解剖者の序曲②

ラービー「あの娘は、この家の人形を次々に解剖している。その数は50体以上。まだ産まれて1年も経ってないのに、50体だぞ。間違いなくアイツは楽しんでバラしてる。生まれながらの殺し屋だ」


その話の通り、娘は私の前で惨たらしいことをやってみせた。女性の人形の首を引っこ抜き、手足を胴体から千切り、バラバラになった部位を一つずつ口に入れて舐めた。猿の人形の皮を剥いで、中身の機械が露出させた。赤ちゃんの人形の頭を真っ二つにし、眼球や舌を抉り出し、さっき剥がした猿の皮に包んで振り回した。


ラービー「俺たちはあの娘に解剖されるのを、ここで待つことしかできない。もしお前も選ばれた・・・・ら、素直に受け入れるんだな。災害みたいなもんで、自力でどうにかできる問題じゃない」


ラービーが解剖されて数十の部品になったのは、その翌日だった。私はとんでもない地獄に来てしまったのかもしれない。そう考えていたとき、お母さんが私をつかんで娘に渡した。私が選ばれた・・・・の。


お母さん「この人形さんは、おじいちゃんがくれた大切なものだから、壊しちゃダメよ」


そう言って娘を残し部屋を出た。娘はまだ言葉を理解できる年じゃない。「ダー」とか「アー」とかしか言えない子に、言葉で注意しても無駄でしょ!何でこの母親はそんなことも分からないの?このノータリン!


娘は私の腰を右手で鷲掴みにすると、グイッと顔を近付けてきた。私をどう解剖するか、赤子なりに考えていたのだと思う。


このまま何もしなければ殺される。そう思ったとき、私の髪が今までとは比較にならないほど早い速度で伸びたの。そして娘の腕や首に絡みついた。もう誰も殺さないと固く誓ったけれど、自分が死んでしまうなら話は別。でもこれで最後。この娘を殺したら、この力は二度と使わない。


グングン伸びる私の髪の毛が、娘の体を縛り上げた。このまま絞め殺せると思った。そのとき、娘は私を見て、


「余計なことするなよ」


と言ったの。しゃべれないと思っていた、無意識に人形を壊していると思っていたその娘が、明確に自分の意思を示したの。だから驚いてしまって、髪の絞め付けを緩めてしまった。その瞬間を娘は見逃さなかった。左手で私の髪の根元をつかんで、思い切り引っ張った。ブチブチと音を立てて抜ける髪。私はスキンヘッドになってしまった。私の頭から離れた髪の毛は、力なくパラパラとその場に落ちる。


そして娘は右手を大きく振り上げ、私の頭を床に叩きつけた。ラービーの言う通り、この娘は自覚している。自分が人形を解剖することで快楽を感じているのだと。


それから私は、チャームポイントだった赤い着物をビリビリに破られて裸にされ、ラービーと同じように解剖されちゃった。今はまだ意識が残っているけど、いつまで保つかは分からない。


これからも娘は、他の人形たちを解剖し続けるんだろうな。でもいつか、この猟奇的なクソガキに、鉄槌を下してくれる人が現れる。そんな気がするの。


<解剖者の序曲-完->

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