学校のボディガード③
田代「逃げろ!」
ナガン「いえ逃げません!犯人を前にして逃げる探偵がいますか!?最後まで見届けます!」
田代「ならもっと下がってろ!」
ナガンは田代と鎌鼬の斬り合いに目を向けながら、十数歩下がった。縦横無尽に飛び回り、前足で斬りかかろうとする鎌鼬。その猛攻を得意の居合で受け切る田代。戦いの余波で、廊下の床や天井、窓ガラスに無数の切り傷が付けられていく。
田代「拙者の斬撃スピードと互角だとぉ!?この
田代と鎌鼬が激しく斬り結ぶ。ナガンは何かに気づいたように、スカートのポケットからスマートフォンを取り出した。
ナガン「あの!戦ってるところすみません!動画撮っていいですか!?」
田代「ああん!?観客は気楽でいいなぁ!こっちは死に物狂いだってのに!」
ナガン「もし田代さんが勝っても、犯人が鎌鼬だったという証拠が必要でしょ!?話だけじゃ誰も信じてくれないだろうし!」
田代「ぐっ!さ、さすが探偵、頭が回るなぁ録画頼むぅぅぅ!」
ナガンは撮影を開始する。田代は鎌鼬の斬撃を3回凌ぎ、生まれた隙を突いて刀を振る。刀は鎌鼬の右前足を捉え、鎌になった足がポトリと床に落ち、霧散した。
鎌鼬「やるなぁ〜ジジイ。そこらのJCとは比べ物にならんねぇ」
田代・ナガン「しゃべった!」
鎌鼬「オイラ、ちょっと本気出しちゃおっかなぁ〜」
鎌鼬の尻尾が伸び、金属に変わる。前足より長く大きい鎌に変化した。
ナガン「田代さん一旦退きましょう!犯人は鎌鼬って分かったし、動画も撮りました!明日理事長に報告して、除霊師的な人を呼んでもらえば」
田代「ダメだ!コイツの攻撃を防ぎながら逃げる余裕はない。ここで討ち取らなければ、拙者たちは殺される」
鎌鼬「その通りだぜ、お嬢ちゃん。それに、こんな血湧き肉躍る勝負から逃げたくねぇよな?そうだろ?ジジイ」
田代「ああ、久しく感じていなかった実戦の空気。これほど甘美な空気を吸わずにはいられまい」
再び鎌鼬と田代が斬り結ぶ。ナガンは非論理的な理由で繰り広げられる戦いを、少し呆れながら撮影し続けた。
それから15分が経過した。息を切らし始める田代。鎌鼬は動きを止める。
鎌鼬「ツラそうだなジジイ。オイラ、あと3時間は動き続けられるぜ」
田代「やはり動物、人間への理解が甘いな。拙者はあと4時間いけるぞ」
鎌鼬「ああそう。まぁオイラは、4時間半でも余裕だけどね」
田代「ふん、なら拙者は4時間40分いける」
鎌鼬「やっぱ今日調子いいから、4時間45分はいけるな」
田代「拙者ももっといけるわ。4時間47分は」
ナガン「いいから早くケリつけてくださいよ。そろそろ飽きた」
田代「だとさ。この戦い、終いにしよう」
田代は刀を鞘に収める。
鎌鼬「諦めるのか?なんだよ、もっとやろうぜジジイ!」
田代「諦めたなんて言ってないだろう。ほら、攻撃して来い」
鎌鼬は旋風のようなスピードで田代に接近する。尻尾の鎌が田代の左肩に深々と刺さった。
鎌鼬「このまま真っ二つだ!じゃあなジジイ!あの世で刀の素振りでもするんだな!」
鎌鼬は体をくねらせ、刺さった鎌を田代の胸あたりまで深く進めるが、それ以上はピクリとも動かせなくなった。
田代「……拙者は毎日、この学校の生徒を守るために体を鍛えている。刀ほどではないが、この肉体も相当硬いぞ」
鎌鼬「筋肉でオイラの鎌を止めたのか!?」
田代「チョロチョロ動き回らなければ、貴様はただのイタチだ」
田代は鞘から刀を抜いた勢いのまま、鎌鼬の胴体を両断。その抜刀速度は鎌鼬でも反応できない、音速に近いスピードだった。
−−−−−−−−−−
ナガンが撮影した田代と鎌鼬の動画は学校中に拡散された。田代が鎌鼬を仕留めたことで生徒が犠牲になることもなくなり、連続殺人事件は収束。学校に平穏が訪れた。
理事長からの依頼を達成し、校庭を歩き、学校から去ろうとする田代。しかし校門の前にナガンが仁王立ちをしており、田代の行く手を遮った。
田代「拙者を警察に突き出す約束だったな」
ナガン「アナタは冷徹な殺し屋……でも、この学校を救った、私たちの恩人でもある。探偵としてあってはならなことだけど、今回は見逃します」
田代「そうか。少しは努力が報われるな」
ナガン「ですが、アナタにこれ以上殺し屋をやらせるつもりはありません。だから、私から理事長にあるお願いをしました」
田代「お願い?」
ナガン「居合道部を設立してもらい、顧問としてアナタを雇うようお願いしたんです。部員は今のところ私一人。探偵を続けるなら、少しは戦えるようにならなきゃって、今回の一件を通して思ったから。ということで、よろしくお願いしますね、田代先生」
こうして田代は、市目鯖女子中学校の居合道部顧問に就任。殺し屋業からは完全に足を洗った。
<学校のボディーガード-完->
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