来るナニカの群れに向かって、小さくて黒い筒を2つ投げた。筒は床でバウンドした直後、大きな破裂音と強い光を放つ。閃光手榴弾。音と光は数秒ほど続き、消失。同時に異形なナニカも全て消え、廊下の照明が点灯し、外の太陽の光も元に戻った。


シゲミは背後で小さくうずくまるサエの右肩を叩く。


シゲミ「もう大丈夫だよ」


サエは目を開け、耳から手を離して立ち上がった。


サエ「何だったの?」


シゲミ「低級の悪魔」


サエ「悪魔ぁ!?そんなのもいるのね……でもさすがシゲミ!まるでハエを追い払うみたいにあっという間に撃退しちゃって!」


シゲミ「あの程度なら音と光だけで簡単に始末できる。だけど、悪魔って日本にはいないんだよね。誰かが持ち込まない限り。それが引っかかる……」


サエ「たしかに悪魔って海外にしかいないイメージ」


シゲミ「サエちゃんごめんね、遊びに行くのまた今度でいい?狙われてるのはたぶん私だから、対策しておこうと思って」


サエ「なるほど、お仕事の時間ってわけね。もちよ、もち。シゲミの仕事を邪魔するわけにはいかんからね〜」

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