暇人とミイラ(全2話)
暇人とミイラ①
民家で拳銃を発砲、手榴弾を使用、挙げ句の果てにロケットランチャーで家屋を全焼させ警察をクビになった
この日、もがき続ける毎日の息抜きにと、服来は撃山を『東京エジプト歴史博物館』へと誘った。古代エジプトに関する資料や模型を多数常設している民営の博物館で、先週から始まった、ほぼ全身が残ったミイラの企画展示で最近は特に賑わっている。ミイラを一目見ようと土日は大勢の来場客が集まるため、服来は無職の強みを生かし、人が少ない平日の昼間に同じく無職の撃山とともに博物館へ行くことにしたのだ。
博物館の入口を抜けると広いホールになっており、四方の壁を囲むようにガラスに入った展示物が並べられている。来場客は20名ほど。ホールの中央に、博物館の目玉といえるミイラが展示されていた。カラカラに干からびたミイラは立った状態のまま、巨大なガラスケースに入れられている。
撃山「お前エジプトの歴史なんか好きだったのか?」
服来「ちょっと前までは興味がある程度でしたけど、面接のとき以外暇なので、ネットでいろいろ調べているうちに超好きになりました」
撃山「へぇ、そうかい。それにしても、ここ暑いなぁ」
撃山は黒いジャケットを脱いで右腕にかけ、白いタンクトップとジーンズ姿になった。上半身にはホルスターサスペンダーを巻いており、左脇のホルスターには
服来「撃山さんそれ……実銃じゃないですよね?」
撃山「さっき、俺を敵対組織のヒットマンだと勘違いした、どこかの鉄砲玉をぶっ殺してな。二十歳そこそこの若造が生意気にもイカした銃を持ってやがったから、罰として奪い取ったのさ。命と一緒にな」
服来 「何やってるんですか!?もう僕ら警官じゃないんですよ!バレたら逮捕どころか極刑になるかも」
撃山「バカ野郎!元警官が、自分で逮捕した犯罪者に逆恨みで殺されることもある。これくらいの装備は当然だろうが。お前も銃の一つくらい持っとけ」
服来「撃山さんはそうかもしれませんが、僕は2年足らずでクビになってますから、逮捕した犯罪者なんていませんよ」
撃山と服来は、カップルと子連れの3人家族の後ろからミイラが入ったガラスケースを眺める。
服来「これはカニカマムーンという男性のミイラです。紀元前2000年以上前のエジプトで権力者を殺しまくってた暗殺者らしいですよ。ほら、見てください。ミイラの横に2本の剣が並べて飾られているでしょ?あの剣で暗殺していたそうです。最終的に捕まって絞首刑に処されましたが、断末魔の雄叫びで処刑を見ていた数百人の鼓膜が一斉に破れ、死者まで出たという逸話があります」
撃山「へぇ、じゃあコイツ、すごく声が高かったのか?」
服来「違います。怨念ですよ。強い怨念で人々を道連れにしようとしたんです」
撃山「権力者を殺して、一般人まで巻き添えにするとは、相当ストレスたまってたんだろうな。今の日本にコイツがいたら、超危険なテロリストになりそうだ」
服来「まぁもう干物になっちゃってますから、その心配は要りませんね、ははは」
服来の笑い声が止まった瞬間、ミイラが2本の剣を左右それぞれの腕で掴み、目にも止まらぬスピードで振り回した。ガラスケースが無数に裁断され飛び散る。ミイラはガラスの雨の中をジャンプし、床に着地した。ケースの近くにいたカップルと家族の首がボトリと落下する。ミイラは一瞬のうちに5人の首を切断した。
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